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お天気病の憂鬱

 私は俗に言う「お天気病」だ。正しくは「気象病」、それに伴う痛みを「天気痛」と呼ぶらしい。
 

 最近ではよく取り上げられるようになったので、誰かに話しても、まあまあ話が通じる。ちょっと前だと「私、お天気病でね」と言うと、「お天気屋」や「脳天気」といったことばと取り違えてしまう人がたまにいて、「え、そんなことないでしょ」と返答されて困った。

 人によって症状は様々。天候や気圧が変化する時に、古傷の痛み、頭痛、めまい、吐き気を始めとする不快な症状が訪れる。程度も人それぞれだ。私のように普段の生活にギリギリ支障はないという人から、雨雲が、はるか彼方、東シナ海あたりににある頃から(かどうかはわからないが)、「ピッキーン」と頭痛の第一波を感知してしまうスーパーセンシティブな人までいる。私の「テンキビョー友」も、去年の台風が太平洋に発生して接近するまでの五日間、ベッドから起き上がれなかったという。

 しかし心強いことには、近ごろはお天気病患者専用のアプリがある。気圧の上下が時系列にグラフになっていて、急降下する時間帯に警告の爆弾マークが表示されるものを「愛用」している。しかしこの爆弾マークがくせもので、これを見てしまうともういけない。ばくばく心拍数があがり、身体がこわばりはじめる。頭のてっぺんがつっぱり、目がズーんと重くなる。そして耳鳴りがしたような気になる。アプリなんか見るからでしょう、と家人に注意されるが、怖いもの見たさでついついチェックしてしまう。敵なのか味方なのかわからなくなる。愛憎相半ばといったところか。

 このように私は、天候や気圧の変化に影響を受けながら日々暮らしている。なにせ相手が「気象」なのでやられっぱなしである。せいぜい①適度な運動をする②早めに寝る③耳たぶをぐるぐる回す、の三つ以外にすることを知らない。これでは、殺人鬼相手に、折り紙手裏剣で向かっているようなものだ。
 
 「変動に影響を受ける」ということで言えば、金利や為替や株価の動きを追う企業、投資家の方々は、毎日さぞ気が抜けないとは思うが、こちらも雨雲の動きに翻弄され、そこそこ大変なのである。

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