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【下北での記録】心のあり方が尊重される街

6月16日日曜日 午前10時頃

数日前に行きつけのお店で知り合って一緒に朝までカラオケをしたDJさん。夜にフル稼働する近所のミュージックバーで日曜朝営業をやっているとのこと。たまたまいい時間に目が覚めたので足を運んだ。

「あぁ!ありがとうございます、早速来ていただいて」

店を開けるとその方が掃き掃除をしており、どうやらもう閉めようかと思っていたところへの入店(以前も別のところでこんなことがあったのでつくづくタイミングが悪い)。申し訳ないなと思いつつもカウンターに座る。店の奥にはパイオニアの機材。店内には片手で数えれるほど足を運んだ渋谷のクラブの同じ匂いが漂っていた(しかしあのクラブ特有の匂いは一体何なのだろう。酒?機材?はたまた強い匂いを消すための何か別の匂い?)。

バーなので当然酒も飲めるのだが、朝営業ではかつてコーヒー屋で働いていたというその方がコーヒーも出せるということからそちらを注文。(数日後に同じ方からいただいたオリジナルのコーヒーの焼酎も美味だった)。ジャキジャキという音と共に豆が粉になってゆく。

出来上がる20分ほどの間の雑談。北のほう出身のこの方。下北沢には学生時代から服や音楽といったカルチャーに触れるためしばしば出向いていたらしいが、拠点となったのは数ヶ月前のこと。元々ロック通だったのだが、あるアーティストとの出会いをキッカケに電子音楽に傾倒していった結果今はDJとして活動しているそうである。

「実際ここで働いてみて思うんですけど、本当に面白い人たちが多くて。変わり者というか」

「あぁ、僕も来て数ヶ月ですけど、それはめちゃくちゃ思いますね」

コーヒーが出来上がる。苦すぎず、かといって苦みがなさすぎず、とても飲みやすい。いやそれでも甘いのが好きな自分にとっては少し苦いが、中途半端な時間にお邪魔させていただいてミルクと砂糖を出してくださいというのはやや横柄かとなかなか切り出せず、ブラックのまま飲んでいく。まあそれでも美味い。

その方は続ける。

「なんていうか、気持ちを大切にしてる街ですよね」

「気持ち、ですか」

「うん、誰がお金を稼いでるだとかどんな地位をもってるだとかじゃなくて、みんな心を大切にしてるように思えるし、現にそういう人が人としてもモテてるように思います」

心、気持ち。

よく耳にする言葉ではあるものの、普段自分はそういった言葉でこの場所を形容することがなかったためその表現は新鮮で、しかし強く納得させられた。

「サブカルの街」などとはよく言われたものだが、映画・音楽・本などといったそれらの作品には作者の「これを伝えたい!」が込められている、いわば心の投影。そんな心の投影である作品に魅了された人たちが集まる街。そうなるのは必然なのだろう。肩書きや経済力でなく、心ん中に何が詰まっているか。

その方と初めて会った時に行ったカラオケバー、酔っ払ったなんかの会社の「社長」さんと少しだけお話した時のことを思い出した。

俺なんかより世間的にすげぇとされてる人とこの辺で飲んだことあるけどね、偉そうな顔とかしないんだよ。ここではなぁ、みんな一緒なんだよ。だから君がどんな人か知らないけどさ、君と俺も、同じなんだよな。

つくづく素敵な世界だなぁと思う。


長居してもいけないと思い、入ってから1時間と経たないうちにお店を後にする。オススメされたインストのロックバンドの曲を聴きながら、それほど歩行者が多くないいつもの通りを歩いて帰る。

フラッとお店に寄って人と会話するだけで、自分にとって新しいアーティストや映画などを知ることができるのもまたこの場所の好きなところの一つだったりする。

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