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C4カクタスというクルマ

はじめに:走るコンセプトカー

C4 CACTUS(カクタス)との生活は6年目に入り、走行距離も50,000kmを超えた。
これまで、80年式のMercedes(W123)〜FIAT 500〜Alfa Romeo 156〜LUTECIA R.S.(しかもTrophy!)と乗り継いできたけど、今までで最も長く所有し、そして走った車がカクタスとなった。一貫性があるようで無い僕のクルマに対する嗜好はともかくとして、カクタスが僕や家族、そして生活にとてもフィットしているからこそ、他の車に乗り換えることなく年を重ねているのだと思う。

カクタスを初めて見たのは2013年のフランクフルトモーターショー(のニュース)。

Airbumpを携えて登場。
レスポンス

当時としては(今でも)かなり未来的なデザインで、特に衝撃吸収材のAirbumpが4面に装着されていることが衝撃的だった。ドアパンチ恐怖症の僕にとって「そう来たか!」と思わせるようなアプローチだった。

そして2014年のジュネーブモーターショーで発表された市販車を見て(これもニュース)ひっくり返りそうになった。

2014年に発表された市販車
レスポンス

コンセプトカーそのまんまじゃないか!
もともと素晴らしいデザインだと思っていたけれど、Airbumpをそのまま貼り付けて世に送り込んできたシトロエンの姿勢にも惚れ込んでしまった。


こちらはAutocar誌によるコメント。

フランスの自動車メーカーが好き勝手やるとこうなる

https://www.autocar.jp/post/547682/3#s7

だからと言って、アヴァンギャルド一辺倒なわけでもなく、実用性を伴った車なんだけど、なかなか世間には理解してもらえないようだ。

カクタスはその後のシトロエンの基本デザインになったわけだし、今のシトロエンの道を切り拓いた一台と言っても過言ではないと思う。


僕がカクタスを選んだ理由

当時、娘が3歳になり、いわゆるファミリーカー的な車を探していた。なんとなく当時の生活とルーテシアR.S.にギャップを感じ始めていたからだ。とはいえ他に候補となるような車もなかったけど、唯一思い浮かんだのがカクタスだった。

そもそもフランス車であることが前提だった。ルーテシアをはじめ、代車でメガーヌや308に乗って、その高速走行時の直進安定性や運転の快適さ(疲れないこと)は他の国の車には無い魅力だった。あくまでも個人的な好みだけど。

そしてサイズ。我が家が間借りする隣のマンションの機械式駐車場に入る大きさであることがまず第一。そうなるとメガーヌ、308あたりは消えてしまう。カングーやキャプチャーも背が高いから無理。そうなると、結局ルーテシアくらいの大きさの車を探すしかなかった。ルーテシアより少し背が高くて、居住性が高い車がカクタスだった。

条件ありきというよりは、乗りたいクルマありきだった、というのが事実かもしれないけど。

僕は9,000km程度の認定中古車を購入した。低走行車だったけど、バッテリーをはじめとした消耗品の類は納車整備時に全て新品に交換されていた。にも関わらず当時はコミコミで200万円を切ったくらいの価格。ルーテシアR.S.を下取りに出して、20万円くらい追い金を支払ったような気がする。

富津にて。この後、砂地にハマって冷や汗・・・。


走行性能

スペックや価格的な情報はこちらに記載されているので、所有者としての視点からカクタスのことを書いてみたいと思う。

1.2Lで自然吸気、82馬力と最低限のスペックだけど、シングルクラッチのETGとパドルシフトの組み合わせに慣れればキビキビ走ることができる。この「シングルクラッチのETG」(シングルクラッチAT)が文字通りクセモノで、これに慣れるどうか(気にするかどうか)がけっこう重要だと思う。

シングルクラッチについてもこちらに詳しく書いてあるので省略するけれど、自動的にシフトチェンジされるタイミングを察知してアクセルの強弱をつけたり、パドルシフトを操作しないと「カックン」と違和感のある変速が行われることになる。自分の意図しないタイミングでカックンされるのは気持ちが良いものではない。

僕はたまたまFIATでデュアロジック、アルファロメオでセレスピードと、同じシングルクラッチ式ATを経験していたので、むしろ以前よりも改善されたように思ったけど、このあたりは好みが分かれるところだと思う。

