血まみれのタケノコと産土神様/48歳バツイチだけど運命の人に出会った【20】

BAR経営を始めた私は、お客のたー君と出会った次の日からつきあいはじめます。その頃たー君が経営する会社にサイコパスのような最悪な男が現れ、会社の金と客と従業員を盗って、自分の会社を興してしまいました。そして二人の周囲にはトラブルのみならず、不思議なことが次々と起こります。

元々「たー君」という人はキレやすく、突然ワケわかんないことで怒鳴るんですよ。
そして一旦火が付くと、延々と私を責め続ける。一時間くらいずっと。

サイコパスな曽我という男のせいで、従業員のほぼ全員が会社の売り上げを横領、しかも社長であるたー君のことを良く思っていないらしい。

そんな状態なので、たー君の精神状態が良いわけはなく。
私は毎日そのストレスを受け続けていたわけです。

今だから言うけど、よく別れなかったな(笑)

ところで付き合い始めてすぐに、たー君宅の神棚からカエルが跳んできたことは前に書きましたが。

そして、たー君が私の考えが読めたり、私の店に来たお客様のことを知っていたり、といろんな不思議なことがありましたが、私はキモチ悪いとかコワイとか思ってなかったんですよね。
たぶんカンが良いんだろう、ぐらいにしか思ってなかった。

あと、若いころに幽体離脱したこともある、とかいう話をされても、

「えー、私もしたい！」

と、能天気な返しをしていたわけです。

たー君の実家は、市内よりだいぶ離れた、いわゆる「在」のほうにあります。田舎に住んでる私が「田舎…」と思うくらいの田舎です。

山の連なりが見えて、田んぼと川があって。子供の頃の食事は山菜や川で釣った魚、畑で作った野菜です。
たまにお父さんがうさぎとかナゾの肉(なんの肉か聞いたけど自粛します……)を持ってきたりすると、お祭りのようなごちそうだと思ったそうです。そんな子供時代をたー君は過ごしたようです。

たー君の実家は山を持っているので、ある日二人でタケノコ採りに出かけました。

付き合い始めてちょうど10ヶ月、2016年の6月のことでした。
私は市内育ちなので、山菜採りもタケノコ採りもしたことないんですよ。なので、たー君に取り方を教えてもらいました。

「そこにあるヤツを蹴って、取り出せ」

……と言われたので、私は地面から頭を出しているタケノコを蹴りました。

すると。

折れたタケノコの中が血のように真っ赤になっていたのです。二人ともしばらく呆然とそれを見つめていました。

たー君は58年生きてきて(当時)こんな気持ち悪いタケノコは初めて見た、なにか悪いことでも起こるのかもしれない、と言い出し、たー君の実家近くにある神社に行くことになりました。

人がだいぶ流出してさびれた田舎町です。
細々と米や野菜を作って生計をたてているような家が百戸程度で、住んでいる人たちは高齢者ばかり。そんな土地にある古びた神社に行きました。

昔は人も多く、お祭りもにぎやかだったそうですが、今はひと気がなく、鬱蒼と茂った森の中にその神社はありました。

森の中にある石段を上がっていくと、木々の間から爽やかな風が吹いてきます。

神様に手を合わせて「悪いことが起りませんようにしてください」とお願いしてきました。
それから「たー君と仲良くいられるようにがんばります」と。

ところが。

ダーさん宅に帰って画像を見てみると、私のはなんともないのに、ダーさんのスマホに妙なものが映っていました。

一本の木に三つの光が当たっており、上から女性の顔、男性の顔、タヌキの顔……のようなものが映っているのです。

なんだこれ？

その時撮った画像、わたしたちは神社の神様だと思っていて「悪いもの」だとも「失敗画像」だとも思ってないのですが見る人がみたら、心霊写真と思う人もいるかもしれません(…なので割愛します)。

私とダーさんは「神社の神様たち」だと思っています。あと一番下はタヌキの霊。タヌキの神様かもしれません。

その後調べたら「うぶすな神」と言うのだと知りました。人が生まれた土地の神様なんだそうです。

良く見ると、神様は微笑んでいるように見えるので、私たちが来たことを喜んでいるのだと解釈しています。

私は北海道は稚内で生まれたので、自分が生まれた土地の神社にはずっと行ってないんですよね。
いつか行きたいとは思っているのですが、たー君も母も行きたがらないし、一人で行くしかなさそうです。

そういえば神社でたー君のスマホには映っていた「謎のもの」が、同じものを映したはずの私のスマホには映っていなかった。
そのことでたー君が、私のスマホのことをからかったんですよ。安いヤツ買ったからだ、って。

で、その後私はスマホをiphoneに代え、デジタルカメラも買いました。
たー君は私と付き合いはじめてから、旅行を趣味にしはじめたので、あちこち撮るようになったわけですが。

たまにたー君を撮ると妙なものが映るんですよね。なんだろ、周りに透明な丸いものがいっぱい飛んでる？

レンズの汚れだとしても、前後の画像にはこんなもの付いてないんですよね……。

(苦手な方は回避推奨)

たー君って、やっぱりどっかおかしいよね？

あっ、ちなみに血まみれのタケノコは、赤いところを取ってちゃんと食べましたよ。
「山のものは粗末にしてはいけない」
……というたー君の先祖代々の教えだそうです。

つづく