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[英詩]Bob Dylan, 'Stay with Me'

※ 旧「英詩が読めるようになるマガジン」(2016年3月1日—2022年11月30日)の記事の避難先マガジンです。リンク先は順次修正してゆきます。

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英詩のマガジン の本配信、今月2本目です(歌われる詩)。今回は、ボブ・ディランの36枚めのアルバムで、フランク・シナトラのカバーばかりを集めた 'Shadows in the Night' (2015年、下) に収められた 'Stay with Me' です。

Bob Dylan, 'Shadows in the Night' (2015)

Jerome Moross(曲)と Carolyn Leigh(詞)による作品です。映画 'The Cardinal' (Otto Preminger 監督、1963, 邦題「枢機卿」[すうききょう、すうきけい]) のオープニング(下)とエンディングで流れるテーマ曲(器楽曲)に、歌詞を付した歌。 

動画リンク ['The Cardinal' (1963), opening]

ディランがインタビューなどで映画 The Cardinal' に言及したことはないようですが、カーウォウスキが指摘するようなディランとカトリシズムとの関りがあるとすると、この映画をディランが観た可能性はあるのではないかと思います。

そして、その映画の内容をおそらくふまえた次のフランク・シナトラの歌詞ビデオも参考になります。映画は、実在の枢機卿 Francis Spellman を描いた Henry Morton Robinson 作の小説 'The Cardinal' (1950) に基づいたものです。

動画リンク [Frank Sinatra, 'Stay with Me']

録音は2014年2-3月 (Capitol Studios / Studio B, Los Angeles)。録音エンジニアは Al Schmitt. プロデユーサは Jack Frost (Bob Dylan).

次の参加ミュージシャン。

Bob Dylan - vo
Donnie Herron - pedal steel g
Charlie Sexton - g
Stu Kimball - g
Tony Garnier - b
George G. Receli - perc

(vo: vocals, g: guitar, b: bass, perc: percussion)

シナトラのカバーで占められているアルバム 'Shadows in the Night' 全10曲中、ライヴで演奏されたのは、'That Lucky Old Sun' と本歌だけであるとマルゴタンらは指摘します。

しかも、本歌の場合は、コンサートの締めとして歌われることが多かったのです。

2014年10月26日に本歌の初演を Hollywood, California でおこなったあとの北米秋季公演26ステージをすべて本歌で締めくくりました。

2015年の米国春季28公演も本歌で締めた。ただし、同年の欧州夏季公演、欧州秋季公演、翌年の日本春季公演のいづれでも、本歌は一度も演奏されなかったのです。

しかし、2016年の米国夏季公演の最終4コンサートで本歌は復活し、セットの最終歌として演奏されました。そして、同年11月の米国秋季公演の最終10コンサートでも本歌は最終歌として演奏されました。その後は、2017年4月20日に、フランスのパリで最終歌として演奏されています(このパリ公演は本歌が欧州で演奏された唯一のコンサート)。

このような演奏の記録をみると、本歌はディランにとって何か特別の意味を持っているのではないかと思われます。

参考文献 は、文字数の関係で別の note にあります。

マルゴタンらの本は Philippe Margotin and Jean-Michel Guesdon, 𝐵𝑜𝑏 𝐷𝑦𝑙𝑎𝑛: 𝑇ℎ𝑒 𝑆𝑡𝑜𝑟𝑦 𝑏𝑒ℎ𝑖𝑛𝑑 𝐸𝑣𝑒𝑟𝑦 𝑇𝑟𝑎𝑐𝑘, expanded ed. (Black Dog and Leventhal, 2021) です。

カーウォウスキの本は Michael Karwowski, 𝐵𝑜𝑏 𝐷𝑦𝑙𝑎𝑛: 𝑊ℎ𝑎𝑡 𝑡ℎ𝑒 𝑆𝑜𝑛𝑔𝑠 𝑀𝑒𝑎𝑛 (Matador, 2019) です。

※「英詩が読めるようになるマガジン」の本配信です。コメント等がありましたら、「[英詩]コメント用ノート(202211)」へどうぞ。

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【発行周期】月3回配信予定(他に1〜2回、サブ・テーマの記事を配信することがあります)
【内容】〈英詩の基礎知識〉〈歌われる英詩〉〈英詩〉の三つで構成します。
【取上げる詩】2018年3月から2022年8月までボブ・ディランを集中的に取上げてきました。英語で書く詩人として新しい方から2番めのノーベル文学賞詩人です。(最新のノーベル文学賞詩人 Louise Glück もときどき取上げます)
【ひとこと】忙しい現代人ほど詩的エッセンスの吸収法を知っていることがプラスになります! 毎回、英詩の実践的な読みのコツを紹介し、考えます。▶︎英詩について、日本語訳・構文・韻律・解釈・考察などの多角的な切り口で迫ります。

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🔶 Stay with Me

詩テクストは SongLyrics 版を参考に、押韻を考慮して編集した。連の構成は暫定版。

動画リンク [Bob Dylan, 'Stay with Me' (Official Audio)]


Stay with Me
Jerome Moross and Carolyn Leigh

Should my heart not be humble
Should my eyes fail to see
Should my feet sometimes stumble
On the way, stay with me

Like the lamb that in springtime wanders far from the fold  5
Comes the darkness and the frost
I get lost
I grow cold

I grow cold
I grow weary and I know I have sinned     10
And I go seeking shelter and I cry in the wind

Though I grope and I blunder
And I'm weak and I'm wrong
Though the road buckles under
Where I walk, walk along            15
Till I find to my wonder
Every path leads to Thee
All that I can do is pray, stay with me
Stay with me

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