個人的にはパドルシフトを使ってダイレクト感のある加減速を楽しめるので、アリだと思っている。でも、普通はこういうミッションの車には「MT」モードが付いていて、勝手にシフトチェンジされないような設定にできるのだけど、カクタスにはそれが付いていない。

82馬力は決して十二分とは言えないけれど、まあ、やっていけるという感じ。首都高を頻繁に運転するけど、特に困ることはない。だけど、ショッピングセンターの駐車場の急な坂道で、特にエアコンを使う夏場は急な加減速は厳しい場合があり、カクタスも「もう勘弁しちくり」と言わんばかりにアクセルを踏めどもなかなか登ってくれない。

エンジンを高回転させた時の音は好きだ。自然吸気ならではの「回ってる」感じがする。だけどCGTVで松任谷さんは「軽自動車の咆哮」って言ってたような気がする(総じてカクタスをベタ褒めしていたけど)。

乗り心地

カクタス乗りの中でも評価が分かれるけれど、僕はとても「良い」と思っている。そもそも乗り心地の評価なんて主観的な気がするけど。
(余談だけど、乗り心地の官能評価に関する論文が興味深い)

CGTVで松任谷さんが「忍者の足」と言っていたけれど、まさにその通りだと僕は感じている。空気圧の変動による影響が大きいけど、適圧の時はまさに魔法の絨毯のよう。サスペンションもよく動く。ちなみに新車装着時のグッドイヤーのタイヤは少し硬かった。ミシュランのプライマシー3に換えてからの方が自分好みの柔らかい乗り心地になった。

だからタイヤを換えた人も知っているし、純正の16インチホイールから15インチに下げて乗り心地を担保した人もいる。

コーナーでは意外と粘りが効いて、首都高で少し速めにコーナーインしても、意外とスムースに曲がり切る感じがする。

抜群に素晴らしいのは直進安定性。年に何度か東京〜神戸間を走るけど、カクタスなら疲れ知らず。到着後すぐに遊びに行けるくらい。シートの座り心地が良いのもあるけど、ステアリングがどしっとしているというか、全く腕や方に余計な力が入らないので、真っ直ぐ走るのがとても楽に感じる。

デザイン:外装

Airbumpはデザインだけでなく、機能的。樹脂でできているので傷も付きづらいし、恐らくは多少のドアパンチを食らっても無傷で済むのではないか。その代わり、定期的にアーマオールとかシリコンスプレーを塗っておかないと雨ジミが取れなくなったり、白っぽくなってくるので手入れが必要。これは無塗装樹脂バンパーも同じ話で、意外と樹脂に油脂を塗る作業は時間と手間がかかる。見た目が気にならなければ放っておけば良いけれど。

ちなみに浮かんだようなルーフレールはカクタス以降かと思われる。
ホイールは同じデザインのものをC3でも流用されているけど、カクタスのデザインにもぴったり。まさにイジるところがないクルマだと思う。

リアクォーターはBXを彷彿させる(気がする)。

カクタスのサイズは、全長4,155 mm x 全幅 1,735 mm x 全高 1,530 mm。
ぱっと見、クロスオーバーSUVっぽく見えるので、そんなに小さく見えない。
室内も寸法以上に広く感じる。前席がベンチシート、助手席はエアバッグが頭上にある為に足元のスペースにゆとりがあるし、ホイールベースの割に前後座席の間隔が広いといった理由で、少し背が高いコンパクトハッチバック程度のサイズなのに居住性がとても高い。

だけど、実際は小さい。寸法よりも大きく見えるのはデザインの妙ではないか。

ちょっと作為的な比較。

デザイン:内装

ダッシュボード廻りはとにかく美しい、というかオシャレというべきか。
メーターはレトロフィーチャーなデジタル表示。とにかく情報量が少ない。
速度、ギア、距離、ガソリン、そして警告灯のみ。
タコメーターは付いていない。

液晶パネル一つでエアコン、オーディオ、車の設定など全てをコントロール。やっぱりエアコンは単独のスイッチがあった方が便利だと思う。デザイン、もしくはコストが優先された。

オーディオはBluetoothもしくはUSB経由で接続。
Bluetoothは10回に1回は接続できないけど気にしない。
ナビらしき機能もあるけど、日本では使えない。
CarplayやAndroid Autoも非対応!なんか使えそうな感じがするのに。
3rdパーティのパーツを使うとCarplayが使えるらしいけど、なんだかんだで今日までスマホのナビでやり過ごしている。

