『赤と青とエスキース』のこと、いろいろ。
7作目の小説『赤と青とエスキース』、PHP研究所より発売中です。
1枚の絵画をめぐる、5つの愛の物語です。
PHPの編集者、北村さんから小説執筆のお話をいただいたのが2年前。
「『木曜日にはココアを』は、場所が横に動いていて、
『鎌倉うずまき案内所』は、時間が縦に動いていました。
今度はモノが斜めに動くような小説を書きませんか?」
そんなご依頼でした。
面白いことを言うなあ、と思いました。
それでは、「モノ」を「絵」にしましょう。一枚の絵が、いろんな時代といろんな人々をめぐっていく物語にしましょう。
お話ししながらアイディアが固まったのは、その時点ですぐだったと記憶しています。
一緒に美術館に行ったり、画材屋さんや額縁工房を取材したり……。
専門分野に携わっている方々にさまざまなことを教えていただきながら、北村さんともたくさん話し合いました。
私自身はもちろん、多くの方の想いがつまった作品です。
これまでと作風が違うと感じられるかもしれません。
帯に「新境地にして勝負作!」という言葉を付けていただきましたが、
誰かと勝負するというよりは、作家デビューしてから3年が過ぎ、自分自身へのチャレンジみたいな気持ちで書きました。
そして幸せなことに、この書籍自体がアートだと思えるほど、ほんとうに美しい本に仕上げていただきました。
ブックデザイナーは、岡本歌織さん。表紙だけではなく、どこをとってもため息が出るほど素敵です……。
タイトルは箔押しという贅沢!!
光の当たり具合や角度できらきらと輝きが変容します。
「箔」は作中にも出てくるモチーフのひとつで、見事な演出に感動しっぱなしです。エレガントな書体もオシャレ。
中扉も芸術的!!
目次ページ。撮影したスタジオの床です。木目の交差もまた味わいが。
さらに、カバーを外した本体がまたまた素晴らしくて……!
紙の色や質感も、徹底的なこだわりが感じられます。
装丁の中央にある印象的な水彩画は、U-ku(ゆーく)さんという水彩作家さんの作品です。
U-kuさんとの出会いやアートについては、こちらの動画で対談させていただいています。
U-kuさんのアトリエは、複数のアーティストさんでシェアされている素敵な場所。刊行前のご挨拶に、おじゃましました。
この建物、以前は銭湯だったそうです。その構造を活かしてアトリエとして使われているとのこと。
↑奥がU-kuさんのスペース。
もともとあった銭湯は、こんな感じ!↓
おもしろーい。
『赤と青とエスキース』には、水彩画を描くジャックという画家がペインティング・ナイフを使うシーンが出てきます。
表紙を撮影した際、画材屋の月光荘さんで購入したペインティング・ナイフを絵の上に置いているのですが……。
なんと!
U-kuさんも、この装画を描かれたときに、まさに表紙に映っている月光荘オリジナルのナイフを使っているとか!!!
これがその実物です。↓
スマホケースはU-kuさんが描かれたイラスト。素敵なので一緒に。
U-kuさんをはじめ、『赤と青とエスキース』を書くにあたって、さまざまな出会いをいただきました。
作品を書き上げるごとに、いつもいつも思うことなのですが、
この小説を、今書けてよかった。
心からそう思います。
どうぞお手に取っていただけたら幸いです。