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ペトロールズの河村俊秀が急逝して、一週間が経つ。
バンドの公式アカウントによるXでの公表を最初に見たのは、27日朝の通勤電車の中だった。動揺していまいち理解ができず、え、なんで、となりながら職場に向かって、いつも通り時間を過ごしつつも、その日は合間の時間に何度もいろんなニュースをくりかえし見て、それが本当に起こったことなのかを確かめては少しずつ心を落ち着かせようとしていた。
でも一週間たったいまでも、どこかで信じられない気持ちがあって、ぼんやりすることがある。
思えば、実際にライブに足を運んだことがあるくらい好きなアーティストやバンドのメンバーが亡くなるということは、初めての経験だった。ましてや彼はまだ45歳。今年の9月頭にKT Zepp Yokohamaでライブを観たばかりだったし、MCや佇まいには脱力感がありながら、めちゃめちゃキレのある演奏をする三人の姿を見て安心して、ほっこり帰路についたことも記憶に新しい。
その時のライブ本編最後の方で、長岡亮介が「いつものやつですよ」とか言いながら、最後数曲をやったMCのくだりをふと、思い出していた。
最後にやる曲の流れを仄めかすように「いつものやつね、どうせいつものやつでしょ」と喋る長岡さんに対して、「なんてこというんだよ」みたいなことを河村さんが返して、会場に笑いが起こっていた。あぁ、アルバムはそんなにたくさん出さないけど、ツアーやライブはこつこつ頻繁にやり続けているこのバンドらしいMCだな、とか思いながら、その場を楽しんでいた。
でも「いつものやつ」って言えること、「いつものやつ」が何なのかわかること、「いつものやつ」があるってものすごく尊いことなのだ、と今になって思う。
居酒屋とか小料理屋とかでも、常連客が言う「いつもの」だって、その人が来たら必ず頼むお決まりのものだ。「いつもの」で通じるお店の人との間柄には、時間の積み重ねがあり、互いの信頼がある。
ペトロールズのライブで3人の間に流れている、あのゆるりとした空気みたいなものもまた、バンドとリスナーとのあいだに築かれてきた信頼のようなもので、あの独特なゆるさの中で最高の音楽に身を浸すことがみんな大好きだったんだと思う。
また来年もこうして聴きにこよう、とか当たり前のように考えていたし、(なんとなくリスナー達の間でもそう感じる人が多いんじゃないかと思うけど)この3人はずっとこんな感じでゆるゆると、でもこつこつとライブを続けてくれるんだろうなとも思っていた。坂本龍一が亡くなった時にも同じことを感じたけど、とにかくライブで聴きたいと思ったアーティストは、後悔しないように出来る限り観に行こうとあらためて思う。音楽に限ったことではないけれど。
河村さんがペトロールズで創り出した音楽はまだまだこれからも、たくさんの人を踊らせて、たくさんの人に寄り添ってくれるはずです。まだまだ全然行き足りないけど、ライブに足を運ぶことができて幸福でした。本当にありがとうございました。