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書籍の表紙を撮影してWeb上にアップしてもいいの?
「書籍の表紙を撮影してWeb上に公開するのは著作権侵害になるの?」
「書影(書籍の表紙の画像)をSNSにアップしてもいいの?」
全く問題ありません。
日本には著作権について争える裁判所が2か所しかありません。
著作権に詳しい弁護士はほとんどいません。
いただいた質問に回答するために、著作権に詳しい弁護士さんに有料相談してきました。
結論!
書籍の表紙を撮影してWeb上にアップするのは問題ない。
書籍の中身を撮影してWeb上にアップするには、著作権者に許諾を得る必要がある。
書籍の表紙の写真をWeb上にアップすることが問題ないのはなぜでしょうか?
詳しく解説します!
書籍の中身を撮影してWeb上にアップしたい場合は、どういう手順を取ればよいのでしょうか?
実際にやってみました!
■ この記事を書いている人
・ Webコンサルタントで、大学の非常勤講師。
・ Webライティングの講義を担当しています。
1. 書籍の表紙を撮影してWeb上にアップするのは問題ない
1. 著作権とは?
著作権とは、著作権者の財産を守る権利です。
著作権者は著作者(著者または作者)であることが一般的です。
著作権を管理する第三者が著作権者である場合も。
2. 書籍の表紙を撮影しWeb上にアップするのが問題ないのはなぜか?
書籍の表紙が見えているだけでは経済的損失がないからです。
書籍の中身がWeb上にアップされると経済的損失があるため、中身は著作権法で保護されています。
書籍の表紙は、風景と同じで普通に見えているものです。
このため、撮影しWeb上にアップすることに何の問題もありません。
許諾を得る必要もありません。
3. タイトルが載っているのに問題ないのか?
タイトルは著作物ではありませんので、問題ありません。
書籍のタイトルは出版社の担当編集者がつけるものです。
できるだけ類書とかぶらないようにしても、同じような内容の書籍であれば酷似してしまう場合があります。
歌詞と同じで、もし全く同じタイトルであっても法的には何の問題もありません。
見出しもタイトル同様、とても短い文なので著作物にあたらないです。
著作物は表現されたもの(中身)を指すため、タイトルが載っている書籍の写真をアップしても問題ありません。
4. デザインが前面に出ている表紙でも問題ないのか?
[2024/12/23:数人の方から質問をいただいたので、この項目を追加しました]
出版社の担当編集者さんに確認したところ、デザインが前面に出ている書籍でも問題ないとのことです。
理由は、書籍の紹介や販促目的での使用については問題ない旨、事前にクリエイターさんに合意を取っているため。
それを含めてのイラスト料を設定されているそうです。
そうでないと、最近の小説はカバーが全面イラストのものも多く、販促や紹介ができなくなってしまうとのことでした。
ちなみに、私の知り合いの報道カメラマン(元大手新聞社勤務)が言うには「表紙は売るためにあるもの」。
「お店と同じで、おしゃれな外観は営業のためにある。撮られるのが嫌なら建物全体に黒い網をかけて全く見えないようにすればいい」
たしかに、建物は外観は撮影できても、内観は許可がいるから似ていますね。
5. 自分で撮影した写真を使おう
私は自分で撮影した写真を使うことをおすすめします。
自分で撮影した写真にはオリジナリティがあるからです。
「出版社のサイトの写真がきれいだから使いたいんですけど、いいですか?」
こう質問をいただいたことがあります。
「書籍の状態が良くない(読み込んでいてぼろぼろ)、撮影するのが得意ではない」という理由からでした。
私は読み込まれていたり、ふせんがついていたりする書籍のほうが価値があると思います。
書籍は使われることに意味があるので。
書籍の状態や撮影の腕前について気にすることはありません。
2. 書籍の中身を撮影してアップするには許諾が要る
1. 許諾を得ればアップしていい
実害があるため中身の公開は許されていませんが、著作権者に許諾を得ていれば問題なく中身の写真を公開できます。
たいていは全部アップしたいのではなく、一部のページを載せたいのでしょう。
許諾さえ得ていればよいです。
2. 書籍の著作権者は誰か?
「誰に許諾を得たらよいのか?」
「出版社のサイトに許可しないと書かれている場合はあきらめないといけないの?」
著作権は誰にあるのでしょうか。
出版社に著作権はない。
著作権者に著作権がある。
もし書籍の中身を撮影してアップしたい場合は、著作権者に確認すればいいです。
出版社に質問すると(確認が大変なため)「個人の方には許可していない」と言われることがあります。
無視される場合も。
著作権者に確認しましょう!
3. 著作権者にどうやって確認するの?
いまの時代、著者や作者はSNSやサイトを持っていることが多いです。
下の流れで確認し、アップしましょう。
著作権者のSNS、サイトに連絡する。
具体的に使用用途を伝える。著作権者から許諾を得たら、許諾を得た範囲内で使用する(著作権法63条)。
(公開後に御礼の連絡を入れることを忘れない)
4. 実際にやってみた!
