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【グッドデザイン賞受賞の理由を考えてみた】北海道発の地域づくりプログラムがなぜ受賞できたのか?
「ミチシロカ」のnote編集担当です。
北海道内で地域貢献・地域活性化に寄与する体験型教育プログラムとして2022年夏に初めて開催した「ミチシロカ」。
このたび、「2023年度グッドデザイン賞」(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞しました!
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グッドデザイン賞ウェブサイトでの紹介ページはこちら↓
今回のnoteでは、これまでPoC(Proof of Concept:概念実証)として続けてきたミチシロカが、グッドデザイン賞を受賞できた理由について、自分たちなりに考えてみました。
今後、地域づくりについて真剣に取り組みたい方、また、自分たちのサービスや取り組みもグッドデザイン賞を狙いたい、と考えている方に向けて少しでも参考になればと思いながら、まとめていきます。
※あくまでも私たちなりに考える「グッドデザイン賞を受賞できた理由」です。参考にならなかったらごめんなさい…!
「課題解決」だけでなく「らしさづくり」も意識したミチシロカ
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まずは、ミチシロカが生まれた背景についてご紹介します。
北海道の地元企業である中央コンピューターサービス株式会社(CCS)は、「少子高齢化に伴う人口減少」「地域経済・産業の衰退」「事業者の人手・後継者不足」といった社会全体が直面している課題に、30年以上前から最先端で挑戦してきました。
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一方、近年学生の考え方や卒業後のキャリアが多様化し、一昔前までの「大多数が都市部で就職する」という流れから「卒業後のUターン・Iターン・Jターン」が選択肢の一つとして一般化しています。地域社会が挑戦する変革と学生のキャリアの多様化をかけ合わせ、日本全体での地域貢献型人材の育成を見据えたプログラムを生み出したいとの想いから企画が生まれました。
参加した学生が、この経験を糧に「らしさ」を発揮し将来活躍することで、その結果さらに地域の力が増し、日本全体が活力を増す。さらに、プログラム自体も地域社会の一助になることで、「北海道から、地域と人のロールモデルを創る」という想いで開発されたのがミチシロカです。
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「グッドデザイン賞狙える」と思った瞬間
私たちがグッドデザイン賞を意識し始めたのは、2023年3月でした。
もともと、ミチシロカのブランドコンセプトを2022年秋から半年間かけて取り組んでいました。
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「私たちが考える地域づくりとは何か」「ミチシロカが地域社会・若者に提供できる価値とは」「私たちが目指す社会とは」など、ミチシロカの原点を世の中に伝え、共感者を増やすために言語化をしていく作業をゆっくり進めていたのでした。
私たちは、ミチシロカをこのようなコンセプトであると定義することにしました。
“らしさ”をつくる、まちづくり。“らしさ”を見つける、ひとづくり。
北海道から、地域と人のロールモデルを創る。
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そして、ミチシロカのブランドコンセプトが固まりつつあった2023年春、「ブランドコンセプトを世の中に”伝える”ためにはどうすればいい?」と考えていたときに、今年度のグッドデザイン賞の募集が開始されたという情報を聞きました。
そこで、グッドデザイン賞について調べていくと、審査・評価のポイントにこんなことが書かれていました。
グッドデザイン賞では、そのデザインが「くらしを、社会を、豊かにしうるのか」「今後の社会においてよきお手本となりうるか」という視点、つまり社会的またはユーザーにとっての価値や意義という視点を重視しています。
▼グッドデザイン賞の審査基準
評価のポイントに記載されていた「今後の社会においてよきお手本となりうるか」が、まさにミチシロカのブランドコンセプトである「北海道から、地域と人のロールモデルを創る。」に合致していたのです。
私たちの地域づくりに対する想いをしっかりと伝えられる絶好の機会であると、私たちはグッドデザイン賞に応募することを決心しました。
一次審査(書類審査)のポイント
一次審査はオンラインでのエントリーシート提出によって審査されます。
