Willを言語にすると事業は動き出す
前回から「事業を創るWillを育む」をテーマに書いてきましたが、今回は育んだWillを可視化しよう、というお話しです。
もう10年以上も前ですが、今でも記憶に残っているシーンがあります。
それはある外資系企業に訪問した際に、受付横の壁一面に飾られていた大きな写真が気になりました。
(写真はイメージです)
映っているのは、広くて大きな石垣の写真である。荒涼とした大地に広がる石垣。
「なぜこんな写真が飾ってあるのか」と担当者に聞いてみると、こんな答えが返ってきました。
「この石垣は私たちが、こうありたいというチームの姿を現しています。
よく見ると、それぞれの石の大きさやカタチはバラバラです。
でも、しかるべき所に石を置くと、強い嵐や吹雪にも耐える立派な石垣になります。
私たちはこの石垣のように、一人一人の個性や能力を尊重しながら、お互いを支え合いどんな困難にも負けない強いチームを目指しているのです。」
石垣は、会社のありたい姿というWillを示していたのです。
とてもインパクトがあって、今でも石垣をみると、その会社のことを思い出します。
私たちは事業を産み出す最初の一歩は、自らのWillを見つけることからと考えています。
そしてそのWIllを、この石垣のようなメタファーだったり、言葉として表す必要があります。
このWillの言語化・可視化はとても重要です。
誰もが知っている大手アパレル会社の創業者は、年末にホテルに数日籠もり、自身の経営者としてのWillをおよそ何を表しているのか分からない絵にして持ち帰っているそうです。
この方バリバリのデータマネジメントをしている方なのですが、こんなビジョナリーな側面もあるのが面白いです。
皆さんも自分のWillを言語化・可視化してみてください。
例えばこんな問いに答える言葉にしてください。
「あなたはどんな世界を創りたいですか?」
「30年後、どんな自分でありたいですか?」
「死ぬまでに何を成し遂げたいですか?」
そして、それを表すようなメタファーを写真から探してみたり、粘土やレゴでカタチにしてみるのもいいでしょう。
(逆のアプローチもアリです。まずこの問いを頭に置きながら、カタチにする。そのカタチを眺めて言葉にする、というアプローチです。)
こうした言葉だけでなく「カタチ」にすることで、右脳の長期記憶に収まります。※言葉のみだと記憶の定着に時間がかかるのです。
言葉だけの場合は、何度も繰り返し見える場所においておきましょう。
ちなみに私は、スマホの待ち受けにしてます。
そして、あなたのWillを表す言葉が見つかったときに、確かめて欲しいことがあります。
その言葉は、借りてきた言葉ではなくあなたの想いの詰まった「体温のある言葉」でしょうか。
その言葉を語るとき、思わず力がこもる「体重がのる言葉」でしょうか。
皆さんのWillの言葉に体温と体重があれば、きっとどんな困難にも打ち勝つ
事業推進の原動力となるWillとなっているでしょう。
そして周りの賛同者や協力者が生まれることでしょう。
最後に、このWillの言葉にしたことで、瀕死の状態の会社を復活させた男のお話しを。
彼の名は田中仁さん。
デザイン性の高いメガネを低価格でスピーディーに提供することで業界を一変させたあの「JINS」の創業者です。
(写真はエコノミストONLINE「「メガネを超えたメガネを作る」田中仁 ジンズCEO 編集長インタビュー/920」より)
創業以来の成長に陰りが見えたのは2008年頃。
新業態のお店がうまくいかず、そのタイミングでリーマンショックも重なり会社はかつてないピンチになりました。
今後の経営方針を決められずに悩んでいた田中さんが尋ねたのが、ファーストリテイリングの創業者・柳井正さん。
初対面は柳井さんの会長室にて、短い時間の中でこんなやりとりがあったそうです。
「どんなお仕事をされているのですか?」
「メガネの事業をやっています」
「御社の事業価値はなんですか?」
「……」
「ミッションはなんですか?」
「……」
矢継ぎ早に飛んでくる柳井さんの質問に、しどろもどろになった田中さん。
「志のない会社は、継続的に成長できない」という柳井さんの言葉が胸に刺さったそうです。
そこから彼は、会社のWillである明確なビジョンやミッションがないことを反省し、経営陣を集め合宿し議論を重ねました。
そこで出来たのが「メガネをかけるすべての人に、よく見える×よく魅せるメガネを、史上最低・最適価格で、新機能・新デザインを継続的に提供する」というビジョン。
その言葉ができてからというもの、次の打ち手や失敗を恐れない挑戦ができるようになったと言います。
田中さん自身の確固たる背骨のようなWillとなり、すべての事業の原動力になっていたのでしょう。
さぁ、これを読んでいるあなた。
あなたが生涯を通して成し遂げたいことは何ですか?
どんな世の中をつくることに力を注ぎたいですか?
今やっているお仕事と関係なくても構いません。
その言葉はあなたの背骨になって、事業を始める推進力となってくれるでしょう。
※田中仁社長のエピソードは、こちらの記事を参考にさせていただきました。
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