【算数】「割合の公式」のしくみ

■割合とは何か?

ことばの意味をきちんと理解することが大切ということを前回の記事で述べました。

ということで、最初に「割合」の言葉の意味を明らかにして、「割合とは何か」について考えていきましょう。

まずは、次の動画をご覧ください。

時間がなくて動画を見る暇がない方のために内容をかんたんに説明します。

割合とは何かを考えていくとき、「割合」を「分数」で表すことがキーポイントになります。だって、「分数」そのものが「割合」のことなんですから…。

「え、分数が割合だって、どういうこと?」って、疑問をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。例をあげましょう。

「このケーキの4分の3は残しておきましょうね。」と母親に言われた子どもの頭の中で、ケーキのイメージはどのように動くか、観察してみましょう。

まず、ケーキを4つに切りますね。
そして、3つ分を合体させると「4分の3」の完成です。
別の言葉で言い換えると、
ケーキを4つに「割って」、3つ分を「合わせる」
つまり、「割って、合わせる」から、「割合」なんです。

今度は割合の代名詞とも言える%を使ってみましょう。
「このケーキの27%」はどんな分量か。
1%は0.01つまり、100分の1のことです。
したがって、27%は100分の27になります。
ケーキを100個に「割って」27個分を「合わせる」、
つまり、%の世界も「割って、合わせる」から「割合」なんです。

ここの説明を外して、

いきなり
「もとにする量」だとか
「比べられる量」だとか
「割合の3つの公式を覚えて、数字を当てはめよう」だとか
「割合の問題は、『く・も・わ』でOK!」だとか
「割合とは、%で表す」だとか
「割合とは、ある量をもとにして、くらべる量がもとにする量の
何倍かにあたるかを表した数」だとか

いろいろな言葉で説明されても、子どもの頭の中では「割合とは、▼○●△※□〒×…???」でしかないでしょう、きっと。
いろいろな「わけのわからない言葉」が頭の中に次々と飛び込んでくるから、聞いている方は「割合」をイメージすることができなくなってしまうのです。

■イメージできる式が大切

割合をイメージできなくなっているから、多くの子どもたちが「割合はわけわかんない」と感じている現状があると思っています。だから、割合をイメージできる方向に導いていけば、割合はそんなに難しい単元にはならないはずです。

次の文章題をご覧ください。

今日、まんじゅうを7個買いましたが3個食べました。
今、まんじゅうは何個残っていますか。

この問題から、

 7-3

という式がかんたんに立てられ、4個という答がすぐに出てくるでしょう。
この「7-3」という式が浮かぶ背景として、

「まんじゅう7個のうちの3個を食べる」が

 ▢▢▢▢▢▢▢
    ↓
 ▢▢▢▢■■■ 

とイメージされ、

また、「その具体的なイメージ」と「7-3」という式が一致しているからこそ、この式「7ー3」は「意味のある式」となり、理解可能な式となっているのです。

一方、割合の問題に出てくる、いわゆる「割合の公式」にあてはめた式は
理解可能な「意味のある式」になっているのかといえば、う~ん…、といった感じじゃないでしょうか。見てみましょう。

(   )円の3割は60円です。

(   )の中の数字を求める式は、割合の公式から、「もとにする量=比べられる量÷割合」を選んで、割合を小数に直してから、公式に数値を当てはめて作ります。

 60÷0.3

どうでしょうか。

果たして、この60÷0.3の式が具体的なイメージをともなって、先ほどのまんじゅうの問題のようにじゅうぶんに納得された形で理解されているでしょうか。

なかなかむずかしいのではないかと思います。

■割合の公式のしくみをさぐる

ということで、「割合の3公式」はそれぞれどういうしくみで成り立っているのかをさぐっていきたいと思います。

※ 動画に誤りがあります。
8分52秒あたりです。「60÷3×10」と言いながら、「60+3×10」と書いています。(^_^;)
正しいのは「60÷3×10」の方です。また、8分58秒あたりの「この公式」は「この式」に変えてお聞きください。
よろしくお願いします。m(_ _)m

「割合の3公式」の意味をご理解頂けたでしょうか。

慣れてくると、60÷0.3を見たときに動画の中の説明にあったようなしくみがイメージされて、「60を3で割って10倍しているんだなあ~」と見ることができるようになります。

だけど、べつに公式を使わなくても、割合を分数でとらえていけば、「イメージできる式」を使って処理できるので、子どもたちにとってもわかりやすくなるはずです。

ちなみに、文科省の新指導要領には、百分率(~%)に関して、次のような記述があります。

■割合の公式を使わない方が文科省の見解に沿う

小学校学習指導要領解説(一部抜粋 P189より)

割合をなるべく整数で表すために,基準とする量の大きさを 100 として,
それに対する割合で表す方法が,百分率(パーセント)である。
したがって,割合を整数で表すと分かりやすいというよさに気付くようにすることが大切である。

このように文科省が割合を整数で表すと分かりやすいというよさに気付くようにすることが大切と学習指導要領の中で謳っているにもかかわらず、そのことに反するかのような「百分率を小数で表す分かりにくさ」を採用してまで、なぜ公式にあてはめて解かせようとするのか、理解に苦しむところです(なお、公式を使って解くということは文科省に責任があるのではなく、教科書会社が勝手にやっていることですが。学習指導要領の中には公式を使って解くことは記述されていません。もしかして私が読み落としているかもしれませんが…)。

公式に当てはめて割合の問題を解くと、立てられた式は理解不可能な式になるうえに、整数で表すという百分率のよさを台無しにしてしまいます。

しかし、公式を使わないで解く世界においては百分率を整数のまま扱うことができるので、文科省の学習指導要領に沿うことにもなり、また、理解可能な式を立てるということで、子どもたちにとって、わかりやすくなると思うのです。

割合の意味を考えながら自分の頭で考えてふつうに解く方法を現場で採用していけば、おそらく割合がむずかしいと嘆く小学生の数は激減すると思いますが、いかがでしょうか。



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