ENHYPENカムバックで考えたこと - アイドル産業、ファンビジネス
先日、エナプがミニアルバム"DARK BLOOD"を引っさげて10ヶ月ぶりにカムバックされました!おめでとうございます!
アミからKPOPファンへと変貌を遂げたわたしが思ったことを率直に綴らせていただこうと思います。
このカムバックには個人的にめちゃくちゃ期待していました。わたしにしては珍しくフィジカルのCDを予約したほど。理由はいくつかあって、まずここ数作のやんちゃテイストからデビュー曲のような高貴コンセプト回帰の雰囲気があったこと。(DARK MOONについて思うことはあるけど後述)エナプ制作陣が彼らでBlood, Sweat & Tearsのような世界観をやりたいんだろうなというのは感じていたので、成長著しい彼らが満を持しての作品になるのではと期待値があがりました。
また、コンセプトフォトが大優勝してる上に、トレーラーも(ストーリーはよくわからないものの)めちゃくちゃオシャレ!とてもワクワクさせてもらいました。
Bite Me 感想
これはわたし的、エナプあるあるなのですが「タイトル曲より収録曲の方が好き現象」がまたも起きたなというのが率直な感想でした。彼らの等身大を感じられる"Bills"が特にお気に入り。
タイトル曲"Bite Me"も良いのですが、ティザーに使われているのがサビだと思ってなかったー!サビ以外は抑制が効いているので、音源で聴いたときに新鮮味に欠けた気がします…ティザーにはサビ以外を使ってほしかったな。
また、わたし念願の、ニキくんセンターでがっつりダンスブレイクのあるタイトル曲という夢は今回も叶わず。次作こそ期待してもいいでしょうか…
そしてそして、今作の話題の的である女性ダンサーとのペアダンスについて。まず作品としてMVやショーケースを見たときの感想を。通常、サビはその作品の肝であるコレオをグループが一丸となって踊るというパターンが多いと思います。それを見慣れているせいか、サビが「7人一組」ではなく「二人組×7」という構成になっているのが少し見づらいなと感じました。サビになった途端に視線が落ち着かなくなるのはもったいない気がします。ラップパートとサビ以外のメロディ部分でペアダンス→サビは7人でまとまったダンスという構成の方が、見る側は盛り上がりどころで集中しやすいのではないかと思いました。
サビとラップで雰囲気ががらりと変わってメリハリがあるし、今っぽい抑えめな感じはよかったと思います。ニキくんが創ったラップの振付がまさにそれを象徴していて一見控えめに見えるのにめちゃくちゃ難しくてかっこいい!TikTokチャレンジが本当にチャレンジになりそう。とりあえずわたしは100%踊れません笑。
アイドルの恐怖
今回のカムバに際してメンバーが発したコメントや兵役を前にしたバンタンの発言からも伝わるとおり、アイドルはわたしたちが想像する以上に空白期間を作ること、それによりファンが離れていくことを恐れているんだなと改めて感じました。
ファンからすれば、エナプもバンタンもスキズもZB1も選び放題。他方、アイドルは、いつ消えてしまうかわからない名前も知らない人々の愛情、「自分を応援してくれる人という概念」を拠りどころにしなければならないというのは心許なく、砂の上の城にいるような気分なのかもしれません。
数年アルバムを出さないアーティストなんてたくさんいるし、それを思えば10ヶ月なんてあっという間なのではと思うけど、それほどにアイドル産業というのはサイクルの早い世界。HYBEからも後輩ナムグル2組デビュー、&TEAMも韓国活動、大注目のZB1などなど新人がわんさか出てきています。
そんなKPOPアイドル戦国時代において、話題性・差別化・カンフル剤として投入されたのが「異性ダンサーとペアで踊る」という今回のBite Meのパフォーマンスだったのだろうと思います。(芸術性うんぬんというのはまぁ建前でしょう笑)しかし、近年の多くのナムグルが積極採用してこなかったこの演出は、それだけリスクがあるということ。この件か定かでないけれど、エナプのメンバーたちも心配があると語っていました。制作陣はだいぶ思いきった賭けに出たのではないでしょうか。
音楽ビジネスとファンビジネス
その「思いきった賭け」に勝てるのかどうか。
まず、目先の短期的なことでいうと、個人的にはなかなか厳しかったのかなと思います。ノイズマーケや味変に適した時期だったとは、今のところ思えません。(もちろん、これから成績が爆伸びする可能性もあります!)