項目は以下の通りで、とてもシンプル。
概要(160字)
デザインのポイント(各50字×3)
デザインが生まれた理由/背景(400字)
デザインを実現した経緯とその成果(400字)
応募対象の補足情報(これまでの実績(400字))※任意
自由記入(400字)※任意
一次審査でのポイントは「文字数制限」。概要にいたっては、2年間かけて取り組んできたことを、たった160字で纏めないといけない…。とてもつらく、大変な作業でした。
私たちは、記入するにあたって「このキーワードは絶対に入れないとミチシロカのことが伝わらない」というワードをリストアップしました。
ミチシロカ(名前の由来が想いそのもの)
地域の魅力
まちづくり
グローカル視点
教育
アントレプレナーシップ
地域貢献型人材の育成
まちの“らしさ”をつくり、ひとの“らしさ”を見つける
地域づくり特化型PBL(Project Based Learning:課題解決型学習)
関係人口創出
移住促進/起業推進
こうしたキーワードをうまく散りばめて、入り切らない部分は別項目で説明するようにしよう、と決めて各項目を纏めていきました。
それぞれのエントリーに記入した内容を公開します。
概要(160字)
応募対象の概要(全体像・応募対象が誰のための何のデザインであるか)を簡潔明瞭に記述してください。
ミチシロカは地域と学びをつなげ、地域の魅力を再発見し、グローカル視点で本質を捉えたまちづくりを進める体験型教育プログラム。「まちの“らしさ”をつくり、ひとの“らしさ”を見つける」を掲げ、学生にはPBL(課題解決型学習)を通じた自己成長の機会を、自治体には地元の魅力や課題を可視化し事業や関係人口創出の機会を提供します。(158字)
デザインのポイント(各50字)
3点以内で箇条書きにしてください。(例:目的、実現手段/方法、それらによって得られた効果・効用など)
1. 地域づくり特化型PBL(課題解決型学習)を独自開発。学生や自治体のアントレプレナーシップを育成する(49字)
2. 学生が現地に直接赴き、地域の魅力と課題、住民の想いを肌で感じながら、自己再発見の機会となる(45字)
3. 地域が抱える魅力や課題を学生視点で発掘、廃校利活用などチャレンジングなまちづくり政策を立案する(47字)
デザインが生まれた理由/背景(400字)
企画・開発の理由、デザインをするうえで意識した社会背景・市場動向などについて記述してください。開発に際し、SDGsなど社会課題に対する問題意識がある場合には具体的に記述してください。
北海道の地元企業である当社は、「少子高齢化に伴う人口減少」「地域経済・産業の衰退」「事業者の人手・後継者不足」といった社会全体が直面している課題に、30年以上前から最先端で挑戦してきました。一方、近年学生の考え方や卒業後のキャリアが多様化し、一昔前までの「大多数が都市部で就職する」という流れから「卒業後のUターン・Iターン・Jターン」が選択肢の一つとして一般化しています。地域社会が挑戦する変革と学生のキャリアの多様化をかけ合わせ、日本全体での地域貢献型人材の育成を見据えたプログラムを生み出したいとの想いから企画が生まれました。参加した学生が、この経験を糧に「らしさ」を発揮し将来活躍することで、その結果さらに地域の力が増し、日本全体が活力を増す。さらに、プログラム自体も地域社会の一助になることで、「北海道から、地域と人のロールモデルを創る」という想いで開発されたのがミチシロカです。(395字)
デザインを実現した経緯とその成果(400字)
デザインの目標、創意工夫した点、成果とされる点を具体的に記述してください。
参加する学生のスキルと自治体の現状に応じて、イノベーションワークショップや魅力発信などのテーマを設計。従来の"やりがい搾取”に陥りがちな就業体験プログラムではなく、地域の課題や魅力を肌で感じながら課題解決能力を培うことができる「地域づくり特化型PBL(Project Based Learning)」を開発。アイデアを発表して終わりではなく、フィールドワーク終了後も地域と継続的に関われるように仕組み化を行っています。「若者に失敗できる経験を」をテーマに、Society5.0時代に必要なアントレプレナーシップの育成を目指します。2022年夏のPoC開始から累計3自治体で開催、21名の学生が参加。学生は、廃校活用やEBPM(証拠に基づく政策立案)などの事業プランを提案。ミチシロカを開催した音更町においては、廃校となった小学校を地域DXの拠点として活用開始されるなど具体的な事業化に発展しています。(400字)
これまでの実績(400字)
販売実績や、活動歴、継続年数など具体的な実績や事例等がある場合に記述してください。
