【下北での記録】BUT MAMA SAID その①
5月13日月曜日 22時か23時頃
「おぉ、どっかいってたん??」
湯島から下北で降りた帰り。毎日のように通るこの道で声をかけられた。
下北の某カラオケバーで働いている芸人。学生時代の部活で知り合ってからかれこれ10年が経つ。
お店の外に出て看板の前で客引きをやっているのは店内のお客さんがゼロの印である。翌日特に用事がなかったのと、「就職が決まったら行きます」と約束していたのもあってその日はお世話になることにした。
失礼な話だが、正直このお店自体はそれほど好きじゃない。雰囲気もあまり落ち着かないし酒の種類も少ない。そしてチャージ含む料金とは別に謎のサービス料として15%のタックス料を頂戴される。カラオケが無限に歌えるところとお通しのお菓子が無限に食えるところが良い部分だが(あとたまに有名なラッパーの方がいらっしゃるという話も伺ったことがある)、申し訳ないけれどもっと良いお店はあるような気がする。
だがそんなややいい加減で荒んだ場所は、破天荒なこの人と会うには丁度良い空間でもあるように感じたり。
ヒッチハイクで東京から岐阜まで向かう、酔った勢いで知り合いの肛門に割り箸を突っ込んで入院させる、性交渉百人斬り(以上)、朝起きたら知らないベネズエラ人女性が隣で寝ていたなどなど多くの逸話をもっているこの方。陽キャ風でありそちら側にも溶け込めうる一方、僕と長い間付き合ってくれているということは根は陰の方なのだろう。お互いに良い失礼ができる間柄。当日の30分前に「家泊まって良いですか?」と聞いても泊めてくれるし、酔っぱらいすぎて僕がその方のニンテンドー64を壊した時にも笑って許してくれた。そして今日も奴は勝手に僕のツケで酒を飲んでいた。
芸人と水商売という職業柄コンボに加えて天性の頭の回転もあるのだろうか、コミュニケーション能力が卓越しており、聞き上手。その日も酒はあまり回っていないにも関わらず僕の方が話しすぎるくらいに話してしまった。
「最近マッチングアプリ始めたんですよ」
これまで使用したことがなかったことや、使用者の話を聞いてみてやってみようと思ったこの手のアプリ。
「結構ディズニー好きをプッシュしてる女性が思いの他多いなと思って、いや別にディズニー嫌いではないんですけど、そういう人たちってかなりアクティブでアウトドアな人が多いような気がして、おそらく自分とは合わないだろうなというか。」
なので最近はディズニーと対局にある、であろう分野であえて検索をかけてみることにした。すると、どこか波長が合いそうに思える方がヒットしやすくなったのである。
「そのディズニーと対局にあるものっていうのは?」
「タバコとタトゥーですね」
一般的にあまり良い印象ではない、夢の国よりむしろ少なくともPG12指定は食らうであろうアイテムたち。だがこれらをまとった女性は大抵個性的で、芯をもっている(ややバイアス)。
「ただマッチングは全然しないんですよねぇ」
せっかくストライクゾーンの女性をヒットさせる方法を見つけても、実際に出会えなければ元も子もない。いかがすれば良いものか…
などと考えているとその方が切り出した。
「ていうかさ、マッチングアプリよりもふとした出会いを大切にした方がええんちゃう?」
「といいますと?」
「関係をこれから作ったるで!っていうマインドやとお前無理してまうと思うのよ。それよりも「あれ、そういえばたまに会うこの人ええな」くらいの感覚で普段会う人と徐々に距離を縮めるくらいが合ってると思うで」
思い当たる節がいくつも出てきた。
自分は意中の相手を意識しすぎれば空回りしすぎてしまう。相手の気を引くために奇抜な発言や行動をしてしまい、少なくとも良い友達にはなれるであろうところをヘンテコな関係にしてしまうことが多々あった。「恋人を探す」という前提のあるマッチングアプリで出会った人であれば顕著にそれが表れるだろう。それらを鑑みれば仮に誰かとマッチングしても実る可能性はかなり少ないと伺える。
そうではなくまずは仲の良い友達になる。そこから「おっ?」と思ったら関係を少しずつ発展させていく努力をすればいい。その努力が足りてない、と言われたらそれまでなのだが、自分の場合は力んじゃ何もかも終わりだ。人にはそれぞれ合ったやり方がある。
頭がキレる割にはアホな人だという印象が強いこの方だが、これまでで一番的を得たことを言われたような気がしてまたたまには会いたいなぁと思ったり。
まあなんにせよ焦りは禁物
こんな有名な曲もあるしね