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保育現場のコミュニケーションを考える

人に関わる保育の仕事は「これをすれば全てよし」ということがなく、目の前の子どもや保護者・保育者などの「ひと」とその時の状況を把握しながら、手立てを考えていく仕事です。それも一人で考えるのではなくチームで。
しかし今、保育の現場ではコミュニケーションが不足していると言われています。
保育士の離職理由の上位には「人間関係」が必ず入り、現場側もコミュニケーションが必要とわかっていながらも、実際は子どもたちの気配りや目配りが必要な業務の中で十分にできない状況があります。
また理想を語っても、うまくコミュニケーションが取れない状況とのギャップを感じ、虚しい気持ちにさえなるのではないでしょうか。
誰もがその大切さを知っているのに、現実は努力が必要とされる保育の現場。
保育現場でのコミュニケーションについて考えてみました。

本当はコミュニケーションの達人

「コミュニケーションとは、社会生活を営む人間の間で行われる知覚や感情、思考の伝達」(Wikipediaより)
乳幼児を含む児童に関わる仕事では、まだ言葉で伝えきることが難しい子どもに関わりながら、気持ちをくんでやりとりしています。
泣いている子どもに寄り添いながらスキンシップをとったり、気持ちを代弁したりして心を通わせることは、保育士の日常の中に多くみられる状況です。
これはまさに、子どもとのコミュニケーション。
また保護者や地域の方とのコミュニケーションも、割と積極的に楽しめる方が多いのではないでしょうか。保育士はどちらかといえば、コミュニケーションの達人が多いと思います。
しかし一方で、職場の人たちとのコミュニケーションは不足し、人間関係が離職につながる原因にもなっているのです。
そこに、私は同じ職種が多い職場の難しさがあると考えています。

言わなくても、わかるという思い込み

先ほどのWikipediaから引用させていただくと、「知覚や感情、思考の伝達」とあります。この「思考の伝達」がなかなか難しい、いや難しかった、私・・・と振り返ってみて実感しています。
考えや思いを巡らせ、結論を導き出す「思考」。
忙しい仕事だから、ゆっくりと話す時間がないから、とコミュニケーションが不足する理由づけはいくらでもできますが、察したり寄り添ったりが得意な人たちは、たとえ時間が短くても量より質のやり取りができるはず。
それができないのは、同じ職種ばかりでチームを組み仕事をしている中で、「伝えなくても、わかってくれる」「同じ方向を見ている」という思い込みが前提としてあるのではないかと思っています。
同じ職種であっても、保育をしてきた環境や経験や年数など、その人の価値を創り出している背景は様々なのに、なぜか同じ方向を向いていると考えがちなのです。
考えや思いは人それぞれ違うはず。
そしてその結論を導き出すプロセスも、それぞれ違うはず。
子どもや保護者に対して大切にしている「違い」「個性」を、もっと職場のチームワークにも活かしてほしい、そんな願いを持っています。

「自分と人の違いを知る対話の場」が必要

先ほども触れましたが、保育士は子どもたちの表情や声や仕草などから、気持ちをくみ取る達人です。
言語化しにくいことを感じる能力が高いと思っています。
高いが故に、そして細やかなところまで察することが得意という要素もあり、胸の中には様々なモヤモヤが生まれやすくなっているのではないかと思うのです。
思ったことをすぐに伝えられる状況なら少しのモヤモヤは解消できますが、なかなか自分の考えや思いを巡らせ、結論を導き出して相手に伝える時間もゆとりもないのが保育の現場。
初めは小さな分かり合えなさでも、それが積み重なっていくと大きな問題につながっていくため、いい関係性がある時から「対話の場」を職員間で経験しておくことが必要です。
スキルアップをするための保育の研修はとても多いのですが、改めて自分や仲間を考える時間を持つことも、スキルアップをしていく土台となり大切な学びではないでしょうか。
コミュニケーションは、話せばいいってものではないのです。
園やクラスなどチームの中で、自分や人の思考や視点に気づき「違い」を知ること、そしてそれが自分とは違っていてもその人の正論なのだ(自分と同じようにに)ということを知るところからコミュニケーションを始めると、コミュニケーションの質が上がってきます。
年度の中盤に入り、子どもの成長とともに保育も楽しくなってくる時期。
保育現場の皆さんを、応援しています!


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