16歳の北海道一周旅行記 #8 札幌&道南縦断300km編
札幌での一日
朝。札幌のホテルを出ると、北海道特有の涼しく乾いた夏の空気に包まれる。北海道旅行最高の瞬間だ。
近くのカフェで朝食をとる。マルセイコーヒーさんのチーズトーストだ。
さて、今日は札幌で大学のオープンキャンパスに行く。なんといっても僕は高校生なのだ。旅行記に書くのは場違いかと思われるので、一気に夕方に飛ぶことになる。
午後、もう太陽は沈まんとして、空の青が濃くなり始めた頃、札幌観光をはじめた。まずは大通公園と札幌時計台。札幌には何回か来たことがあるため新鮮味はないが、いつ見ても時計台はその針を回している。この北の大地に開拓使が置かれ、時計が動き始めて150年弱が経った。今まで見てきた通り、北海道はとてつもなく広く、根室、稚内と日本の最東端・最北端まで建物や道路が作られていた。北海道開拓の歴史を象徴するこの時計台は、北海道を一周してみるとより偉大な感じがする。
さて、今夜の宿はまたも札幌である。近くの洋食屋で早めの夕食をとり、ホテルにチェックインを済ませた頃には日が落ちかけていた。
夜景を撮りに大都会・札幌の光の中に飛び出す。日本三大繁華街の一つ・すすきの。ニッカウイスキーをはじめとした電光掲示板が光り、札幌市電が行き交うこの交差点の景色はなんとも綺麗である。
続いて札幌駅併設のJRタワーの展望台に登る。さすが大都会札幌、光の海だ。厳しい自然に立ち向かった勇気ある明治の開拓使が築いたこの札幌の街は、幾度となく冬を乗り越え、遂には石狩平野を光で埋めるほどの大都市に成長した。偉大で、そして途方もなく綺麗な景色である。
さて、今日は札幌で一日中過ごした。今までの旅行の疲れをリセットするためにも、風呂に入ってアイスを食べたら、早めにベッドに入った。
札幌→函館300km
目が覚めた。今日の宿は函館である。時刻は9時半。少し寝過ぎてしまったようだ。まずは札幌駅から小樽行きの快速電車に乗る。函館に行くには逆方面なのだが、僕は小樽に寄りたかったのだ。なんせ本旅行では、北海道の全ての大都市を制覇しそうなため、小樽だけハブられるのはあまりに可哀想である。しかし残念ながら観光はできない。小樽駅に着いてすぐに引き返すことになった。理由は単純、僕が寝すぎたためである。北海道でもメジャーな観光地なのにハブかれる可哀想な小樽をなぐさめるため、一年前に行った北海道旅行の際の小樽の写真を併せて下にのせる。
さて、小樽を引き返す。左に日本海を望みながら列車は断崖絶壁を器用に走り抜け、住宅とビルの隙間を駆け抜けて札幌駅に戻ってきたのが11時すぎ。流れ星のような小樽観光だった。
「北海道み」の強い駅弁を買い、11時32分発の特急室蘭行きに乗りこむ。すぐに食べたいのをずっと堪える。駅弁は流れる車窓を見ながら食べたいのだ。定刻になり、列車は多くの乗客を乗せて札幌駅を出発した。さようなら札幌よ、再びここに来るのはいつになるだろうか。
しばらく札幌市内を走り、昨日乗ってきた旭川方面の線路と分岐する。列車は進路を東から南にとり、行った当時は絶賛建設中だったエスコンフィールドHOKKAIDOや、北広島、恵庭、千歳といった札幌のベッドタウン、そして新千歳空港を通り過ぎる。このあたりから流石の札幌都市圏の市街地も尽き、駅弁を食べながら眺めるのにいい感じの車窓になってきた。
買ったのはこちら。札幌の位置する石狩平野の名物(らしい)、鮭をふんだんに使った駅弁だ。右下の窓からチラッと覗く鮭といくらが、僕を手招きしているようだ。
それでは、いざ石狩湾へダイビンーーグ!
お綺麗〜〜〜!!
もちもちのお米の上に卵というシーツを被せ、鮭フレークが寝ていますわ!上に乗っているいくらちゃんたちは無造作ながら美しさを感じさせますわ〜!
漬物は嫌いなのでいらないですわ〜〜!
