詩 ぐるり、匍匐
すきになれなかったあ、
白亜のこんちゅう
陰翳にしのんでた
のは こころだって同じだ
脚がたくさん生えていて
よおく見ると
ぐ
る
り
ぐ
る
り
匍匐してんなあ、
こきゅうのペースと違う収縮って
気持ちわるく感じるけど
わたしん中
そういうものでいっぱいだあ、
垂迹したんですよ
って顔で 人の姿になってしまってから
受け入れ難いこと
増えていくばっかりだあ、
甲殻から抜け出せない
やわい身体を
抱く腕の
細胞の
ひとつひとつが
ぐ
る
り
ぐ
る
り
蠕動してんなあ、
岩の裏じゃあ
気にもしなかったのに
日向にでたら
すきになれなくなった
なあ、
うごめいてるのは
生理的反応なのか
ふくらんでるのは
苦しみを排泄できない
ことへの嘆きなのか
だったら結局
夜闇でしか輝けないのは
変わらないのかもなあ、
垂迹したんですよ
なんて顔でいんのが
ばからしくなったなあ、
わたしは
象徴なんかじゃなくて
痛みのひとつに過ぎないんですよ
なんてつぶやいたって
意味あんのかわからんなあ、
多足たちは
ぐ
る
り
ぐ
る
り
ぐ
る
と
ストームは過ぎ去って
縮んでゆく
ひかり
『東方永夜抄』に登場する妖怪蛍『リグル・ナイトバグ』を基にした詩