詩 すべてのモチーフへ
乏しい脳漿に注ぎますのは、縊れに研ぎ澄ましますのは、潮流の源から溢れでた、三つ編みの憧憬の夜空。唇が足りないから棚卸しをしましょう、目もとから暗闇が放たれていますよ、耳朶を逆鱗が撫でている、皮膚が慟哭すると拡がっていく黴臭さ、脳漿に注ぎますのは、霧立つ湖の、紅い月の、存亡を賭けた歯牙。攻防が繰り広げられている。ほそい首が落ちてくるのです。だから選択の余地は意図的に排除された。髪の一房しか掴めない指先が惑星の舵を握っているという情景に、思い出すのは、瞳のピントがあっていた頃。今宵、年齢は十と若返り、兵隊は百と蘇り、時代は千と戻りゆく。枯れ果てた大地に注ぎますのは、女神の姿態をかたどった雨水。ようやくメッセージが到着する。親愛なる肉の器へ。その声の主は、失った半身であり、逃げ出した楽園であり、誰よりも厳しい母だった。