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[英詩]Bob Dylan, 'Oxford Town'

※ 旧「英詩が読めるようになるマガジン」(2016年3月1日—2022年11月30日)の記事の避難先マガジンです。リンク先は順次修正してゆきます。

英詩のマガジン の本配信、今月2本目です(歌われる詩)。今回は、ボブ・ディランの2枚めのアルバム 'The Freewheelin' Bob Dylan' (1963年、下) に収められた 'Oxford Town' です。

Bob Dylan, 'The Freewheelin' Bob Dylan' (1963)

'Oxford Town' の録音は1962年12月6日 (Columbia Recording Studios / Studio A, New York)。録音エンジニアは Stanley Tonkel, Pete Dauria. プロデユーサは John Hammond.

次の参加ミュージシャン。

Bob Dylan - vo, g
(vo: vocals, g: guitar)

雑誌 'Broadside' の求め(下、第14号, source)に応じて作られた歌。お題は1962年当時の米国史上の大事件「オール・ミス暴動」でした。別名「オクスフォードの戦い」とも言います。

'Broadside', #14 , October 1962

〈戦い〉とはまた大げさなと思いますが、事実、背後に軍人がからんだ事件でした。主人公は元空軍兵士のアフリカ系アメリカ人のジェームズ・メレディス(下、中央)。

ミシシッピ大学の授業に向かうメレディス(中央)[左に連邦法執行官、右に司法長官補佐が同伴(ソース)]

彼が黒人として初めて南部のミシシッピ大学(「オール・ミス」)に入学(大学四年への編入学)しようとしたところ、大学のキャンパスのあるミシシッピ州オクスフォードで彼の入学に反対する暴動が起きたのです。暴動を焚きつけたのは元米陸軍少将の白人至上主義者エドウィン・ウォーカでした。キャンパスでの暴動は夜に始まり、翌朝、米連邦軍の投入でやっと鎮静されます。暴動は1962年9月30日(日)から10月1日(月)の2日間の出来事でした。

ボブ・ディランはしかし実際には事件の関係者の名前を出したりせずに、場所の名前だけを用いて、いわば普遍的な歌を作ったのです(下、'Broadside' 第17号, source)。ディランにはどのような意図があったのでしょうか。

'Broadside', #17 , December 1962

参考文献 は、文字数の関係で別の note にあります。

リクスらの校訂本は Bob Dylan, 𝑇ℎ𝑒 𝐿𝑦𝑟𝑖𝑐𝑠, eds., Christopher Ricks, Lisa Nemrow, and Julie Nemrow (Simon & Schuster UK, 2014) です。

※「英詩が読めるようになるマガジン」の本配信です。コメント等がありましたら、「[英詩]コメント用ノート(202210)」へどうぞ。

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🔶 Oxford Town

次のボブ・ディランの詩テクストはリクスらの校訂版による。

動画リンク [Bob Dylan, 'Oxford Town' (Official Audio)]


Oxford Town
Bob Dylan

🔷1連

Oxford Town, Oxford Town
Everybody's got their heads bowed down
The sun don't shine above the ground
Ain't a-goin' down to Oxford Town

(注)
don't shine AAVE(African American Vernacular English「アフリカ黒人の土着英語」「黒人英語」)的用法の一つに、〈3単現の -s の欠如〉があると指摘されている(ソース

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