[書評]万能鑑定士Qの事件簿 VIII
舞台は台湾。
万能鑑定士の凜田莉子は故郷の波照間島の水問題に長年こころを砕いている。
そんなところへ突然「同島の生活用水供給につきまして問題解決のめどが立ちました故、ご報告させていただきます。なお、このお手紙をもちまして、渇水対策募金につきましては終了をご案内させていただきたく存じます。」との手紙が届く。いったいどういうことか。莉子は個人でこれまで50万円ほど対策募金に寄付してきた。それでも、募金総額は海水淡水化プラント建設に必要な額の0.1%未満との発表があったばかりだ。
いそぎ波照間島に戻ってみると、同島出身の嘉陽果煌議員が渇水対策の画期的なテクノロジーに出会って、その採択を提案したという。その実証映像を煌が莉子に見せてくれる。台湾の漁村で海上に船をだし、巨大なロートに仕込んだフィルターで塩分を除去し、真水になる一部始終を収めた記録だ。
議会ではすでに採択が決議され、町の年間予算の3分の1にあたる12億円でその新技術を買うという。
あやしいと直感した莉子は台湾に向かい、その発明者に会おうとする。故郷の旧友たち二人も同行する。そこからは波乱万丈の冒険と謎解きが連続し、スリリングな展開だ。
はたして海水の淡水化のトリックは何なのか。あっと驚く解決が待っている。
松岡圭祐『万能鑑定士Qの事件簿 VIII』(角川文庫、2011)