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クラフトビールから、ミチクサビールへ。

こんにちは、代表の江藤彰洋です。FOC(フォク)の販売を開始して今月でまるっと一年が経ちました。今では50を超えるお店の方々にお取り扱い頂いており、本当に有り難く思います。

さて、いきなりではありますが、実は今月に入ってミチクサ醸造所の公式HPからとあるキーワードを全て削除しました。

それに伴って何かが変わるとかではないですが、私たちにとっては物凄く大きなことで、勇気がいる決断です。開業当初からずっと迷ってきたことでしたが、今のお取扱店さん達の暖かい気遣いに背中を押され、そんな決断をした最近です。

何を消したのか、なぜ消したのか。その詳しい内容はまたいつか改めて書きまとめてみようかと思います。が、今回のブログ記事を読んでいただくと概ね想像ができるかもしれません。

今回は、ミチクサビール「FOC(フォク)」の一年間を振り返って、少しばかり今の気持ちを書き綴ってみたいと思います。

ミチクサの道は、いばらの道

私たちミチクサ醸造所の「FOC(フォク)」は、とにかく分かりにくいビールでして、クラフトビールの王道とも言える、柑橘!苦い!甘い!酸っぱい!スムージー!みたいな、そういう分かりやすい特徴の世界観のビールとは少しばかり立ち位置が異なるというか、異質な存在と言えます。

今の日本のクラフトビール業界は、他業界同様にアメリカの影響を多分に受けており、単体飲みのカルチャーと、熱狂的なビールの愛飲家の需要・収集欲に支えられて成り立っています。

もちろん普通に美味しいビールを求めて手に取る人もいますが、業界全体でみればわずかなもの。一人当たりの飲む量・回数は冗談なしで一〜二桁ほど異なる印象です。

そんな方々に支えられている業界だからこそ、生きていく上では分かりやすい特徴や存在感がとても大切。話題性やプレミア感、パンチが効いているか否か。

兎にも角にも愛飲家の欲望に火が付くようなプレゼンスやイベント感が求められます。それはそれで大切なことです。

しかしながら私たちが作りたいビールは、その方向性ではありません。前回のブログ記事で書き綴りましたが、私たちが作りたいものはあくまでも「脇役のビール」。

味覚や脳に直接訴えかけるような尖った個性ではなく、優しく包み込むような丸みのあるバランス感を。思わず目に付くような圧倒的な存在感ではなく、色んな空間に自然と馴染むような、そっと添えられた一輪の花のような存在のビールを。

自分たちの考えをビールで追求していこうとすると、どうしても今の売れ筋・売り方・業界全体の方向性とは違うところに向かう必要性がありました。

すでに先人に開拓された道ではなく、似ているようで全く違う未開拓の道。これをいばらの道と言わずして何というか・・。

クラフトビールから、ミチクサビールへ。

そんなミチクサビールFOC(フォク)ですが、冒頭でもお伝えした通り、現在は50ほどのお店の方々にお取り扱い頂いております。本当に有り難いです。

この数字は直販のお酒メーカーとしてはとても少ない状況ですが、私たちとしては物凄く自慢のお店さんたちでして、出会えたことに感謝すると同時に、出会えるに至った自分たち自身のことも強く褒めてあげたいと思っています。

事情によりまだ直接はお会いできていない方もいますが、ほぼ全てのお店の方と事前にお会いしており、真面目なことも冗談も言ったりしつつ、お互いにお互いのことを話して、その上でお取り扱い頂いています。もちろん飲んで頂いた上で。

価値観や方向性が合わない場合はお断りもしますし、方向性は違うけど何だか好き!みたいな方には、私が大好きな他の醸造所のビールをお勧めしたりもします。絶対にここのビール飲んでみた方がいいですよ!みたいな。

もちろん選り好みできる立場で無いことは重々承知しています。実際に経営的には未だピンチです。が、自分たちの核となるポリシーだけは曲げずに、その代わりにその他のところで精一杯がんばっていく。

そうやって色んな努力やご縁の先で、やっと出会えた数少ないお店の方々なのです。足を運んで欲しいに決まっています。

何というか、最初は「こんな謙虚すぎる思想のビールに、果たして需要はあるのか・・?」と内心やはり不安に思っていたわけです。どれだけビールを介した表現力に自信があったとしても、そもそものコンセプトが分かりにく過ぎるリスクはある気がしていました。

だって「脇役のビールです」なんて言いながら提供はできないですよね。言い回し次第かもしれませんが、基本的にはチンプンカンプンです。私たちでさえ言葉で伝えるのは未だに難しい。それこそ前回の代表ブログの記事を今一度読んでみてください。長いですから。(長いですが、最も読んで頂きたい内容ではあります。)

このビールは、伝えることよりも伝わることを優先したビールですので、価値観が合わない人にはとことん伝わらない。手に取ってくださる方々の感性やセンス、人間性によって如何様にでも変化する不思議なビールです。

だからこそ、こんなに作り手の想いを受け止めてくださる人達がいるとは…と、今のお取扱店さん達に出会えたことそのものが本当に嬉しく、ここまで読み進めてくださった皆さんにだけでもせめてそのことを知って頂きたいのです。

最近では、クラフトビールの中の一銘柄ではなく、「ミチクサビールというカテゴリーの中の、FOCホワイト/ブロンド/アンバー」みたいな、そんな棲み分けの表記で紹介してくださるお店もあり、何だか胸が熱くなります。

2年目は、もっと会いに行きたい

私たちがそのような粋なお店の方々に支えられているということを踏まえて、ぜひ皆さんにもお店に足を運んでいただきたいと思っています。

そして、そのお店にFOCが置いてある意味を想像しつつ、それぞれの空間やお料理と共にうまれる美味しい時間を味わって頂けると嬉しいです。

私たちもこの1年間は全くと言っていいほど身動きが取れなかったので、次の一年間はもう少し身軽に動けるようになりたいと思っています。

そのためにもまずは経営的な側面の課題を解決していけるように、しっかりと頑張りたいところです。

何とも分かりにくいビール、ですが、「気付けばいつもそこにある」そんなそっと寄り添い続けられるビールになれたらという想いはまっすぐに、作り続けていきます。
皆さま、これからもどうかよろしくお願い致します。


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