久しぶりのカムバック、強者ぞろいの第4世代トップ争いに名乗りをあげるとき。既存ファンには一丸となって音盤の購入、MV視聴、ストリーミング再生や投票を頑張ってもらいたいタイミングだったはず。さらにエナプは本国&中華ファン獲得を重要課題としていますよね。
しかし、カムバ前の期待に満ちた空気感から一転して、パフォーマンスを見たファンダムが動揺したのは明らかでした。(わたしもジミンソロのダンプラで死んだので気持ちは痛いほどわかります笑)現在も本国ファンの一部が抗議声明を出したり、それに対抗した別のファンたちが応援トラックを出したりという事態になっているそう。エナプのCD、音源に注がれたかもしれないお金や労力がとっ散らかってしまいました。パフォーマンスに肯定的な人も含めて応援に集中しづらい状況にしてしまったと思います。
顧客に気持ちよく買い物をしてもらう導線を整えることはビジネスの基本。お金や労力は前向きな感情を伴ったときにこそ、もっとも勢いよく動くもの。カムバを盛り上げよう、良い作品にふさわしい結果を出そうとする既存ファンのエネルギーにノイズをかけて意識を分散させた感は否めません。(その分、新規の目に留まるといいのですが)(わたしもこうして話題にしてますし笑)
しかし、短期的に損をすることは、織り込み済みなのでしょう。
BELIFT LAB、そしてHYBEが長期的に実現したいのは疑似恋愛アイドルでCDを売るという音楽ビジネスを変えていくことなのかな、と思います。
現在の音楽業界は、消費者の楽しみ方はストリーミングが主流になっているにもかかわらずCDでないと売上が上がらないという歪な収益構造になっています。そのせいで、ファンたちが競ってCDを買う上にグッズなどでも収益をあげられるアイドル音楽が盛んになっているのは皆さまご存知の通り。しかし、一部のファンが過激化したり、アイドルが人間らしい生活を送れず疲弊したりという問題も多いやり方です。
HYBE傘下のレーベルは、アイドルの尊厳を切り売りせずに音楽を楽しんでもらい収益もあげられる未来を見据えているのではないかと思うのです。
ウェブトゥーン連動もその一手。DARK MOON×ENHYPENが大成功しているとは思いませんが(内容的に表現の幅が狭すぎるから。タイトル曲でいっつも運命だ血だと悲壮感を漂わせてよくわからない抽象的な歌を歌うはめになるので。)仕掛けたいことは何となくわかるつもりです。
今回の女性ダンサーパフォーマンスも、疑似恋愛アイドルではなくプロのエンターテイナーであることを全面に出すという挑戦であり、単なるノイズマーケ・炎上商法ではないかもしれないというわたしの希望的観測です。Bite Meをきっかけに、男女ペアで踊るという演出がKPOP界全体で増え、当たり前になっていくかもしれません。エナプが常識を変えたエポックメイカーになれるのなら、短期的には数字に繋がらなくてもいいという決断をしたのかも。
しかし、ファンビジネスというのは人間の欲望の渦。光と影は表裏一体で切っても切り離せないもの。
女性だけの宝塚歌劇団でも、男役トップスターの相手となる娘役さんは男役ファンから叩かれやすかったりします。男役ファンの女性は、男役さんと恋愛関係を望むリアコが多いわけではありません。リアコがどうこうという問題ではなく、ファン心理とは少なからずそういうものなのではないでしょうか。
スターと自分との安心して夢に浸れる関係を崩されること、現実を突きつけられることはストレスであり目障りになってしまう。ディズニーランド内からハローワークの看板が見えたら萎えるようなもので。アイドルがサイン会やヨントンをやめて恋愛関係をオープンにしたとしても、ファン心理は消えてなくなるものではないと思いますし、むしろ夢を見られない・欲望を掻き立てられない対象ならお金=エネルギーをつぎ込むこともないのだと思います。
そんなファン心理とどう折り合いをつけ、どう利用し合っていこうとしているのか、わたしには想像もつきません。
音楽を聴いて楽しむものから目で見て楽しむものへ、そして音楽だけでなく人としての魅力でファンと強固に結びつくという進化を遂げてきたKPOP。これからも目が離せないなと思いました!
今後のENHYPENで見たいもの
そしてENHYPENの今後をとても楽しみにしています。パートチェンジしたら作品が成り立たなくなるくらい、メンバーの強み・個性を表現したタイトル曲がほしい!「⚪︎⚪︎といえばこのメンバー!」というのが、ファンのみぞ知るのではなく作品でももっと表現されるべきだし、それこそグループで音楽をする醍醐味だと思います。変化球もいいけど直球で勝負するところが見たいです。
好き勝手に書いてしまってファンの皆さんを傷つけてしまったらすみません。率直な感想、そして応援の気持ちを表現したくなりました。それだけエナプに魅了されているということです。これからも注目していきます!
今回のアルバムでいちばん好きなBills!ヒスンの歌い出しが優勝してる。
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