[書評]Ann Cleeves, 'Cold Earth' (2016)
Ann Cleeves, 'Cold Earth' (2016)
このシリーズを読み終えるといつも虚脱感に襲われる。
作品世界からお別れしなければならないからだ。
今回もたっぷりシェトランドのミステリに浸かった。風や雨や冷気が伝わってくるような筆致には、毎度のことながら、ぞくぞくさせられる。
姿の見えない犯人を捜査で絞って行く間は怖くはないのだが、殺人犯が現れた時には殺気が漂い、一気にサスペンスが盛上がる。
Shetland Island series の第7作。(その前にToo Good To Be True [novella, 2016]がある。) Tain と呼ばれる場所で地滑りが起きる。そこに女性の死体。誰なのか。捜査を進めるなか、別の殺人事件が起きる。両者は関係しているのか。謎は深まる。
シェトランド島の狭いコミュニティの中の人間関係の複雑さを捜査陣が解いてゆく。捜査チームは主人公 DI Jimmy Perez と上司 DCI Willow Reeves, および DC Sandy Wilson の3人だ。本作ではそれぞれが役割を十分に果たし、精密に捜査してゆく。特に Perez と Reeves のロマンティックな関係は前作あたりから気になっていたが、本作では読みごたえがある。
※DI=Detective Inspector「警部補」、DCI=Detective Chief Inspector「警部」、DC=Detective Constable「巡査」
スコットランド英語の雰囲気が随所で楽しめる。これほどローカル色豊かで味わいのあることばはめったにない。英国のミステリ小説が好きな人には文句なくお勧めできる。
なお、日本語訳はまだ前作の 'Thin Air'『空の幻像』までしか出ていない。
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