
【経営学を学ぶ企画】第一章その3
挨拶
予告通り、今回は会社機関とコーポレート・ガバナンスをやります。
コーポレート・ガバナンスとは何か
経営者が株主の利益のために行動させるように監視する活動を「コーポレート・ガバナンス」と呼びます。それまで存在した有限会社法と株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律が2005年の会社法制定で統廃合されたことをきっかけに有限会社は廃止され、中小企業の株式会社化が進み、株主と経営陣との関係が注目されるようになりました。株式の分散により、経営者の権限を制御するのが難しくなる中、現経営者が時期経営者を任命する「経営者支配」と呼ばれる体制が問題視され、コーポレート・ガバナンスの見直しを唱える声が増えました。これは経営者が自身の保身に集中し、株主との利害関係に弊害を及ぼす懸念があり、こうした保身の結果の一例として、内部留保の増加に合わせた配当の減少があります。法律上、株主の利益のために行動しなければならず、その整合性を取るためにもコーポレート・ガバナンスが重要になってきました。これは会社での不正行為を防ぐ効果もあり、コンプライアンス(法令順守)やリスクマネジメントの観点からも重要になってきます。コーポレート・ガバナンスを実現するには経営者を監視する「監査」が必要とされます。監査の仕方は資本市場や証券取引所、監督官庁などの外部から監視する方法と、株主総会や取締役会などの会社内部の機関を通す方法があります。今回は会社機関を通した監視方法をみていきます。
注:株式分散が進んだ会社では株主総会や取締役会が機能不全に陥った時のフェーズです。株式分散が進んでいない場合、従来通りの株主総会や取締役会を通した監視でも大きな問題はありません。
会社機関
日本企業の場合、監査役設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社の3種類の中から任意に選択します。まず、監査役設置会社の各機関になる、株式総会、取締役会、監査役(会)、代表取締役をみていきます。
株主総会
株主総会は株式会社の最高機関として機能しており、定款の変更や解散・合弁などの基本事項から株主の利益に関わる配当や取締役や監査役の選任と解任の権限も持ち合わせてます。尚、「定款」とは会社の目的や組織の規則の取り決めになり、株式の数(授権資本)や取締役の数等も決めます。
取締役会
株主総会から選ばれた取締役は株主に代わって会社の業務が適正に運営されるように監督する役割を担い、重要な意思決定での判断を下すことが主な任務になります。但し、業務執行は行わない。
監査役(会)
株主総会から選ばれた監査役(会)は会社の業務及び会計を監査します。監査の数は会社の規模にもよりますが、大企業なら3人以上の監査役を選任し、半数が社外監査役でないといけなません。
代表取締役
代表取締役の取締役と異なる点は業務執行にあたる少数の役員という点です。代表取締役のポジションの例として、社長、副社長、専務取締役、常務取締役、取締役があります。社長、副社長、専務取締役、常務取締役は常務会での参加権限を持ち、専務取締役、常務取締役、取締役は高度な部長クラスにあたります。尚、社外取締役、監査役、株主総会が監視しているのは取締役会の社長、副社長、専務取締役、常務取締役、取締役までです。取締役会に属さない普通の部長や課長クラスの従業員までは監視しません。
監査役設置会社のコーポレート・ガバナンス
昔ながらの日本企業の株式会社は取締役会の会員の大多数が業務執行者によって占められていた為、業務執行の兼務状態にある取締役への監査が行き届いていなかったことが頻繁に指摘されてます。本来、監査が行き届いくようにする手法として、会社の従業員である社内取締役の他に会社の従業員でない社外取締役もボードメンバーに加える対策がされますが、昔ながらの日本企業の株式会社は社外取締役の参入を拒み、社外取締役を招いても、その経歴を見ていけば、子会社や関連会社などの同じ企業グループに属する会社から招かれることが多かったのです。社内取締役で固められたボードメンバーは取締役と業務執行を兼任している為、監査機能が働きません。言い換えるとコーポレートガバナンスが機能していないことになります。
注:仕組み上、コーポレート・ガバナンスが機能しない社内取締役で固めた場合でも、社内取締役がしっかりしていれば、外部からの妨害を受けずに迅速な意思決定の速さが実現できるが、すべての社内取締役にこれを求めるのは難しい。
代表取締役は対外的に会社の代表として、取締役会の決定事項を遵守し、業務遂行にあたるのがセオリーです。しかし、日本の株式会社では依然として代表取締役である社長の権限が強く、多くの権限を兼任しており、取締役、監査役の人事権まで決められる為、コーポレート・ガバナンスの理想の姿からは程遠い姿の企業統治が行われているのが現状です。
あとがき
今回は会社機関とコーポレート・ガバナンスの初歩的な部分に触れましたが、次回は株主総会の議決権など仕組みについて解説する予定です。