[英詩]Bob Dylan, 'Blind Willie McTell'
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英詩のマガジン の本配信、今月2本目です。歌われる詩の1回めです。今回はボブ・ディランのアルバム 'The Bootleg Series, Vol 1-3: Rare & Unreleased 1961-1991' (1991年、下) に収められた 'Blind Willie McTell' です。
〈だれもブラインド・ウィリ・マクテルのようにはブルーズを唄えない〉と繰返されるマクテルは、1898年生れで1959年没の、米ジョージア州で活躍したブルーズマンでした (下)。Allman Brothers Band がカヴァーした 'Statesboro Blues' の作者としても有名です。ディランがマクテルに対し尊崇の念を抱いていたことは確実です。彼のことを〈カントリー・ブルーズのゴッホ〉'You could probably say he was the Van Gogh of the country blues' と呼んでいます。
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'Blind Willie McTell' の録音は1983年5月5日 (The Power Station / Studio A, New York)。プロデユーサは Bob Dylan と Mark Knopfler. サウンド・エンジニアは Neil Dorfsman. アルバム 'Infidels' の時期の録音です。
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この録音はアクースティック版で、ディランがピアノを弾いていますが、ギターのほうは、弾いた可能性があるのが、Mark Knopfler か Mick Taylor であると言われています。その点について、ヘイリン (Clinton Heylin) は次のように述べています。
Though Knopfler is credited with second guitar on this take, Taylor is the more logical candidate. Hadn't Knopfler already been summarily fired by Dylan? ('Still on the Road')
ノプラーがこのテークの2人めのギタリストとされているが、テーラーのほうがもっと筋が通る候補だ。ノプラーはすでに即座にクビになっていたのではないか。
ヘイリンのことばは、ノプラーが1983年4月末ころにアルバムの制作過程から外されたことへの言及でしょう。
ノプラーのギター演奏は、曲によっては注意力散漫に思えるものもありました ('License to Kill' など)。
ヘイリンの 'Behind the Shades' には、ディランがノプラーやテーラーをなぜ起用したかが述べられています。ディランがテーラーを用いたのは、ノプラーのような甘いトーンより、もっとハードでブルージーなトーンを求めたからだと、ヘイリンは書いています。
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本歌はディランの傑作の一つとされながら、どういう訳か、アルバム 'Infidels' に入らなかったのは、ディランが納得する録音ができなかったからのようです。
当時は録音の方式が激変する時期で、良い演唱をつぎはぎのようにする編集や、ヴィデオ・クリップ的な編集(1981年に始まったMTVが影響)などが流行しだしていたのですが、ディランは頑固にスタジオでもライヴ演奏を貫こうとしました。
本歌の (Mick Taylor と思われる) スライドギター版が非公式に流通しているのですが(下の動画の2つめの electric version 参照)、ディランが途中で笑ってしまった歌の部分を録り直して差替えればじゅうぶん良い録音になっただろうにと、ファンとしては思ってしまうでしょう。
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この歌のように、公式アルバムに収められていないけれども傑出した歌がディランの場合に多いことはよく知られています。アレン・ギンズバーグにディランが語った言葉に「決定するとは放免することに他ならない。レンブラントが絵を完成させたことがあると思うかい?」というのがあります。アーティストの完成に向けたあくなき精神を窺わせるエピソードです。
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今回は詩テクストをリクス校訂版に準拠して考えてみます。これは ''The Bootleg Series, Vol 1-3' で聞かれる歌唱通りですが、公式版 'The Lyrics 1961-2012' の3連の前に別の3連がはいり、計5連から成ります。
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参考文献 は、文字数の関係で別の note にあります。
※「英詩が読めるようになるマガジン」の本配信です。コメント等がありましたら、「[英詩]コメント用ノート(202009)」へどうぞ。
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【内容】〈英詩の基礎知識〉〈歌われる英詩1〉〈歌われる英詩2〉の三つで構成します。
【取上げる詩】2018年3月からボブ・ディランを集中的に取上げています。英語で書く詩人として最新のノーベル文学賞詩人です。
【ひとこと】忙しい現代人ほど詩的エッセンスの吸収法を知っていることがプラスになります! 毎回、英詩の実践的な読みのコツを紹介し、考えます。▶︎英詩について、日本語訳・構文・韻律・解釈・考察などの多角的な切り口で迫ります。
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まとめ
ボブ・ディランの 'Blind Willie McTell' は、世の中の悲哀をえがき、だれもブラインド・ウィリ・マクテルのようにはブルーズを唄えないと結ぶ歌。ただし、このブルーズマンを選んだのは実際の歌の内容とは別の理由ではないかとする説もある。
動画リンク [Bob Dylan, 'Blind Willie McTell' (Original Release)]
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動画リンク [Bob Dylan, 'Blind Willie McTell' (Infidels Outtake)]
原詩+注+日本語訳+韻律+解釈
Blind Willie McTell
Bob Dylan
1連
Seen the arrow on the doorpost saying, “This land is condemned
All the way from New Orleans to Jerusalem”
I traveled through East Texas where many martyrs fell
And I know no one can sing the blues like Blind Willie McTell
(注)
1 Seen 前に I've (または I have) を補って解する
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