医療レンタル家族【創作ラジオドラマ】

MEGURU~少子高齢化とレンタル家族~

少子高齢化とレンタル家族①

〈アラーム音:ぴぴぴぴ ぴぴぴぴ〉

佳子「う~…眠い…寒い、眠い…エアコンつけ忘れた」

もぞもぞして、テレビをつけて、エアコンのスイッチをオンにする。
佳子「仕方ない…起きるか。今日はリモートだからゆっくりできるからよかった。こんなに寒いと準備するのもだるいし。…今日も大きなひとりごと…今日も独身だぁ」

〈卵を割る音、フライパンでスクランブルエッグを作る。お米・納豆を食べる。彼女は食べ合わせが少し変。〉
〈ニュースを見る。〉

ニュース「孤独を感じている60代70代の方が増加しており、少子高齢化の影響で夫婦や家族を持っていない人も数も昨年に比べて10%増加との調査結果が出ております。……」
佳子「はぁ…」

〈箸でご飯を食べる音。〉
〈アラーム音:ぴぴぴ ぴぴぴ〉

佳子「おはようございます。」
会社員A「おはよう。今日は連絡事項は特にないけど、冬になって風邪ひきやすくなっているので体調管理はしっかりするように。あ。今日の地域ニュース見た人いる?もしいたらちょっと共有してほしいんだけど……」
佳子『今週も仕事が始まった。休日ってなんでこんなに早く終わるんだろう。今の仕事は別に向いてる仕事じゃないし、早くあの仕事したいなぁ…。早くこんな仕事終わらせたい~…』

〈音:ガチャ〉
佳子「ただいま~。って誰もいないか。ふう。よし今日も頑張った。お腹空いたなぁ…。ご飯作ろう。」

〈ご飯を作る音。テレビの音。租借音。テレビ〉

〈ニュースから〉
A「少子高齢化が加速して、政府が結婚率上昇へ向けて新たな政策を打ち出しました。一昨年打ち出された政策は0歳~18歳の親の所得税・社会保険料が免除となるという内容でしたが、今回はどのような政策になるのでしょうか。」
 B「そうですね。前回の政策の効果は結婚率が1.1倍と若干の増加がありましたが、やはり消費税増税や物価高で結局は負担感をなくせたのかと言われると、まだまだというところが残ってますよね。両親の収入により子供の学ぶ機会が差が出てきてしまう経済的格差の問題も残ったままですよね。夫婦別姓やLGBTQの結婚を認めて3年ほど経っているので、そういったことを含めての1.1倍ですので…少ないですよね。だから結婚したら税金負担がなくなるってより、……」
佳子「結婚ね~私も前は考えてたけど、今はなぁ…だるいしなぁ…。そうだ、私が好きな仕事の時間が始まりますよ~!さてさて、MEGURUから今日メール来てたから見ないと!」

ナレーション「MEGURU。それは年齢60代~80代の孤独を抱えた人をターゲットに行う、繋がりのサービスである。少子高齢化が進んだ日本は、60代以降の30%が配偶者かつ一等親がいない独身者である。つまり、産みの親はすでに他界しており、何らかの理由で現在婚姻しておらず、子供もいない人のことである。インターネットが発展して近所や友達とのコミュニケーションも取りやすくなったが、ネットでは解決できない人との温かい関係性の構築を感じられるようにとサービスが提供されている。これは政府が打ち出した少子高齢化対策の一つで、高齢者が心身ともに健康に過ごせるようにすること、孤独死を減らすこと、孤独による精神疾患の発症を抑制するなどを解決する目的がある。そして、このMEGURUは、老人ホームの業界ではトップのサービス内容を誇っており、そのノウハウを買われ、政府から委託を受けることとなった。そんなMEGURUのサービス提供者の一人が槙野佳子27歳である。」

佳子「槙野佳子様 今回のサービス提供者様は梅田正利様62歳でございます。サービス利用の理由としては、心療内科の先生により、話し相手を作るよう指導されていましたが、仕事一筋だったため気軽に会える友人はいないとの事で、先生の勧めでこちらのサービスをご利用する流れとなりました。仕事は、70歳まで働ける雇用契約ですが、体力的に毎日勤務が難しく週3程に減らしているとの事です。しかし、仕事をしなくなり自分の時間が増えたことにより、孤独を感じやすくなって心療内科を受診していたという経緯がございます。医師からもMEGURUサービスを利用することで少しは、前向きな気持ちでなれるのでは?との判断があり、今回ご利用されます。佳子様のお力添えにより、正利様が心身の健康を取り戻して日々を送られることを願っております。まずは3か月お試し頂き、最長1年……なるほど。初回のサービス日はいつかな?2週間後の土曜日か。それまでに方向性を絞らないとな。梅田様の担当は百瀬さんか。百瀬さんに明日、アポ取って流れを確認しよう。それにしても、62歳ってまだ若いよね。私の両親と同じくらいの年齢だ。心療内科に通われているんだ…何があったんだろう。梅田様に何があったのか、ご本人から聞くことしかできないからなぁ。医者の秘匿義務って、こういうサービスには向いてないと思うんだよね…とか文句言えないや。とにかく百瀬さんのアポ取りアポ取り。」

ガチャ

百瀬「槙野さん。事務所までありがとうございます。また、今回も依頼を受けてくださりありがとうございます。この仕事、すごくはまっていますね。」
佳子「百瀬さん。そうなんです。OLの仕事は生活する為の仕事で、この仕事は自分の心を満たすためって感じるんです。だからこうして依頼をもらえるのがとても嬉しいです。」
百瀬「槙野さんはとても誠実に真摯に、高齢者さまに向き合ってくださるので、わたくし共としてもとても助かっております。さて、梅田さんの件ですが、お話してよろしいでしょうか。」
佳子「はい。よろしくお願い致します。」

佳子ナレーション「百瀬さんから聞いた話では、梅田さんは地方の高校を卒業してから役所で真面目に働いていたという。定年後の再雇用で現在、勤続44年の大ベテラン。仕事の評価は良く、真面目で部下や後輩にもちゃんと仕事を教えるそうだが、飲み会などの仕事後の付き合いはあまりなかったそう。地元に戻ることなく、現在もこの町で働いている…。来週の土曜日に百瀬さんと梅田さんのところへ顔合わせに行く予定だ。」

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