グローブボックスは旅行カバンのようなデザイン。物を乗せても滑らないようにゴム製の滑り止めがついている。せいぜいスマホあたりを想定していると思う。さすがにケーキを載せるとは思わないだろうけど、置きたくなってしまう。

ドアの取手も旅行カバンをモチーフに。

シートは前述の通り、とても座り心地が良い。柔らかくもなく、硬くもなくといった感じ。シートに使われているファブリックは、柔らかくて起毛感のある生地。余談だけど、こんなエピソードを思い出した。

「とりたてて多くの歴史が詰まっているわけではありませんが、典型的な落ち着きのあるブラックの塗装と淡黄褐色のインテリアを見れば、フランスの政府公用車であったことは間違いありません。そして彼らが好んだ布のシートもね。レザーでは会議へ向かう途中でズボンにテカリがでてしまいますから

https://octane.jp/articles/detail/2081/2/1/1
MoTa

あと、これは今時の車にしては珍しく?リアウインドウが開かない。正確に言うのであれば、少しだけ開く。ヒンジ式になっていて、数センチ程度、換気ができるくらいの隙間が開くようになっている。

維持費

僕のような使い方をしているならば、燃費は良くない。
東京の下町で、ストップ&ゴーを繰り返すような乗り方をしていると、夏は8km/Lくらい。冬は10km/Lいかないくらい。
高速に乗ると、アクセルの踏み方次第では16~18kmくらい。
”キビキビ”走っていると、15km/Lくらいだったと思う。
信号の少ない地域に住んでいると、それなりに燃費が伸びるようだ。

これまで車検は3回通しているけど、ディーラー、オートバックス、フランス車を得意とする下町の自動車工場(向島の方)にそれぞれ出している。

・ディーラー
 保証期間内だった最初の車検で利用した。素通しで13〜14万円くらい。

・オートバックス(A PIT東雲)
 素通しで9万円弱。

・下町の自動車工場
 フロントのブレーキパッドとローターを交換して13万円くらい。

ちなみにバッテリーはAmazonで買って持ち込むと、2万円+工賃で済む。
ディーラーで交換したら5〜6万円はかかるはず。

タイヤはタイヤフッド経由でA PITで交換するのが一番リーズナブルかつ楽だと思う。ECの格安店で購入して工場持ち込みが金額的には最も安いかもしれないけど。

エンジンオイルは5,000〜10,000kmの間で交換している。
10,000kmまで引っ張ってはいけないと思いつつ・・・。
以前はメーカー指定のTotalのオイルをネット通販で購入してA PITで持ち込みオイル交換をしていたけれど、最近は持ち込みのオイル交換工賃がかなり値上がりしたので(以前が安すぎた)、最近は不本意ながらA PITで推奨されたオイルを使っている。
フィルター交換と合わせて1万円ちょっと。

他にもワイパーをゴムだけ交換すると、左右で1万円くらいの節約になる。
カクタスのワイパーブレードはウォッシャータンクとつながる仕様なので、純正品を使わざるを得ないからだ。

こういった節約術はみんカラの諸先輩方の知見が大いに参考になる。


カクタスとの生活

カクタスが納車された翌年、2020年の春から長いコロナ禍が始まった。
せっかくカクタスが来たのに、外出や旅行もままならない。誰もいない大都会を家族3人で走り回った日々を思い出す。
外食できない代わりに前席のベンチシートで家族3人並んでお弁当をよく食べたものだった。だから今でもカクタスは自分にとってリビングの延長線のように感じる。自由に外出できない生活なんてまっぴらだけど、カクタスの中で過ごしたコロナ禍の日々は家族にとってかけがえのない思い出になった。

コロナ禍もひと段落すると、たくさんの出会いに恵まれた。
ルーテシア以降、フレンチフレンチやフレンチブルーミーティングなどのイベントを通じて多くの素晴らしい出会いがあったけれど、僕の場合はシトロエンに乗ってからというもの、さらにそれが増えて、それぞれがより濃厚になった。

忘れられない出会いがある。
あるイベントで僕のカクタスの前オーナーの方と出会うことができたのだ。それがきっかけとなり、シトロエンというブランドと僕ら家族との縁が深まることとなった。

僕の初めてのシトロエンはHバン。
子供の頃に気に入っていたミニカーだ。
それが原体験になって、今に至るのかもしれない。

カクタスが我が家にやって来た時に3歳だった娘は8歳になった。
彼女にとってカクタスとの日々はどんな思い出になるのだろう。





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