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清華大学への応募プロセスとプログラミング試験

今日から中秋節の三連休なので、北京の東側にある自宅に戻る。で、時間があるので簡単に今回清華大学の大学院に来ることになった顛末を書いておく。僕は昨年2020年末まで北京でとある会計事務所に勤めていた。仕事の内容は日本企業の中国での事業展開と投資活動のサポートで、経営トップと会って話したり、当地の日本商会の会合に出たり、ビジネスセミナーで自分の考えを伝えたりするのは楽しく充実していた。が、コロナでミーティングなども少なくなり仕事になるようなプロジェクト案件も減ってきて、昨年後半にいわゆる『肩たたき』にあった。去年の9月くらいから本格的に『次の人生』を探すことになり、時間があったらやりたいなと思っていたプログラミングの勉強を独学ですることにした。幸い、Courseraという良いE-ラーニングのプラットフォームを見つけた。そこにあったCoursera Plusというコースが年間400ドルでほとんどの講座が取り放題というお得なものだったので、それでPythonというプログラミング言語の勉強を始めた。2021年に入ってからは家でぶらぶらしつつ勉強を続けていた。2月に入ってすぐにネットで清華大学コンピュータサイエンス学部がアドバンストコンピューティングプログラム(ACP)という留学生向けの全部英語のプログラムで修士の学生を募集している、ということを知った。応募の締切は3月1日だったので頑張ればなんとかなるかな、と思った。(実際、このタイミングは二次募集で危なかったらしい。他のクラスメートはもっと早くに受かっていたことを、キャンパスにきてから知った。)偶然、日本の母校の卒業・成績証明書が前の会社で保存されていたのでこれをゲット。推薦状を友人2名に書いてもらい、これまた友人の病院で健康診断を受け、志望動機の小論文を書いて提出。なんとか3月1日のデッドラインに間に合った。

3月に入ってからオンラインでプログラミングの試験をするという連絡があった。一応書類選考は通ったらしい。それと同時に面接の日時も伝えてきた。タイムテーブルを見ると、他に日本人の受験者が3人ほどいた。プログラミングの試験は金曜夜の8時から3時間のごっついもので言語はなんでも良いという。ここでE-ラーニングで勉強していたPythonが役にたった。試験の内容は、『整数に、与えられたいくつかの分数をかけて1にせよ』とか『数人の子供たちから、ある条件を満たす二つのチームを作れ』とか『二つの文字列が”ほぼ等しい”かどうか判別せよ』とかの問題をプログラムに落とす、シンプルだが本質的に難しいものだった。3時間で3題。形式はオンラインでオープンブック、試験中のビデオミーティング(監視?)とPCの画面録画が必須。この画面録画のファイルは500 ギガバイトもあって24時間以内にクラウドストレージ経由での提出が必要。それまでそんなことしたことはおろか、聞いたこと自体も無かったが、これも試験の内かなと思って事前にやり方を調べた。アップルのiCloudでなんとかなった。で、決戦の金曜日(古い!)、実際の試験ではまず一問目に取り掛かって解いてみたが、プログラム自体は自分のMacでは動くのに、オンラインで提出しても不正解と出る。オンラインだから瞬間的に反応してくる。入出力の形式か何かかなと思っていろいろ試してみたが、やっぱりだめ。諦めて、難しそうな二問目を飛ばして三問目へ。これも一問目と同様、自分では正解のつもりなのに不正解としか出ない。と、悩んでいるうちに時間切れ。実技試験が零点で、今年の受験が終わったなと思った瞬間だった。

でも問題自体は面白かったので次の日、土曜日の午前中に手を付けられなかった二問目を解いてみる。考えて考えて、インターネットも使って(実際の試験ではインターネット使用不可)、2時間かかってやっと解けた。ああ、これじゃあやっぱりどうせだめだったんだ、と思って不合格の連絡を待っていた。そしたら教授から電話がかかってきて、面接はしてくれるという。その時に教授から『なんで貴方の歳で修士に入学するなんて考えてるのか』と訊かれた。で、『おっしゃってる質問の意味が理解できません。これからの時代はAIやデータサイエンスが社会全般を動かしていきます。その分野では中国が世界をリードしているし、今後もっともっとそのリーダーシップは重要になるでしょう。清華大学は中国で最も素晴らしい大学です。その大学の大学院でコンピュータサイエンスを、英語で勉強できるプログラムがあったら応募しないわけないでしょう』と答えた。教授は『ああ、それはそうですね』と言っていた。

後日、やっぱり面接をオンラインでやってくれた。画面の向こうには5人くらいの先生方がいた。僕はこれまでの経験で培った『謝る技術』を存分に駆使して、試験で零点だったことを謝った。あと、手をつけなかった二問目も次の日の朝に解いたことと、僕が入ったら絶対に大学や社会の役に立つということを力説した。その後、4月下旬に合格内定の通知をもらった。

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