美味しかったので思わずお嬢様になってしまった。鮭の味がしっかりしたフレークと、プチプチ食感かつ漬けだれの味付けがちょうど良いいくらが結婚している。なにより、ご当地グルメの駅弁を車窓を見ながら食べるというのが最高なのだ。いつのまにか列車は苫小牧市に差し掛かっている。苫小牧といえば僕が5日前に北海道に上陸した場所である(#3参照)。遂に北海道を一周してここまで来てしまった。列車は苫小牧駅に停車し、またすぐに出発した。苫小牧の市街地が果てるあたりから、左の車窓に時たま海が見えるようになる。曇ってはいるが、我らが故郷の海、太平洋である。釧路で太平洋に別れを告げて以来、オホーツク海、日本海と旅してきて久々の太平洋である。ーPacific Oceanー 世界最大の大洋は、その大きな懐に青々と水を湛えている。右には支笏湖を懐に抱える樽前山と、その長い裾野。二つの雄大な自然に挟まれた平地に敷かれたまっすぐな線路を、列車はスピードを出して駆け抜ける。
白老、登別、幌別と駅を落とし、列車は室蘭市内へ入ってゆく。東室蘭で分岐し、絵鞆半島へ。急峻な地形に敷かれた曲がりくねった線路をゆっくり走り、13時過ぎ、列車は室蘭駅に到着した。
しかし室蘭駅に滞在する時間はそれほどない。駅前を少し見て回る。札幌からもかなり南に来た。やはり目で見てわかるほど街並みが「本州らしい」のである。それは室蘭の歴史も関係しているのだろうか。
室蘭駅から普通列車に乗り、来た道を戻る。東室蘭駅で進行方向逆向きの普通に乗り、西を目指す。室蘭駅の位置する絵鞆半島は、内浦湾、別名噴火湾を太平洋から分けている。日本製鉄の製鉄所の横を走り、車窓に美しい白鳥大橋を望む。黄金駅という縁起の良すぎる駅からは海が見えるようになる。内浦湾だ。
少し走り、列車は北舟岡駅に停まる。伊達市の市街地のはずれの、小さな駅。Googleマップを見ると、駅が海のすぐそばに位置している。そのため何の気無しに降りてみたのだが、思い描いていたとおりの絶景だ。
天気は晴れではないが、遠くに有珠山が薄く見える。さて、時刻は14時半。呆れたことに、普通列車しか停まらないこの北舟岡駅では次の電車は2時間以上待たなければならないため、隣の特急が停まる伊達紋別駅へ3.3km、40分の徒歩移動が始まってしまった。行き当たりばったりで列車を降りたりするからこのざまである。伊達市街地の道道779号線沿いをひたすら歩いていく。函館に早く着きたい僕は、30分後に発車する特急を目指して早歩きである。そしてもはや伊達紋別駅に近づく頃には特急の時刻も迫り、重い荷物を背負ってサハラマラソンのようになっていた。ようやく伊達駅に着き、「函館」の文字を掲げた特急に乗り込む頃には体力は尽きていた。
15時10分、特急北斗は伊達紋別駅を後にした。秘境の中をトンネルで抜けて、長万部で函館本線に合流する。さっきまで晴れと曇りの中間くらいであった空模様も、いつの間にかひどい雨である。荒れる内浦湾を左手に見ながら、八雲、森と渡島半島南端部の街に停まる。国定公園・大沼の眺めも大雨の中ではまた違って見える。列車は峠を越え、いよいよ函館市街地。新幹線との乗り換え駅、新函館北斗に停まり、次の駅はいよいよ函館である。
車内に「次は函館、終点です」の声が響く。僕の北海道旅行の最終目的地であり、最後に降りる駅、函館駅だ。
苫小牧から距離にして約4500km、地球一周の10分の一と聞くと少ししょぼいが、アメリカを東海岸から西海岸まで横断してしまうほどの距離を、北海道を旅してきた。そんな僕の史上最長の旅行の終着駅、函館駅に、列車は滑り込む。行き止まりの線路と車止めは、まさに終着駅にふさわしい旅情を醸している。そんな函館駅の改札を出る。同時に、今まで一緒に旅してきた「彼女」であるhokkaido love六日間周遊パスもここで役目は終了である。12000円で約4000km、普通に支払うと運賃だけで7万円を越える距離をこの切符を使って移動した。お得すぎるが故に生まれる罪悪感に耐えられる人は、是非この切符で北海道を旅行し、北海道の車窓、絶景、そして達成感を味わって欲しい。
函館
函館はすごい雨だ。ほんとうは駅から路面電車に乗りミスタードーナツへ行く予定であったがやむなくキャンセルだ。(函館のミスドは何故か鬼安く、一つ80円ほどである。)まぁ、函館には何度か来ていて、粗方の観光地には行ったことがあるので今日はホテルでゆっくり休むことにする。朝市の横のビジネスホテルにチェックインし、荷物を整理する。机に向かって今回の旅行で使った総費用を数えて青くなっていたら、スマホから大雨警報が鳴っていた。これはまずい。まだ夕飯を買っていないので買い出しに行かなければならない。それよりまずいのは、もし明日乗る予定の青森行きのフェリーが欠航した場合である。しかしそんなことを考えても仕方ない。どうやら湯の川温泉や函館空港がある辺りはすでに道路の冠水が始まっているらしい。時間辺り51mmの豪雨の中、空気の読めない僕の腹は否応無く減っていく。
幸い、ホテルの目の前、道路の反対側に函館名物のラッキーピエロというハンバーガー屋さんがあった。道路を渡るだけなのにずぶ濡れになり、タオルで髪と体を拭いて店内に入る。店内は僕とおなじ状況であろう観光客で混み合っていたため、テイクアウトをお願いしてホテルの部屋で食べることにした。
店の一番人気・チャイニーズチキンバーガーに加えチーズバーガー、なぜか紙コップに入れられたポテトと、こちらも函館名物、ハンバーガーのお供にピッタリのラッキーガラナという炭酸飲料を買った。冷めないうちに爆速でシャワーを浴び、いざ実食である。
美味ですわ〜〜!チャイニーズチキンは甘辛の味わい柔らかチキンがパンによく合いますわ!チーズバーガーは肉厚のパティに加えチーズの味と食感がしっかりして最高ですわ〜!風呂上がりの体にラッキーガラナの少しエナドリ風味ながらコーラのような深みもある味が沁みますわ〜!ポテトは運び方のせいで雨に濡れてふやけてますわ〜〜!
美味しかったので思わずお嬢様になってしまった。満腹になった僕はしばらく天気予報と睨めっこしたあと、どうやらフェリーが予定通り運行するらしいことを知り、安心して寝てしまった。札幌ではカプセルホテルだったため、久しぶりのまともなベッドである。北海道最後の夜は、大粒の雨音のせいか、それとも名残惜しさのせいか、なかなか寝付けなかった。
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