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【ネタバレなし】この時代の「今」見てほしい。シン・ウルトラマン感想

始めに

シン・エヴァンゲリオンへの溢れ出す感情からだいぶ気持ち悪い感想を書き綴ったあと、これからも映画の感想は書こうかなとか思うだけはしていたものの、気づけば1年以上経っていました。まあたくさんの人に見てほしいという目的ではなくネットの海に手紙の入った瓶ぶん投げてたまたまた拾った誰かに刺さって共感してくれる人がいればいいかなくらいのものなので、書きたいときに書けると思ったら書けばいいかなくらいにしておけばいいものかなとは考えています。そしてついに書きたいときに書けると思った作品がシン・ウルトラマンとなっただけ、ただそれだけの話です。ウルトラマンと庵野秀明氏が好きなだけとも言う。

前書いた感想は思いっきりネタバレしていましたが今回は観に行ってみようかなと思ってる人が読んでも大丈夫な内容の範囲で感想を書くというチャレンジをしてみます。感想ってここシーンのこの部分がよかった!っていうところを多分に含む性質があるのにそれ縛りの感想って成立するのか?って思うのですがやってみます。フラットな状態でみたいって方はもう何も見ずに劇場行くのが最善策です。私はそうしました。予告は見ましたけどね。つまりそういう人は回れ右するんだ!

シン・ウルトラマンの姿について

さてまずこの作品の見るうえで共有しておきたい基礎知識について。
シン・ウルトラマンのビジュアルを見たときに違和感を感じた方が大半かと思います。何故カラータイマーがないのか、ウルトラマンと言えばカラータイマーじゃないのかと。これは決して奇をてらう為のデザイン変更というわけではありません。実はウルトラマンのデザインの産みの親である成田亨氏がデザインしたウルトラマンにはカラータイマーはありませんでした。ではなぜカラータイマーが生まれたかというと、弱点表現としてだったり特撮シーンの時間制限の為だったりといったように諸説あるようなのですが、何にせよ現場の判断で取り付けられたものであり、デザイナーの成田亨氏が意図したものではなかったのでした。そして成田亨氏はこのカラータイマーの存在を嫌っていました。つまりシン・ウルトラマンのデザインは本来のデザインの再現を目指した姿でありまさに「シン(真)・」ウルトラマンであると言えるのです。私は2012年に開催された企画展「特撮博物館」で成田亨氏の描いた『真実と正義と美の化身』を見ていてこの時にカラータイマーのないウルトラマンの存在を知り、同時にこのエピソードを知った経緯があったのでシン・ウルトラマンのビジュアルが発表されたときに心が震えたことを覚えています。「シン」という名を冠する題材としてこれ以上説得力のあるものはないと思いました。そして製作陣の『真実と正義と美の化身』を映像化することへの強い覚悟を感じました。思えば特撮博物館にあの絵が飾られることが決まった時からこの作品への道筋が生まれていたのかもしれません。
このあたりのことは公式サイトに庵野秀明氏と成田浬氏のコメントがありますので是非読んでいただければと思います。