2022年夏のPoC開始から累計3自治体で開催、21名の学生が参加。学生は広島大学や文教大学、法政大学、敬和学園大学など全国の大学から参加しました。参加した学生は、廃校活用やEBPM(証拠に基づく政策立案)などの事業プランを首長や自治体職員に直接提案をおこない、事業化に向けたディスカッションをおこないました。 自治体側の成果として、ミチシロカを開催した音更町においては、廃校となった旧昭和小学校をリノベーションし、季節によりさまざまな魅力を与える農業風景など豊かな自然に惹かれながら、サテライトオフィスやコワーキングスペースとして活用。都市部にいるときと遜色のない仕事ができる環境を整備し、地域DXの拠点として活用開始されるなど具体的な事業化に発展しています。2023年夏には北海道中標津町での開催が決定。移住促進や起業推進などをテーマとしたイノベーションを生み出します。(387字)
自由記入欄(400字)
これまでに記入しきれなかった応募対象の特徴や当事者として伝えたい点などがあれば記述してください。
ミチシロカは北海道内外の多くの自治体と大学などの教育機関とのリレーションを有する中央コンピューターサービスだからこそ開発できた教育×地域創生プログラムです。「若者に活きた学びの場を提供し、構築する新しい地域創生のカタチ」として、地域と若者が継続的に実施できる仕組みを設計しています。未来を担う学生が自分自身の「道(=ミチ)を知る」「未知(=ミチ)を知る」きっかけになって欲しい。若者の真っ白(=シロ)な未来、無限に広がる可能性を地域(=ローカル)でこそ見つけて欲しい。そんな想いを込めてミチシロカと名付けました。地域消滅時代と言われる中、それぞれの地域の価値を見える化していくことが重要です。私たちは地域の価値そのものを創出できる人材を育成するため、全国から共感してくれる若者を募集しています。まちの“らしさ”をつくり、ひとの“らしさ”を見つける。北海道から、地域と人のロールモデルを創ります。(397字)
ご覧いただいてわかるとおり、ミチシロカは表層的なデザインを押し出したわけではなく、「社会の現状や課題を明確に捉えたプログラムとした設計思想」を意識してエントリーシートを書き上げました。
二次審査(会場審査)のポイント
無事に一次審査を通過したあと、二次審査に移ります。
二次審査は下記のようにおこなわれます。
「審査委員が提出いただいた現物を一つずつ手に取り、応募情報を再度確認しな がら、通電できるものは通電してその作動状況を確認し、時には自身で身につけてみたり、実際に 使って試してみたりする体験を通して審査を進めていきます。現物がないものについては、代替品として のパネルや資料をじっくりと読み込みます。」
二次審査については、審査当日は私たちも現地に同伴ができないのです。
したがって、二次審査の搬入時に自分たちのおよそ1メートル四方のブースの上で自分たちのプログラムのポイントを表現できるかが重要なポイントとなります。
実際に二次審査の会場にいくと、同ジャンルのユニットでも300点程度の選考対象があり、会場の広さと選考される点数の多さに圧倒されます。
ここで冷静に考えると、「審査員は一つの作品あたり最長2-3分程度しかチェックする猶予がない」ということ。
したがって、短い時間で、プログラムの概要を理解させ、デザインの観点での差別化ポイントを理解させ、「この作品は落とせない(=選ばないといけない)」と思わせるかが二次審査通過の鍵であると考えました。
実際に私たちは下記の内容を展示しました。
プログラム紹介パネル(A0サイズ)
フィールドワーク冊子
(2022夏真狩村版、2022夏音更町版、2023冬真狩村版)活動写真スライドショー(iPad mini)
特にミチシロカはプロダクトではないため、パネルでの説明が勝負。パネル制作には力をいれました。
パネル制作は、ミチシロカのフィールドワーク当日から伴走いただいているプロコム北海道のみなさまに素敵なパネルを制作してもらいました。
実際に2次審査会で展示したパネルはこちらです。
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パネル制作において重視したポイントは、下記の3点です。
「全体像が一瞬で理解できる」メインビジュアル
「概要・背景」「実施内容」「ステークホルダー(自治体)からのコメント」が瞬時に判断できるレイアウト
審査のポイント「人間的視点」「産業的視点」「社会的視点」「時間的視点」それぞれに解を出す
実際に、二次審査後の搬出時にブースを確認したところ、置かれた冊子が読み込まれたように元々置いていた場所からずれていたことが確認できました。
最終的な評価ポイントでも触れますが、実際に審査員の方々はかなり細部にまで読み込まれていることがわかりました。
これだけ数多くの展示点数があるなかで、一つひとつを綿密に審査されていることに驚きを覚えました。
グッドデザイン賞を振り返って
