オランダはパラセタモール一神教①
パラセタモール(日本ではアセトアミノフェン)は、痛みを和らげたり発熱を下げるための解熱鎮痛剤です。頭痛や筋肉痛、生理痛、風邪による発熱などに使われ、胃腸への負担が少ないのが特徴です。ただし、過剰摂取すると肝臓に悪影響を及ぼすため、用量を守ることが重要です。(chatgptより引用)
オランダの医療制度では、General Practitioner(一般医/かかりつけ医)は地域医療の中心的な存在であり、以下のような役割や特徴があります。この一般医は主にGPと呼ばれます。GPは患者が医療サービスを受ける際の最初の相談窓口です。体調不良や怪我など、幅広い症状に対応します。また、GPが必要と判断した場合のみ、病院や専門医に紹介状を出します。専門的な治療を受けるには、この紹介が不可欠です。
このGPがパルセタモール一神教なのです。パルセタモールは、GPだけではなく、一般人にも浸透しているほどの普及率です。逆に、オランダでどんなに体調不良であろうと、どんなにけがをしようと、GPに行ったところで、「パルセタモール飲んでおきなさい」しか言われないのです。どんな症状であろうとパルセタモール一択なのです。
ここで、パルセタモール一神教に苦しんだ去年の私の実体験を書きたいと思います。
結論から言うと、GPがポンコツだったので、私は太陽君から伝授されたイランの民間療法によって、インフルエンザ(おそらく)と戦いました。
太陽君の看病方法は以下の通りでした:
塩水を鼻から流す
生のニンニクを2、3片食べる
サウナに入る
チューリップの球根スープを食べる
辛いトマトスープを摂取する
パラセタモールとイブプロフェンを服用する
月曜の朝、体のだるさと喉の違和感を感じました。太陽君はすぐにそれに気付き、「風邪を引いたの?今日の授業は休んだ方がいいんじゃない?」と声をかけてくれました。その日は午前中の講義だけ受けて早めに帰宅しました。昼食もろくに取らず、リンゴと葛根湯だけを摂取して就寝。彼氏が5時過ぎに帰宅するまで眠り続けていました。その間、「大丈夫?」「早く帰って休んだ方がいいよ」「今どこにいるの?」「お昼は食べた?」など、私を心配する複数のメッセージを送ってくれていました。彼氏が帰宅した時も特に何もせず、「おかえり」とだけ言って再び眠りについてしまいました。その様子を見た太陽君は、「やっぱり風邪だね!風邪に効くものを作ってあげるよ」と言って、料理を始めてくれました。
それが例のトマトスープでした。「辛いものを食べて代謝を上げれば治る」という彼の助言に感謝しながら食べてみましたが、まったく辛くありません。美味しいですが。調味料を尋ねると、パプリカをたくさん入れたとのこと。それは辛さの範疇にも入らないし、唐辛子すら使用されていません。しかし、体調を崩している時に、心配してくれて食事まで作ってくれる人がいるという幸せを噛みしめながら、ありがたく頂きました。食事の後は、オランダでよく使用されるパラセタモールとイブプロフェン(頭痛薬)を服用しました。初めて聞く薬で効能も分かりませんでしたが、思考力も低下していたため、とりあえず服用して就寝しました。しかし、その夜に発熱してしまいました。
二日目の朝、症状は変わらず体のだるさは続いていました。その日は夕方からアルバイトのシフトが入っていましたが、まだ仕事を始めたばかりで休暇の連絡を入れることに躊躇していました。また、午前中に休養を取れば回復するだろうという根拠のない自信もありました。夕方まで休養を取ったところ、朝よりも体調が良くなったように感じたので、アルバイトに行くことにしました。しかし、シフトの終わり頃には再び体調が悪化。なんとか自転車で帰宅しましたが、疲労困憊でした。太陽君には「なぜアルバイトに行ったんだ」と少し叱られました。その後も一週間経っても回復せず、喉の痛みは最初の3日で治まりましたが、その後の咳が本当に辛かったです。
オランダの医師に相談しようと太陽君に伝えたところ、「オランダの医者に行っても意味がない。時間の無駄で、パラセタモールを飲めとしか言われない」と言われました。それは少し誇張だろうと思いましたが、太陽君が「僕が看病するから心配しないで」と言ってくれたので、素直に甘えることにしました。しかし、咳が悪化し、週末には2時間おきに痰が喉に詰まって窒息しそうになって目が覚めるということが土日と続きました。その度に洗面所に行ってうがいをしました。窒息の恐怖で眠れず、咳で彼を起こしてしまうことへの申し訳なさから不眠が続き、完全な睡眠不足に陥りました。咳が悪化する一方だったため、やはり医師の診察を受けることにしました。
このように体調が悪く、激しい咳が続いているにもかかわらず、簡単な診察の後で「私に何をしてほしいの?」と尋ねられ、驚きを隠せませんでした。数秒の呆然とした沈黙の後、風邪を治したいと伝えると、返ってきた答えは「体を温めること、食事を十分に取ること、パラセタモールを服用してよく休むこと」だけでした。パラセタモール。あまりの驚きで言葉を失いました。とりあえず6週間待って、改善が見られない場合は再診するようにと言われて診察は終了。咳止めの処方はいつになるのかと思いましたが、結局求めていた薬とは異なる薬を紹介されただけでした。肺機能は限界でした。階段を上るのも辛い状態でした。結局、誕生日も体調不良のまま過ぎ、二週間経っても咳は治まらず、完治までには3週間ほどかかりました。インフルエンザの検査も細菌検査も一切なく、結局は自然治癒を待つしかありませんでした。その結果、大学の授業のグループワークにはほとんど参加できず、意図せずフリーライダー状態となってしまい、試験も受けられず、無条件で再試験を受けることになりました。さらに、朦朧とした状態で30歳の誕生日を迎えることになってしまいました。結論として、医師に頼るのは時間の無駄でした。
太陽君と私は「イランの医師の方がまだましな診療をする」「日本で診察を受けていれば、3週間も苦しむことはなかっただろう」という点で意見が一致しました。