台湾から誘客の試み
宿泊施設が安定的に十分な売上を確保するためには、①繁忙期に閑散期を補うほどの数字をつくっておく、②閑散期にもある程度の集客を維持する、③宿泊事業以外の事業で閑散期の減収分を補う、以上3つの施策の方向性があると思っています。①のためには、施設にかなりの部屋数・ベッド数が必要となり、また繁忙期と閑散期で雇用調整が必要となるため、ぼくのところでは不可能です。②と③のために何ができるか、考えているところです。
初年度の営業を終えて判明したのは、ぼくの施設の宿泊客のおよそ半数は外国人であったが、そのほとんどが、ヨーロッパ、北米、オセアニア諸国からの欧米人であって、アジアからの旅行者は極めて少ない、ということでした。この傾向は、ぼくの宿だけではなく、上島町/ゆめしま海道地域の特徴であると思っています。
閑散期の宿泊者数の底上げを目指すためには、これまで上島町にまだ来ていなかった客層を開拓する、すなわち「新たな市場開拓」が有効ではないか、と考えました。具体的には、アジア諸国からの旅行者の誘致です。
現在ある既存市場の動向は、集客力の高い地域や施設が有利であり、それら地域や施設がキャパシティ・オーバーとなってから、周辺地域や新規参入施設に欧米からの外国人旅行者は流れてくる、という状態です。しまなみ海道周辺地域で言えば、まず尾道や瀬戸田の宿泊施設が満室になって、上島町を含むその周辺エリアの顧客評価(クチコミ)の点数や数の多い施設から埋まっていく、ということが起こっています。「目的地」としての知名度を持たないエリアや新規参入施設が同じ土俵で勝負すれば、勝てる見込みはありません。
アジア諸国であれば、地理的に近く、往来が比較的容易であることから、直接市場に誘客を働きかけることのできる可能性があり、自地域や自施設を新たな市場からの旅行者にとっての「目的地」とできる可能性もあります。また、欧米からの旅行者よりもリーピーターとなっていただける可能性も高くなります。
アジアといいましても多くの国と地域がありますが、ぼくは最初に働きかけを行う対象として、サイクリングがアジア諸国では比較的盛んな台湾を選びました。
ゲストハウスの開業まで観光産業に、消費者としての立場以外から直接かかわったことはありませんでした。まずは、観光産業の現状を学んでいく必要を感じています。創業期には正直なところ、創業に必要な知識を得て実践していくことで手一杯で、自身が参入する産業領域を深堀して戦略を立てていくことまではできていませんでした。台湾からの誘客を試みるうえでまずは、台湾の観光産業の現状の一端でも垣間見たい、ということで、台湾で上半期に行われる「旅行フェア」としては最大級と評価されている「台北国際観光博覧会(TTE)」を視察してきました。
誘客のための具体的な施策としては、現地でMOOK墨刻出版から出版されているガイドブックシリーズの「四国・広島・瀬戸内海 攻略完全制覇 2024~2025」に、「ゲストハウスみちしお」半ページ、「ゆめしま海道」半ページの計1ページで紹介記事を出稿させていただくことができました。このガイドブックは先月出版されて、台湾だけでなく香港など繁体字の中国語圏の書店で販売されています。これらの動きは、商工会の小規模事業者持続化補助金を活用させていただいて実施することができました。
台湾だけでなく他の国や地域でも、直接市場を訪れて現地で学び、またできればカウンターパートとなっていただけるような事業者と出会い、誘客を働きかけていくことを段階的にやってその対象エリアを増やしていければ、きっとたのしいだろうな、と妄想しているところです。台湾の旅行フェアで感じたことや、台湾のガイドブックに記事を出稿するまでの過程については、稿を改めてお話ししたいと思っています。