This is the Far East Network, an affiliate of the Armed Forces Radio!
YO LA TENGO -アルバム Sleepless Night に寄せたテキスト
Side 1
1. Smile a Little Smile for Me (1969 Flying Machine)
2. Wasn’t Born to Follow (1968 The Byrds written by Gerry Goffin & Carole King)
3. Roll On Babe (1974 Ronnie Lane and Slim Chance)
4. It Takes a Lot to Laugh It Takes a Train to Cry (1965 Bob Dylan)
5. new YLT song
Side 2
-Bobby Charles / Street people (1972)
-Andwella / Saint Bartholomew (1971)
-Donovan / Universal Soldier (1965 written by Buffy Sainte-Marie)
-Larry McNeely / Mississippi Water (1971)
-Karen Dalton / Something on Your Mind (1971)
「This is the Far East Network, an affiliate of the Armed Forces Radio!」
1959年、僕は日本の本州の最北の地に生まれた。窓の外には林檎畑が広がり、その生産量が日本一の地方都市。家の屋根に上ると、草原の向こうに小学校が見えた。僕は道路を通らずに草原を越えて学校へ通っていた。
家からちょうど100キロほど離れた町には米軍三沢基地がある。在日米軍のFEN(Far East Network)というラジオ放送の電波は、ちょっと離れた我家のラジオまで届いてくれた。放送の大体が在日米軍兵士たちのリクエストによる音楽番組だったと思う。子どもの自分に英語がわかるはずもないのだが、英語で紹介されて始まる歌がとても好きだった。そのリズムやメロディにわくわくしたり、子どもながらにセンチになったりしていたのだ。
そう、FENを聴き始めたのは僕が小学校の2年生の頃だ。僕の子供時代は、ベトナム戦争の時期とちょうど重なっている。FENでリクエストされる曲はポップス、カントリー、ソウル、そしてロックと何でもありだった。サイケなロックも熱いソウルも内省的なフォークも、僕はそこで学んだ。もし、自分に音楽の先生がいたとしたなら、それは年の離れた兄よりもFENだった。
ティーンエイジャーになった自分はいっぱしの音楽評論家のようだった。街のレコード店にたむろして試聴ばかりしていたが、音楽好きの店主は優しく、バイトにやとってくれた。ひとりの音楽好きの高校生は、将来美術の道に進むなんて思ってもいなかったし、こうしてテキストを書いていても、どんなふうにして美術家の自分がここにいるのかわからなくなる。でも、まぁ、とにかく、美術の前に確かに音楽があったのだ。自分の感性が作り上げられたであろうティーンネイジは、音楽と共にあったのだ。
今回のレコードに収められた曲は当時聴いていたお気に入りの曲ばかりだ。B面に収められた曲たちは、その頃集めたレコードから自分が選んだものだ。そして、A面の曲はアイラたちが選んでカヴァーしてくれたのだけど、新曲もひとつ入っている!感謝!
人はよく僕の作品をパンクロックと照らし合わせて語ったりすることが多い。けれども、僕の作品を鑑賞するみんなが、その表層の下に塗りこめられた沈思黙考するような感情のレイヤーを感じるとすれば、それはきっとパンクロックに出会う前の音楽から得たものだ。僕は17歳の終りでパンクロックに出会うまで、自分の年齢に似つかわしくない音楽を聴いていたのかもしれないとも思う。けれども、今再びそれらの歌を聴きながら、その歌たちは明らかに今の自分を作り上げてくれたのだと実感している。
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