MIC×㈱ジグザグ_後編:日本のECを世界へ - ZigZagが切り拓く越境ECの未来
■はじめに
モバイル・インターネットキャピタル株式会社(以下MIC)は、1999年の創業時からデジタルテック領域において、リード投資を基本とし、シリーズAを中心とするオールステージにてスタートアップへ投資支援活動を行う独立系のベンチャーキャピタルです。投資先のスタートアップへの支援の一環として、事業会社との事業連携等オープンイノベーションにも注力中です。
このシリーズでは、投資先の起業家をゲストに迎えた公式Podcastを元に記事化してお届けします。
今回お迎えするゲストは、前編に引き続き株式会社ジグザグの代表取締役・仲里一義さん。さらに後編は、取締役 Marketing Communication本部長の鈴木賢さんも迎えてお届けいたします。ZigZagが切り拓く越境EC市場の未来とは?CEO自ら語る創業秘話とは?2本立ての後編となる本記事では、越境マーケティングの可能性や、コロナ前後での変化などについて言及していきます。
※本記事は、2021年と2022年にご出演いただいたPodcastの音源を記事として再編集しお届けしています
👉前編はこちら👈
■越境EC市場の潜在性と機会損失
ジグザグ 仲里さん:
インターネット、eコマースの情報はSNSなどを通じて国を超えます。当然、ユーザーは国を超えて、自国以外のサイトを見に訪れます。日本という大きな単位で見ると、国外から日本のECサイトへのアクセスは2%程度ですが、1つのサイトに置き換えてみると、1つのサイトにつき50~100カ国という数の国外ユーザーの方々が、私たち日本のサイトを見に来ている現実があるんです。
ただ残念ながら、日本の多くのサイトには「かな入力フォーム」があるため、海外の方がカートに商品を入れても先に進めなかったり、そもそも日本のショップさんが海外配送を実施していなかったり、他言語のサポートができなかったりなどの現状があります。そのため、サイトを訪問する海外ユーザーの方が、商品も欲しいと思ってカートに入れてくれているけれども買えない。そしてサイト運営側は、海外ユーザーの方に売りたいけれども、販売や配送ができない、という状況でした。
MIC 有賀:
これを数字に換算すると、国内EC市場が16.8兆円なのに対し2%なので…およそ3000億円もの機会損失をしていたということになるんですか?
ジグザグ 仲里さん:
はい、まさにそうですね。それくらいの「買えない体験」が存在しているのではないか、と見ています。しかも、勿体ないことに多くの日本企業はそのことに気が付いていない。リアルな店舗であれば、海外からのお客さまが来るとおもてなしをしているかと思うんです。しかし、ウェブサイトに見に来ている、いわゆる「ウェブインバウンドⓇ」は存在しているにもかかわらず、そこは皆さん放置してしまっているんですね。これは勿体ないと感じています。
■コロナ禍での事業成長と市場の変化
MIC 有賀:
コロナ禍では海外への行き来が出来なかったこともあり、家でショッピングする方がこれまで以上に増えるなど、御社の事業としては追い風となって加速した部分もあるのではないかと思います。コロナの前と後では、それまで予測していた未来はどのように変化しましたか?また、業界の変化をどう感じていますか?
ジグザグ 仲里さん:
まず私たちには2つの視点があります。買い物をしたいというユーザーの視点と、販売したいと思っている売り手側の視点です。ユーザー視点で見ると、SNSで「日本にパンデミックで来れなかったんだけども、行きたかったショップにアクセスをしたらWorldShoppingのカートが出てきて買えた。」という声がXに上がったりしています。ですので、ウェブインバウンド自体も少しずつ増えているということは肌で感じています。
一番大きかったのは、明らかに日本の企業の海外に対する目線が変わったことです。一時期はリアルなインバウンドが消滅して、海外ユーザー消費が消えてしまいました。当然ながらDXが進み、ECへ注力する風潮にはなりましたが、その中で「海外からの買いたいという要望にどう応えようか」という声が色々なところで起き始めたんです。そこで「うちもECサイトで海外販売を試みよう」と具体的に調べていくと、多くの壁があることに気づき、弊社のサービスを使ってみようというということで多くの問い合わせをいただきました。
ですので、去年の春夏以降から(収録当時2021年)、リアルのお店を持っているアパレルや商業施設ビル、百貨店など、通常はスタートアップだとなかなか取引できないようなクライアントにもサービスいただいています。
MIC 有賀:
導入社数の増え方はいかがでしたか?
