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《臓器移植》というテーマを軸に人間の醜悪な欲望と謎を描く『ギフト±』

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掲載作品の中でも特におすすめの作品を紹介してまいります。今回は『ギフト±』(著者:ナガテユカ)をご紹介します。

ギフト書影

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「命は大事に扱わないと」とつぶやき、生きている人間の肌に迷いなくメスを入れる……ヒロイン・鈴原環は女子高生にして凄腕の「解体屋」。臓器売買を仕切っている、財閥の次男で大学生の秋光崇と活動をともにしている。

 生命倫理、医療、裏社会、児童売春事件、チャイニーズマフィア、JKビジネス等々、さまざまな要素を盛り込みつつ圧倒的な迫力で語りかける《臓器売買ミステリー》。

本作は「困っている人々のために、悪人を懲らしめてスッキリ♪」といった単純な物語ではない。闇社会を舞台に、人間の醜悪な欲望と謎を描くドラマでありーーやがて物語は、生まれながらに《臓器移植》と関わらざるを得ない特殊な運命を背負った少女が「自分の人生を生きる」術を探るターンへと舵を切っていく。
 
 環らが臓器を奪う相手は、生きている価値がないと判断した凶悪犯だ。ターゲットに見定めた対象のことは「クジラ」と呼ぶ。臓器はもちろん、髪はカツラになるし骨は標本に活用できる。捨てるところがないのはクジラと同じだからというわけだ。神様からの贈り物である命を《より良い形で再分配》するというのが彼らの考え方だ。

 現実問題、臓器移植を希望している人の数は膨大だが、順番はなかなか巡ってこない。提供者の数がまったく追いつかないからだ。

 環が摘出した新鮮な臓器は崇によって、非合法で臓器移植を行なう闇クリニックの医者・英琢磨の元に届けられる。琢磨はかつて親族が経営する医院に勤めていたが、医院長の殺害及び放火の容疑で現在は指名手配中の身で、林と名を変えている。
 
 琢磨が表社会から身を隠しているのは、捕まるわけにはいかないある事情があるからだ。彼は、かつて環の心臓の手術をしたことがあり、環との再会を求めている。自分が移植する臓器を取り出しているのが彼女であるとも知らずに。

 実は、環はもともと、秋光家の長男(崇の兄)に心臓を移植するために生を受けたデザイナーベビーだったのだ。出自のためか、まるで人間らしい感情を表に出さない環だが、実は彼女も琢磨には特別な感情を抱いている。しかし、崇も環に異常なほどの執着を持っていて……。

3人の秘密が開示されながら、探偵や警察官といった正義サイド、裏社会にはびこるアウトローなど多くの人物が登場し、それぞれの事情、心情に個人的な因縁も複雑に絡み合う。大きなうねりの中で小さなピースがカチリとハマり、謎が解けていく瞬間が快感で、ページをめくる手が止まらない!

メインテーマが臓器売買であるだけにエグい描写が多く、ちょっとハードなアウトローものは読み慣れていても「こんなのアリ⁉︎」と度肝を抜かれるシーンが続出。だが、精緻で美しいペンタッチゆえ「グロい」印象は薄いのでは? 表情も変えず臓器を手にする環の横顔はときに神々しくさえある。

2015年にスタートし、現在も連載が続く作品。テンションは高まる一方、重厚さとエンターテインメント性を備えたドラマがどこに帰着するのか注目を集めている。

書き手:粟生こずえ

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