シン・ゴジラとのアプローチの違い

やはり「シン・」と名を冠している、しかも製作陣が同じということでシン・ゴジラの存在を無視することはできないかなと思います。
ずばり、今の時代に合わせて初代ゴジラを「リビルド」したのがシン・ゴジラに対して、今の時代に合わせて初代ウルトラマンを「リメイク」したのがシン・ウルトラマンだな、と感じました。自分で書いててリビルドとリメイクってどう違うんだって思うのですがリビルドは再構築、リメイクは作り直すという意味なんですねえ。この微妙なニュアンス、私が同じ表現にしないというニュアンス伝わってくれ!
シン・ゴジラ、というか初代ゴジラもなのですが巨大不明生物ないし怪獣が街で暴れまわることが本質ではなく、世相を描く化身であることが本質なのだと私は捉えています。つまり背ビレが光って放射火炎を吐く巨大生物である必要はないのです。あくまで描きたいテーマを表現するための、周知するための装置としての存在がゴジラということではないかと。なのでリメイクよりリビルドのがしっくりくる言葉だなということです。実際シン・ゴジラのヒット以降の東宝のゴジラの扱いについてはかなり幅の利いたものになってる印象を受けます。
一方シン・ウルトラマンをリメイクと表現したのにも理由があります。是非予告をみて頂きたいのですがその中で分かっている範囲でガボラ、ネロンガ、ザラブ、メフィラスと初代ウルトラマンに登場する怪獣(禍威獣)や星人(外星人)が出てきています。そして、これらの怪獣や星人も当時の技術では再現が難しかった成田亨氏のデザインを志向しておりまさにリメイクと呼ぶに相応しいものになっています。何がすごいってこれらの怪獣、星人って50年以上前のデザインなんですけど古さを感じないことなんですよ。生前の成田亨氏は「本物は残る、本物であれ」と仰っていたらしいですがその言葉を信じざるを得ないくらいにスクリーンに映るウルトラマンや怪獣、星人の姿は美しいです。内容についてもこれらの怪獣の組み合わせを劇場用映画としてどう見せているのか、原作を知っている人はその違いを楽しんでほしいですしそうでない人にも納得のいく構成になっていると思います。ウルトラマンという名前を冠してさえいれば怪獣は映画オリジナルでもよかったかもしれませんが初代の作品に出てきていた怪獣や星人から選ぶということは作り手側の思い入れというのもあったのじゃないかなという事は容易に想像できます。樋口真嗣監督も脚本の庵野秀明氏もウルトラマン好きという事は公言されるようなものですしね。これをリメイクと言わずして何をリメイクと言えるのか。素晴らしいリメイクでした、ええ。

何故この時代の「今」見てほしいのか

さてさて基礎情報だったりゴジラとの比較だったりと実はあんまり感想らしいこと書いてない感想文になってしまっているのですがこの記事のタイトルにしてる「今」というキーワードについて語っていきます。
去る5月2日の完成報告会見の時に神永神二を演じる斎藤工があるコメントを残しました。以下少し引用。

庵野さんや多くの皆さんの思いを届けるため、これだけの時間が必要だったと思うし、去年でも来年でもなく、今公開されることが必然だと突きつけられた

「シン・ウルトラマン」ついに完成! 斎藤工「今公開されることが必然」と力強く宣言
https://eiga.com/news/20220502/11/

去年でも来年でもなく「今」なんですよね。私は映画鑑賞中に確かにこれは今かもしれないと頭の中で唸っていました。斎藤工が何故今が必然と言ったのか、今の何を見て感じてそう言ったのかはわかりませんが少なくとも私は今みたことによってすごく刺さるものがありました。この「今」がいつ過去になるのかはわかりませんがここは私ではなく是非斎藤工の言葉を信じてほしいなと思います。この言葉の意味は是非劇場でみてそれぞれで感じてほしいです。私は刺さった(2回目)

最後に

ネタバレなし感想に挑戦してみましたがいかがでしたでしょうか。書いてみて思ったのですがだいぶ無理がありました。まあ要するになるべくネタバレのない状態で楽しんでほしいなあっていうのが正直な所です。
映画全体のテンポもよくできていて演者の皆さんがしっかり味を出しているので見やすい作品になっていると思います。具体的に誰々の何々がよかったとか書きたい気持ちでいっぱいですが我慢します。
結構懸念点になる所なのに説明してない点、ウルトラマン知らない人でも見られる内容になっているかどうかなんですが答えはYES、見ることは出来ると思います。誰だって初めてというものはあります今回のシン・ウルトラマンがたまたま初めてだったかどうかにしか過ぎません、むしろウルトラマンを初めて見たときの体験が味わえるってよくないですか?しかもそれが当時は色んな制約で実現できなかったものを実現した状態でみられるわけですから見るっきゃないでしょ!
と、最後かなり無理やり締めましたが次は2回目見た後でネタバレ有の感想書けたらいいかなあって。

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