ジグザグ 鈴木さん:
海外の方の購入自体が、去年の同月と比較すると毎月3、4倍のペースで伸びています。私たちのサービスを導入するショップを訪問する海外ユーザー数で言うともう少し多くて、おそらく4、5倍ぐらいの量になっています。つまり、それぐらいのペースで導入いただいているECサイトが増えているということでもあります。ただ、大きいサイトとなると、それなりに海外ユーザー数が多く揺らぎはあると思います。
私たちは、BtoBのSaaSビジネスみたいな毎月課金するような設計で「月額5000円で使えますよ、それ以外はいただかないですよ」というモデルなんです。海外ユーザーの方の購入代行をお手伝いしているので、外国の方から10%いただいているんですね。つまり、合わせ技なので、単純な国内のSaaSビジネスだけの括りでは捉えていないんです。ですから、導入社数よりも、「導入することによって海外ユーザーの方がどれだけ買えるようになったか」という視点で見ています。
■ジグザグが実現する「ないと困る」サービス
MIC 有賀:
御社が存在していることで、今後世の中の可能性がどう変わっていくのか、どんな未来を予測されているのかをお話いただけますか?
ジグザグ 鈴木さん:
日本が強い「アニメ」など、カルチャーに対するものが手に入りやすくなったという面では、非常に大きな存在価値を出せていると思います。もともと海外へ何かを売ろうとか、それだけじゃなくても何かをしようという時に、日本は割と「自分たちだけで全部やろう」という企業が多かったと思うんです。でも、それって実はすごく時間のかかる話なんですよね。
コロナの件とも関連しますが、色々なものが分断されて、助け合わないといけない状態になっています。私たちはもともと、日本のECサイトと共に海外展開を伸ばしていきましょう、というツールなんです。ある意味で、良い商品を作る、そして良いものを売り出す、という役割分担が出来ているんです。私たちはユーザーが買えるようにし、しっかりと海外のファンに商品を届けていく。この役割分担ができるようになったことで、非常にハイスピードで日本のものを届けていけるようになったわけです。
日本はビジネス開発という面では、「海外の先進国に対してスピード感が追いついていない」と言われていると思いますが、一方で日本には良いモノがどんどん生まれてきていると感じています。ですので、日本でできた良いモノをいち早く世界に届けて、よりモノやコンテンツが手に入ることによる満足度を世界的に上げていくことを目指しています。実は知らないだけで、釣り道具やビリヤードの道具、料理包丁なども日本のモノは非常に強いんです。
MIC 有賀:
まさに職人技なんでしょうか?私は宮崎の地方都市で地域PRのお手伝いもしているのですが、「この地方の可能性をもっと支援できるものがあったらいいよね」という話は、やはりよく議題に上がります。ちょうど最近も、ただ発信するのではなく、世界に向けて発信していけるような手段や工夫を検討して、伴走できるようなスタートアップが出てきたらすごく夢があるよね、という話をしていたところでした。
ジグザグ 仲里さん:
間違いなく、情報はフラット化していきます。デバイスが普及して5Gになって、いろんなソーシャルメディアが出てくると、より国境を越えてフラット化していくことは間違いないです。
ただ、「物を買う」というところのハードルは確実に存在しているので、そこをいかに簡単にしていくかが非常に重要です。より本物にユーザーが近づいていきます。情報は直接的に近づいていくので、今そこの部分がまだまだユーザーが弱い立場にあります。具体的には、転売されているものを買ったり、並行輸入品に乗っかっているものを買ったりという状況が存在します。
商品を知る手段は増えていき、情報のボーダーレス化が進む、ここに勝機を感じています。オペレーションの課題を解消することによって「世界中の欲しいに応える」が加速するのかなと考えています。
また、僕が会社を作るときに考えたことは、「あったらいいな」ではなく「ないと困るサービスが絶対に残っていく」ということでした。今後も弊社含めて色々なサービスが出てくると思っているので、私たち自身もより今後進化して「ないと困るサービス」にしていきたいと思っています。
MIC 有賀:
海外ユーザーの方が日本のものを買おうとした時、御社のおかげでスムーズな購入が可能になっているわけですが、逆に私たち国内の人間が「海外のものを欲しい、でも英語がわからない!」そういう場合にも使えるようになるのでしょうか?
