HYBEのゆくえ
連日の騒動で、わたしはHYBEという企業、そしてパン・シヒョクという稀代の名プロデューサーに対して、悲しいことに疑念を深めました。
そして「企業が提供する誰か」を推すこと、応援することについて改めて考える機会になりました。
裁判も始まっておらず、何が本当で何が嘘かはわからない状態です。不安を感じる人、傷ついた人もたくさんいらっしゃると思います。この状況で何かを発信するべきではないかもしれないとも思いましたが、心が揺らいだわたし自身のためにも、現時点で考えたことを整理しておきたいと思います。
アイドル、所属事務所、ファン
前提として、アイドルやアーティストと所属事務所は切り離して考える方が健全です。そうでなければ、人気者を擁している事務所はどんな悪事を働こうと、消費者たるファンに庇われ許されてしまうからです。
日本でも某事務所に対して告発があったとき、多くの一般大衆は加害者とされる故人、そして故人の横暴を許してきた事務所、メディアを非難しました。それでもファンを中心に、一部の方々は故人や現状を肯定する意見もありました。
それは自分が推してきた、大切にしてきたものを守りたい、現状維持したいという心理で、理解はできます。しかし、わたしは賛同できない考えです。わたしは罪は償われ、反省のもとに人々の意識もシステムも改革するべきだと思います。それに伴う変化は、長い目で見れば喜ばしいものです。現にテレビ番組の出演者やタレントさんの所属先にも変化が生じ、選択肢は広がり、健全な競争や新たな協業が少しずつ生まれてきていると思います。
HYBEに対する疑念
HYBEは某事務所と違って上場企業であり、より公の存在で、透明性が高いはずだ。わたしにもそういう印象がありました。だからこそ、HYBEを信じているファンの方も多いと思います。
何よりARMYとして、メンバーと共にBTSを生み育てたパン・シヒョクさんを尊敬していました。
しかし、今回のHYBEのあまりに合理性を欠いた不可解な動きに、とにかく奴らの言葉ではなく行動を注視しよう(警戒モード)と思うに至りました。
不可解その1: 告発のタイミング
今回の騒動の発端は、4月22日HYBEがミン・ヒジンさんに対する背任容疑で監査を入れたことです。それは、彼女が手がけるNewJeansの新曲MV公開を目前に控えたタイミングでした。
一般的な企業で考えてみて、自社の新商品の発売目前に、あえてその新商品に関わるネガティブなニュースを流し、株主総会の召集を要請したりするでしょうか?そんなタイミングで騒動になれば、ミン・ヒジンさんがすんなり罪を認めて辞任したとしてもNewJeansは無傷ではいられません。
HYBEが本気でNewJeansが被るダメージを最小限にし、ミン・ヒジンさんら経営陣のみを切りたければ、カムバ時期を避け監査終了・処分決定の報告まで内々に進めることもできたはず。ADOR側が何を企てようとHYBEの方が圧倒的に立場が強いのは明白ですし。
この誰もが感じたであろう疑問について、HYBEの反論は以下の通りです。
この文章で示されている内容だけではメール以上の具体的な行動はわからず、一刻を争う危機が迫っていたようには思えませんが、HYBEの主張の詳細は裁判を待つしかありません。
不可解その2: カムバ日を被せる
兵役中のRMの新曲リリース。ARMYにとって嬉しいニュースでしたが、そのリリース日はNewJeansと同日でした。
これを「偶然」とするのは無理があると思います。
話題が分散するのを避けるため、数字が食い合うのを避けるため(時間は有限で平等なのでMV再生、音源再生はどうしても食い合います)HYBE内で極力、カムバ日が被らないよう工夫するのは当然です。
ナムさんは兵役中であり、カムバ活動はありません。活動スケジュールの都合上、どうしてもその日にせざるを得なかったわけでもないでしょう。(今後「これがあったからどうしても日にちをズラせなかったのね!」と納得できる何かが出てくれば嬉しいですが…)
ミン・ヒジンさんを告発したのはHYBEであり、その日付もナムさんのカムバ日も、すべてはHYBEのコントロール下にあったものです。
25日 「ミン・ヒジンさんがBTSについてこんな風に言っていた」という情報を流し、ARMYの反感を買ったところで
26日 RMのカムバ発表
正直、気味が悪いと思いました。
この発表を知ってから、わたしは無条件にHYBEを信じることができなくなりました。音楽で人を幸せにしたい人が選ぶ日付ではないと思うから。
この騒動がなかったとしても、BTSとNewJeansのカムバを被せるだなんてHYBEの正気を疑います。こんな状況であればなおさら、2組のファンにいらぬ競争心や敵対心を植え付けるやり方に怒りすら覚えます。
