ちょいちょい書くかもしれない日記(プラケ)
もう15年ほどイモリと暮らしている。
実家の勝手口で干涸らびているのを拾い、あまりにも埃だらけだったので、せめて綺麗に洗ってから埋めてやろうと、小皿の水に浸してよそ事をしていたら華麗に復活していた。
イモリは相当カピッとした状態からでも、わりに高確率に甦るようだ。覚えておいてやってほしい。
たぶん、雨の日に、裏の沢から後先考えずに冒険の旅に出たのだろうと推測したものの、それが確実でない以上、沢に放り込んで済ませるというわけにはいかなかった。
沢の小さな集落で長年育まれたイモリたちの遺伝的な性質に、人間が無造作に異分子ぶっ込むようなことがあってはならない。
埋葬が目的だったとはいえ、結果として保護した以上、私はこの子を野生環境から切り離してしまったのだ。
やむなく昆虫などを飼育するためのプラスチックケース(以降プラケ)を買ってきて飼育を始めたのだが、最初は水の量も餌も水の交換頻度も手探りで、なかなか大変だった。
半年近くほとんど拒食状態だったので、それにもハラハラさせられた。
犬や猫と暮らしていると、「食べない」ことに大きな恐怖を抱いてしまうものだが、イモリの場合は、そこまで神経質にならなくてもよかったらしい。
ある日、今日もダメですよね? と諦念と共にピンセットで差し出した赤虫を猛然と食べ始め、以降は拒食はない。
冬眠こそさせないが、冬には著しく食欲が落ちるだけだ。
それは単に、代謝が下がった体が多くを欲さないだけなのだろうと思う。
我が家のイモリは、1週間に1度、水を交換するときにペレットを食べさせる、というのがいちばん調子がいいようだ。
夏場は代謝がいいので、3日に1度に切り替える。
ネットでイモリの飼育法を検索すると、毎日食べさせ、毎日水を交換する派の飼い主さんもいるが、このあたりは共に暮らしながら、その個体の癖や体質、好みを見極めながら決めていけばいいのだと思う。
両生類なので、犬や猫のように人間と強い絆を育てていくタイプの生き物ではない。
もっとドライにシンプルに生きている。
私と他の人たちとの区別もついてはいないのではなかろうか。
それでも、お互いの存在は気にしているし、たまに「うぇーい」とプラケの壁面越しに手のひら(手のひら……?)を合わせてみたりして、それなりにコミュニケーションを取りながら暮らしている。
正確な年齢を知る由もないが、これからも淡々と呑気に長生きしてくれるよう願っている。
午後からスコールよりは少したおやかな感じの雨が小一時間降った。
雨は嬉しい。
庭の水まきを休めるのは本当にありがたいし、撒水よりずっとたっぷりとした水が、土に深く染み込み、草木を潤してくれる。
ただ、今日の雨は、ちょっと降る時間が早すぎた。
昼下がりのアツアツのアスファルトは、雨がやんだ瞬間、とんでもない量のモワモワと暖かい霧を吹き出し始めたのである。
たちまち、町全体がスチームサウナと化した。かなわぬ。
だがおかげさまで、夏場は肌がいい感じに潤っている。
何事にも「八方よし」はないのだろう。