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強行突破

ついに東京オリンピック2020は始まってしまった。

「開幕したら浮かれ上がりすべてを忘れる」というこの国の思惑に反発しながらも新国立競技場周辺はどうなっているのかをこの眼で確かめたく、何なら反対デモに加担したい気持ちで開会式の始まる直前に千駄ヶ谷駅に到着した。

無観客とは言ってもそこは驚く程に人、人、人。みんな駅で観るの?と思える程に駅に人が群がっていた。そこから新国立競技場方面に踏み出すと、そこにも想像以上の人、人、人。歩道は隙間無い程の大人数、まさに密に突っ込んでいく感じだった。これぞまさしく人混み、人の波が楽しい夏祭り。私は政府の思惑通りに楽しくなってしまった。しかもまだ開幕前だと言うのに。

実は開会式の行われる新国立競技場に向かった一番の目的は、その今の状況をこの眼でというよりも、今まで世界各地で自らが観て楽しんできた開幕花火をせっかくの地元なのだから最愛の伴侶に見せたい、一緒に観たいという想いの方が大きかった。そして実際にはこれまで一緒に行く事、経験する事すら出来ずにいた夏祭りの雰囲気もおまけで同時にあじわう事も出来た。

もしかしたらこれからしばらくは何も無くなってしまう、終わりの始まりなのかも知れない大規模感染イベントの東京オリンピック、この機会を逃すとしばらくは一緒に行ける大規模イベントは無いかもしれない。これからどうなろうとも二人という最小単位、可能な限りの最前線に連れ出したかった。そしてそれは政府のそれとともに個人的な思惑は最後のスタジアム天井花火とともに成就した。

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開会式も終わり、煙も消え止まぬうちに千駄ヶ谷駅に戻ったが、新国立競技場を離れる時に言いようのない感覚が襲ってきた。一番に感じたものは虚しさだった。それは開会式なのに充実感をともなわない閉会式のような気持ちだった。感染拡大の中、選手もまともに練習も出来ずに真剣勝負なんて出来るはずもない。一番強い奴がいない金メダルを喜ぶ程虚しいものはない。そして私自身、自分もそこには居ない。

あぁ、本当に始めてしまったんだ。

そんな気持ちだった。感染防止を心がけ、日常生活を取り戻すという事からいうとブレまくりな私の思惑、胸中、行動。しかし選手の健康、選手生命を犠牲にしてまでも利権、利益強奪の強行突破開催の東京オリンピック2020はまったくブレずに破滅まで一直線に進んでいる。

千駄ヶ谷駅の改札を入り、新しくなったホームに到着すると、すでに電光掲示板には終電の案内が示されていた。家まで歩ける距離であるので時刻表は気にしてなかったが、これまでも競技場からの帰りの終電は世界各国やはり定番、好きな行程のひとつだった。

開幕してから日々、選手の感染者は拡大している。

そして、私達が感染しているかはちょうど2週間後の大会終了以降にわかる。

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石島 道康 / Michi ISHIJIMA
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