ホンマタカシさんの個展『即興 ホンマタカシ / Revolution 9:Honma Takashi』。
東京都写真美術館で開催されている、ホンマタカシさんの個展『即興 ホンマタカシ / Revolution 9:Honma Takashi』へ。
この個展の出品作品の写真は全て、わたしたちが普段使用している、機器としてのカメラを使用せずに撮影されているそうです。
手法としては、自分がいる空間をほぼ完全な真っ暗闇にして、1箇所にだけ小さい穴(1mmくらい)を開けて、そこから部屋に入ってくる光(外の風景)が部屋の内部の壁に倒立状態で写ってきたら、その壁にフィルムを貼り、その光をフィルムに定着させる。
そのとき自分がいる空間(お部屋)自体がカメラとなって、被写体を撮影しているような状態。例えば、マンションの一室の内部に自分自身がいたとして、目の前に見えるマンションが被写体だとしたら、自分のいるマンションという建築物自体がカメラとなって、目の前にいるマンションという建築物を撮影しているような感じ。
それはまるで、カメラの内部で写真が撮影される過程の中に、自分自身の身体がそのままいるような状態。写真を撮影する自分自身はカメラの内部にいて、外的な要因などによっても変化していく被写体が壁に写る光を眺めながら、即興的にフィルムに定着させる。という環境を自ら作って撮影している。
この手法は、冒頭に引用させて頂いた、カメラの根源といわれる「カメラ・オブスクラ」が着想を得ているそう。調べてみたら、この手法で撮影されている方は他にもいらっしゃるみたいですが、僕自身はこういう手法あるのだということに初めて触れたので大変驚きました。
現代は、スマホで簡単に、どこでも写真が撮影できるのとは真逆に感じる発想で、どこにでも移動できるわけでなく、その場所(建築物等)に、固定されて(自分自身がそこにいなければならないので)撮影する、カメラというものが作られた根源に立ち返っていく方法。
自分の撮りたい被写体が見える場所で、自分が撮影したい角度でそれが見える空間自体が結構限られると思うから、それを探すのもそもそも大変だし、その空間を真っ暗闇にして、そこに本当に小さい穴だけ作って、そこから通る光を壁に投射してフィルムに焼き付けるって、、なかなか途方もなく感じる行為。
でも今考えたら途方もないですが、それを初めて発見したときの興奮と驚きとか、焼き付ける方法すらなかった自体にどうやってそれを焼き付けて物体にして残していくのか、先が見えない中でそれにトライしていく過程はめちゃくちゃ楽しかっただろうと感じます。
この「カメラ・オブスクラ(暗い部屋)」に写る映像(光)の現象については紀元前から知られていたそうですが、最初にその現象に注目したのは画家たちだそうです。正確なデッサンを描くために「カメラ・オブスクラ(暗い部屋)」を作った。そしてより鮮明な像を得るためにレンズが導入され、さらにその像をなんとか定着できないか?と考えた人たちがいて、それが写真の発明に繋がっていった。
「ホンマさんがその行為を敢えて行い撮影している理由は何だろう?」
と、感じたり、、
展覧会の会場の展示室の部屋の中央部に壁に囲まれて入れない暗闇の空間があり、その空間は壁の4箇所に丸い穴が空いていて、それぞれ違う空間からその暗闇の空間が覗けるようになっていて、その暗闇の空間にはピアノ等の楽器が置いてあり、壁には「9」という文字が写っている写真。
「その暗闇の空間はカメラ・オブスクラを再現しているようだけど、それが展覧会の空間のほぼ真ん中に作られている意味は何だろう?」
と、感じたり、、
本展の英題は「Revolution 9」ですが、これはビートルズが様々な音源を元にコラージュのように製作した「Revolution 9」というた曲へのオマージュとして捧げられているそうなので、その曲を家に帰って聞いてみました。
本展の英題は「Revolution 9」ですが、これはビートルズが様々な音源を元にコラージュのように製作した「Revolution 9」という曲へのオマージュとして捧げられているそうです。その曲を家に帰って聞いてみた。
すると、展覧会で感じた問いを、少し理解したように感じました。
同じ風景を異なる時間に撮影して、その一部分をそれぞれ組み合わせて、その風景を作り上げているのかな?と感じる作品があったり、荒い粒子がとても格好いい写真があったりと、写真の可能性を改めて感じた個展でした。閉館間際行って1時間しか滞在できなくて、もう少し滞在して感じたいなぁって感覚があったから、また行きたいな。
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