桑原裕子 荒れ野

原裕子 #荒れ野 独り暮らしの女の住む団地の一間に、火事で転がり込んで来る一家。女と一家には、何やら因縁があって、という展開。
今日は千秋楽。#平田満 さんが、「この雨にも風にも振動にも弱いスズナリという空間がよくぞ令和に生き残って」と挨拶で語った場で、濃密な物語が繰り広げられる。
人間は、愛し愛されて生きていくはずなのに、ふとそれが幻のように思える時がある。愛ならば、最初から幻と信じてもよいが、支えならどうか。愛ではなくとも何かと、誰かと支えあって生きるから人間ではないか。そして、それが幻ならばという恐怖に、人は一度は怯える。
団地の一室の、そこにありそうな会話。でも、観客が皆すすり泣くのは、みんな自信がないからだ。 息苦しくも重くもないドラマだが、これを目の当たりにし、自分に置き換えるからこそ涙腺が緩み、心を揺ぶられる。
平田満さんをはじめとした俳優女優陣は当て書きされたように隙がなく、完成度が高い。でもだからこそ、この戯曲を、違うキャスト、違う演出で観てみたいのは贅沢か。本日千秋楽。なんとか当日券に滑り込んで最前列補助席。我ながら引きが強い。 @ ザ・スズナリ