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[英詩]1分で読めるディランのライム(3)

※ 旧「英詩が読めるようになるマガジン」(2016年3月1日—2022年11月30日)の記事の避難先マガジンです。リンク先は順次修正してゆきます。

※英詩のマガジンの副配信です。

お忙しい方のためのディランのライム集です。これまでに

・(1) 'Blowin' in the Wind' (1963) [詳しいノート
   'Jokerman' (1983) [詳しいノート
・(2) 'A Hard Rain's A-Gonna Fall' (1963) [詳しいノート

を取上げました。それぞれ、詳しい議論は別の「詳しいノート」でやってありますが、この「1分で読めるディランのライム」シリーズは詩の中から、おもしろいと思ってもらえそうなライムを、1分で読み切れる分量で紹介するものです。

目標は、英詩のライムの豊かさ、おもしろさを味わってもらうことです。現代英詩の屈指のライマーであるボブ・ディランのライムを通して、音と意味の響きあいのおもしろさを感じていただければ幸いです。時には、本配信の時よりライムを掘下げて論じることもあります。前回の(2)がそうでした。

では、行きます。歌詞の太字は脚韻部分 (=強勢母音以降) です。今回は、 'Not Dark Yet' です。


Not Dark Yet

Well, my sense of humanity has gone down the drain
Behind every beautiful thing there’s been some kind of pain
She wrote me a letter and she wrote it so kind
She put down in writing what was in her mind        10
 I just don’t see why I should even care
 It’s not dark yet, but it’s getting there

ボブ・ディランのアルバム 'Time Out of Mind' (1997, 下) の美的詩的頂点と目される作品 'Not Dark Yet' の2連の6行。2行ずつ韻をふむ二行連句(カプレット)が3組。drain / pain が -ain の脚韻 (ライム) をなす。脚韻の定義〈強勢のある母音以降の音が一致〉に完全に適合するが、他の2組 kind / mind, care / there と比べて、やや特異な組合せの韻だ。

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drain「排水口」とpain「苦痛」とは、ふつうは結びつかない。しかし、意味的にはあざやかに響きあう(もう、おれが人間である感覚が失われた[排水口を流れ出た]/すべての美しい物のかげに何かしら痛みがあった)。ディランは独力でこの韻を思いついたのか。

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