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[英詩]Bob Dylan, 'Scarlet Town' (2)

※ 旧「英詩が読めるようになるマガジン」(2016年3月1日—2022年11月30日)の記事の避難先マガジンです。リンク先は順次修正してゆきます。

英詩のマガジン の本配信、今月2本目です。歌われる詩の1回めです。今回は、ボブ・ディランのアルバム 'Tempest' (2012年、下) に収められた 'Scarlet Town' の続きです。長いので数回に分けています。前回は2連まででしたが、今回は4連までです。

Bob Dylan, Tempest' (2012)

バラッドの 'Barbara Allen' やマザーグースの 'Little Boy Blue' などにインスピレーションを受けた歌です。

カーウォウスキはディランの伝記的側面と本歌との関りを論じています。例えば、6連で言及される歌 'Walking the Floor over You' がディランの生まれた日の4日後に発売されたこと、米小説 𝑀𝑎𝑖𝑛 𝑆𝑡𝑟𝑒𝑒𝑡 に描かれる田舎町を想起させることなどを挙げます。

また、2連の 'Sweet William on his deathbed lay' とされる行が実際には違う言葉で唄われているように思われることも、伝記的側面と関係があるかもしれません。

参考文献 は、文字数の関係で別の note にあります。

リクスらの校訂本は Bob Dylan, 𝑇ℎ𝑒 𝐿𝑦𝑟𝑖𝑐𝑠, eds., Christopher Ricks, Lisa Nemrow, and Julie Nemrow (Simon & Schuster UK, 2014) です。

カーウォウスキの本は Michael Karwowski, 𝐵𝑜𝑏 𝐷𝑦𝑙𝑎𝑛: 𝑊ℎ𝑎𝑡 𝑡ℎ𝑒 𝑆𝑜𝑛𝑔𝑠 𝑀𝑒𝑎𝑛 (Matador, 2019) です。

アーノフの本は Stephen Daniel Arnoff, 𝐴𝑏𝑜𝑢𝑡 𝑀𝑎𝑛 𝑎𝑛𝑑 𝐺𝑜𝑑 𝑎𝑛𝑑 𝐿𝑎𝑤: 𝑇ℎ𝑒 𝑆𝑝𝑖𝑟𝑖𝑡𝑢𝑎𝑙 𝑊𝑖𝑠𝑑𝑜𝑚 𝑜𝑓 𝐵𝑜𝑏 𝐷𝑦𝑙𝑎𝑛 (Morgan James, 2022) です。

マーカスの本は Greil Marcus, 𝑇ℎ𝑒 𝑂𝑙𝑑, 𝑊𝑒𝑖𝑟𝑑 𝐴𝑚𝑒𝑟𝑖𝑐𝑎: 𝑇ℎ𝑒 𝑊𝑜𝑟𝑙𝑑 𝑜𝑓 𝐵𝑜𝑏 𝐷𝑦𝑙𝑎𝑛'𝑠 𝐵𝑎𝑠𝑒𝑚𝑒𝑛𝑡 𝑇𝑎𝑝𝑒𝑠 (Picador, 2011), updated ed. of 𝐼𝑛𝑣𝑖𝑠𝑖𝑏𝑙𝑒 𝑅𝑒𝑝𝑢𝑏𝑙𝑖𝑐 (1997) です。

※「英詩が読めるようになるマガジン」の本配信です。コメント等がありましたら、「[英詩]コメント用ノート(202207)」へどうぞ。

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【発行周期】月3回配信予定(他に1〜2回、サブ・テーマの記事を配信することがあります)
【内容】〈英詩の基礎知識〉〈歌われる英詩1〉〈歌われる英詩2〉の三つで構成します。
【取上げる詩】2018年3月からボブ・ディランを集中的に取上げています。英語で書く詩人として新しい方から2番めのノーベル文学賞詩人です。(最新のノーベル文学賞詩人 Louise Glück もときどき取上げます)
【ひとこと】忙しい現代人ほど詩的エッセンスの吸収法を知っていることがプラスになります! 毎回、英詩の実践的な読みのコツを紹介し、考えます。▶︎英詩について、日本語訳・構文・韻律・解釈・考察などの多角的な切り口で迫ります。

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🔶 Scarlet Town

次のボブ・ディランの詩テクストはリクスらの校訂版による。公式詩集や公式サイトでは4行12連だが、この校訂版では8行6連。

動画リンク [Bob Dylan, 'Scarlet Town' (Stuttgart, 10 July 2019)]


Scarlet Town
Bob Dylan

🔷3連

Scarlet Town in the hot noon hours
There's palm leaf shadows and scattered flowers
Beggars crouching at the gate
Help comes but it comes too late
On marble slabs and in fields of stone
You make your humble wishes known
 I touched the garment but the hem was torn
 In Scarlet Town where I was born

(注)
I touched the garment but the hem was torn cf. Mt. 9.20-21, Mk 6.56; Sam Cooke, 'Touch the Hem of His Garment' (1964)

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