例を載せるために、実際にやってみました!
今回ご協力いただいたのは梅原淳さん。
知り合いなので、メールアドレスを知っているところからのはじまりでした。
連絡先が不明な場合は、著者さんのSNSやサイトのお問い合わせフォームから相談してください。
メールでお伝えしたこと。
名前
※知り合いでない場合は、自分は何者であるか名乗り、サイトやSNSのコンセプトを簡潔に紹介してください。用途
著作権の説明をするため(※実際にはもっと具体的にお伝えしています)。お願い
書籍の中面を撮影した写真をアップさせてください。具体的な書籍とページ
『新幹線の科学 改訂版』、SBクリエイティブ、2019年9月、P92-P93
著者さんに連絡し、許諾をいただけたので下に写真を載せます。
掲載されている写真も著者さんが撮影されたもので問題ありませんとのことでした。
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著者名、タイトル、出版社名、発売年月、ページ数を写真の下の文(キャプション)に入れました。
許諾を得ていれば、ここまで引用級に具体的に書かなくてもよいのですが、細かいところまで丁寧に書かれているかどうかが重要だと私は考えます。
▼「画像の下の文(キャプション)の重要さ、書き方」については、下の記事を見てみてください。
中身を全部、またはほぼ全部アップすることは許されませんが、一部であり、著作権者に確認が取れていれば問題ありません。
ちなみに、写真や図解は出版社が用意したものである場合があります。
この場合、著作権者が出版社の担当編集者に確認します。
表紙もアップしてみました。

ちなみに、今回ご紹介した書籍は、2010年刊行『新幹線の科学』が大人気だったため、2019年に改訂版として刊行されたものです。
写真や図解が多く、カラフルで見やすくわかりやすい書籍です。
5. 引用であれば許諾を得る必要はない
引用にあたる場合は、許諾を得る必要なく使えます(著作権法32条)。
主従関係において、自分が主。
著者名、タイトル、出版社名、発売年月、ページ数を入れる。
たんなる感想程度では引用にあたりません!
画像をSNSにアップするとき、たんなる感想レベルでアップされていることが多いです。
表紙であれば問題ありませんが、中身の場合、著作権侵害にあたります。
ここまでの内容は、一般社団法人 日本児童文芸家協会さんの「著作権情報・読み聞かせガイドライン」に近いと感じました。
6. 無断掲載してしまっていた人へ
引用でもなく、無断でWeb上に書籍の中面を公開してしまっていた方がもしいらっしゃったら、削除してください。
削除すればそれ以上とがめられません。
3. 個人が著作権侵害で訴えられることはほぼない
表紙の写真がWeb記事やSNSにアップされたところで著作権者に実害はないので、著作権者から訴えられることはほぼありません。
裁判で争うと、書類の準備などの時間や弁護士費用など、とにかく年月とお金がかかって、貴重な人生の時間+お金を無駄にします。
そこまでして争うのは、相当な実害がある場合です。
例えば、2004年に谷川俊太郎さんら8人が「国語副教材への作品無断使用」に対して出版社6社を起訴した事件では、谷川さんらが勝訴し、出版社らが約1億1000万円の支払いを命じられることになりました。
国語教科書の副教材に無断で作品を使用されたとして、谷川俊太郎さんら詩人や童話作家の8人が、光文書院など出版社6社に副教材の出版差止めと総額12億880万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は差止めを命じた一審・東京地裁判決を支持するとともに、一審とほぼ同額の約1億1000万円の支払いを命じた。
北山元章裁判長は「副教材は著作権法で複製を認められる試験又は検定に当たらない」と指摘、著作権侵害を認定した。
判決全文(【事件名】国語副教材への作品無断使用事件(教材出版6社C)(2) )では、支払金額について細かく書かれており、「~を支払え。」が連発します。
著作権者が訴えるのは出版社などの団体であり、一般の人が対象となることはまず考えられません。
ちなみに、裁判では原告が個人の場合は名前は伏せられ、出版社だけが実名公開されます。
裁判所の記録や判決文には出版社の名前だけが残ります。
表紙は手の込んだデザインがされていることが多く、Web上にアップすることをためらう方もいらっしゃるかもしれません。
書籍の表紙をWeb上に掲載した程度のことでは著作権者は何も困りませんので、訴えられることはまずありません。
何も問題ないので、安心して使ってください。
4. まとめ
書籍の表紙を撮影してWeb上にアップしてもいいの?
著作権に詳しい弁護士さんに相談したことを紹介しました。
書籍の表紙を撮影してWeb上にアップするのは問題ない。
書籍の中身を撮影してWeb上にアップするには、著作権者に許諾を得る必要がある。
中身の許諾を得るには、出版社ではなく、著作権者に直接連絡してください。
(引用にあたる場合は許諾を得る必要はありません)
※あくまで書籍についての話であること、著作権については弁護士さんの間でも見解が分かれることを最後に付け加えさせてください。
参考:文化庁「著作権テキスト(令和6年度版)」(2024年12月14日参照)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
【2025/2/27追記】新刊出ました!
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