HYBEの行動は上場企業として合理性に欠けている上、NewJeansのこともBTSのことも、大切にしていないと感じました。完全にゲームの切り札として扱っています。RMの作品を、NewJeansの作品を、純粋に楽しむ機会を奪ったのは他でもないHYBEです。こんなこと、アーティストは望んだでしょうか。
不可解その3: ILLITのコンセプト
ミン・ヒジンさんの反論により、NewJeansとILLITの類似性に注目が集まりました。
NewJeansが大ヒットしてから「ニュジっぽい」はあらゆる場面で囁かれる言葉です。ILLITがデビューしたときも「ニュジっぽい」は聞かれましたが、それがあまりにもありふれた現象だったため、深刻に取り上げる人はさほどいなかったように感じます。しかし、ミン・ヒジンさんの指摘を受けて、個人的になるほどと思ったことがありました。
「パン・シヒョクさんはどういうコンセプトでILLITを作ったのだろうか」
デビュー前の記事
(オーディションのプロフィール素材はニュジっぽかったけどグループ名はIVEを意識しているのかな?と思ってました笑)
実際の写真やらMVやらが似てる/似てないは主観もあるし、ひとつひとつに言及する意味はないと思います。わたしが重要だと感じるのはプロデューサーとしてのパンさんの意識です。
パンさんはILLITについて、既存グループに「近づけること」と「違いを見せること」果たしてどちらに重点を置いて、ビジュアルディレクターを選定し、コレオグラファーに依頼し、プロモーションを企画したのでしょうか。
ほんの少しエンタメ業界を齧った身ですが「〇〇みたいな感じで」というリファレンス元を提示した発注はたくさんあります。流行を取り入れること、良い部分を参考にすること、それ自体は悪いものではありません。
しかし妹グループと銘打ってるわけでもない、同HYBE傘下・同世代のアイドルコンセプトは、はっきりと差別化されるべきだと思います。なぜなら、似たコンセプトを出す=コモディティ化は、ファンを食い合うことになるし、コンセプトそのものが量産=陳腐化してブランド力が低下するからです。それを身内でやるのは解せません。これはミン・ヒジンさんが会見で言及していた通りです。明るく元気なAKBの公式ライバルは、上品で清楚な坂道グループ。そういうものですよね?似たグループを出したところで競争力が高まらないのは素人でもわかること。
そして、それをあのパン・シヒョクがわかっていないはずはないのです。
それにも関わらず、似てる/似てないが議論されるレベルの類似コンセプトを、似てる/似てないが議論されるレベルの類似プロモーションで世に出した。差別化を図るよりも、類似性に重きを置いて売り出した。それがとても不可解だと感じました。(過去にBIGBANGやSHINeeのエッセンスをBTSに取り込んだ感覚と同じようにやっていたのかもしれませんが…それならそれでどうかと思うけど)
ミン・ヒジンさんを辞任させた後のNewJeansは、誰に、どのようにプロデュースさせるつもりなのでしょうか。NewJeansとILLITは今後、どのように差別化を図っていくのでしょうか。
そもそもNewJeansとILLITを両立させる気はあるのでしょうか。
不可解な行動が示すもの
上記の不可解な行動から、HYBEはADOR経営陣の排斥にとどまらず「NewJeans」も守る気がないのではないかと疑念を抱きました。むしろ全力で窮地に追い込んでいるようにも見えます。
BTS不在の中、HYBEを支える大人気グループを排除するわけない。誰もがそう思います。わたしも思っていました。そうであって欲しいです。書いている今も信じ難いし、絶対に起きてほしくないただの邪推です。
今回の騒動が、誰のどういった動機をもとに始まったのかはわかりません。シンプルに本当に背任行為があったのかもしれないし。まさか個人的な確執とは考えたくないですが…HYBEの現状が、誰かのワンマンで周りにはイエスマンしかいない、そんな体制でないことを願っています。
HYBEに望むこと
一ファンとして、HYBEには「人」を大切にしてほしいと願っています。どうか企業規模に見合う、広い視野と高い視座で人と世界を見てください。
NewJeansの子たちもBTSメンバーも、他のアイドルも練習生も大切にしてください。
プロデューサー、作詞家・作曲家、コレオグラファーなどスタッフを大切にしてください。
身内のスタッフだけでなく、世のクリエイターとその作品を尊重してください。パクってなんぼ、よりも新しい解釈や新しい表現を生み出すことに意識を向けてください。
世界への影響力を自覚し、暴力被害を軽視しないでください。加害者側に利益を与えないでください。
素晴らしい音楽で世界に良い影響を与え続けてください。
わたしはBTSが好きでこれからもずっと応援しています。だからこそ彼らが所属するHYBEには多くを求めます。大企業には、個人では持つことのできない大きな影響力を世界を良くするために発揮してほしい。そんな企業を応援したいです。