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グッドデザイン賞を狙おうと決心し、約半年間をかけてなんとか受賞できました。
これまで、自分たちが目にしたり、実際に触れたりするプロダクトやサービスに「Gマーク」(グッドデザイン賞認定のマーク)が、これだけ労力と時間をかけて審査・評価されていることを初めて知ることができました。
当然ですが、グッドデザイン賞に応募していない素敵で、社会的意義がある取り組みは様々ありますが、実際に自分たちの取り組みを言語化することの重要性を痛感した機会でした。
ミチシロカをゼロからつくったプロジェクトマネージャー・入交 里奈(いりまじり・さな)はグッドデザイン賞について下記のように振り返っています。
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まずは、ミチシロカに携わってくださった皆様のおかげで受賞できたと、心から感謝申し上げます。
過去に受け入れを快諾してくださった自治体の皆様はもとより、参加してくれた学生のみんな、ミチシロカにアドバイスをくれた大学の先生方、いつも素敵なミチシロカ冊子を作ってくださっているデザイン会社の皆様…そしてもちろん社内外のプロジェクトメンバーの皆さん。誰にも足を向けて寝られないなぁと思います。
過去のnote記事を見ていただけると、私たちがどんな想いでここまでたどり着いたかというのはお分かりいただけるかとは思うのですが、20代のころからずーっと北海道の東のほうでお仕事をしてきて、口では「地域は日本社会がこれから直面する課題の最先端にずっとチャレンジしてきたすごいところなんだぜ」って言いながら、それでも、自分たちのやっていることって正しいのかなぁって、迷いも多くある日々。自信が持てないときもあるというか。
そんな中でグッドデザイン賞をいただけたことは、よかった私たちのやってきていることは間違ってなかった、と思えて、一つの自信につながる出来事でした。
社会に真摯に向き合い続けることこそが、お仕事の基本だと思っています。
これからも、その基本姿勢を貫きながら、少しでも地域社会を豊かに幸せにできるような、そんなお仕事をしていきたいと思っています。
ちなみに、審査委員の評価コメントは下記のようにいただきました。
地域課題の解決と学生のキャリアの多様化に着目し、双方に意義をもたらすプログラムとして丁寧に設計されている。このプログラムを通じて、地域社会の課題に向き合い、解決の企画を生み出し、実践していくまでの総合力を持った人材が育まれていくこと、そしてプログラムを通じて生まれたアイデアが実装され、地域の未来に変化をもたらしていくこと、その両側面からの発展性に期待したい。
プロジェクトの本質を突いた内容であり、さらに、私たちの今後チャレンジしなければいけないことにも言及しており、しっかりと審査・評価いただいたと感服いたしました。
次の目標は「グッドデザイン賞ベスト100」
今回、グッドデザイン賞を受賞したことは大変うれしいことですが、同時に、「グッドデザイン賞大賞、ベスト100には選ばれなかったか…」という悔しさもありました。
特に、我々がベンチマークとして前々から目をつけていた神山まるごと高専がグッドデザイン賞大賞候補(ファイナリストの投票で2位)として選ばれていたことは、私たちの時代が来たなという気持ちとともに、少し複雑な心境にもなりました。さらに、大賞には老人デイサービスセンター「52間の縁側」という、これまた地域コミュニティデザインの作品が選ばれたのです。
これからミチシロカは次のフェーズに入ります。ミチシロカのコンセプトは、「”らしさ”をつくる、まちづくり。”らしさ”を見つける、ひとづくり」です。
参加した学生が、この経験を糧に「らしさ」を発揮し将来活躍することで、その結果さらに地域の力が増し、日本全体が活力を増す。さらに、プログラム自体も地域社会のちっぽけだとしても一助になる。「北海道から、地域と人のロールモデルを創る」という想いで開発されたのがミチシロカです。
さらに地域づくりについて共に考え、共に創る取り組みを進めてまいります。
編集後記
私たちがグッドデザイン賞にエントリーしようと決心したときに、過年度のグッドデザイン賞受賞した企業や方々がどのように活動していたのか、エントリーにあたってどのようなポイントが重要なのかを調べるのに大変苦労しました。
なので、今回私たちの受賞までの流れを振り返り、言語化していくことで、このnoteを読んでいただいた方に少しでもヒントになればという想いで書きました。
このnoteに書いたことが全て正解だとは思いません。
(実際に、私たちは紹介動画を作成していないことが非常にネックでした)
グッドデザイン賞という機会を通じて、より一層、世の中のためになるプロダクトやサービスが世の中に発信され、多くの人がその価値を享受できる世界になることを願います。
ミチシロカ公式ウェブサイトもできました。ぜひご覧ください。