ジグザグ 仲里さん:
今はできないですけど、今後できるようになっていきます。
MIC 有賀:
私、ドイツミュージカルが大好きなんですけど、ドイツ語が全くわからなくて買えないっていうジレンマにもなっているので、ぜひチケットを買えるようにしていただきたいです(笑)
ジグザグ 鈴木さん:
いいですね、これでドイツ支部長が生まれましたね(笑)
■世界中のワクワクを当たり前にする未来像
MIC 有賀:
最後にお二人に共通質問として、MICでは「Can we make a better future together?」というふうに呼びかけているんですけれども、Better future、より良い社会というのがどうしても抽象的です。お二人がイメージされている「より良い社会」がどんな未来なのか、それぞれお聞かせください。
ジグザグ 鈴木さん:
いま色々なECが誕生するなど、どんどん便利になっていますよね。例えばAmazonさんとか楽天さんなど、プラットフォームになっていて、めちゃくちゃ買いやすいわけですよね。
一方で、ECサイトは個性あふれる場だとも思うんです。プラットフォームに出るのは大きなチャンスがあり、もちろんプラスなことなんですが、結局はそのルールに乗るというのは同じだと感じています。私は、それぞれのECサイトの個性が際立つ世界の方が面白いと思っているんですが、まさにそれが弊社のサービスであれば、タグを1行入れるだけで可能になる、それぞれの個性を世界に出していけるようになるんですね。
もうちょっと先の未来に関して言うと、店をリアルに作るのと同じようにインターネット上で物を売ることができれば、個性をどんどん発信できるような世界になっていくだろう、と。世界中のECサイトがそうして個性を出していけたらいいな、と思います。
そもそも、私たちは「世界中のワクワクを当たり前に」と言っていますが、買い物そのもののワクワクが、どんどん増していくような世界になっていくと楽しいだろうな、と思っています。ルールで縛られているよりは、そういう方がいいかな、と思っているので、そんなことも思い描いてます。
ジグザグ 仲里さん:
まさに、より良い社会というところが私たちがスタートアップとしてイノベーションを起こすところなのかなと思っています。
いま鈴木が言ったように「世界中のワクワクを当たり前にする」というのは、実はうちのミッションなんですが、このミッションは1年半前に書き換えたんです。私が一人でやっていたときは「クロスボーダーサービスで世界をハッピーに」というミッションを掲げていたのですが、これをもっとユーザー視点で「ワクワクを当たり前に」にしようと変更しました。
実は、このミッションに至るまでにある体験がありました。
アメリカに住んでるある親御さんからクリスマスの1週間前にオーダーが入り、オバケのQ太郎の全巻セットを注文いただいたんです。「子供がいきなりサンタクロースにお願いをした」ということでした。でも、あいにくニューヨークにはオバケのQ太郎が売ってなかったんですね。日本のサイトで探して、ようやく弊社のタグが入っているショップに行き着いたということでした。子供の夢を壊したくないから、絶対に間に合わせてほしいというメールが親御さんからきて、どうにかして現地の23日に届けられたんです。この時に親御さんからものすごく感謝をされたんです。
そもそも国境のハードルっていらないものじゃないですか。eコマースであれば普通のことなので、これを当たり前にしていくことが日々の生活を豊かにすると思っています。私たちの技術やサービス、弊社以外も含めてより良いスタートアップも含めた会社が、世界を便利にしていくことが大事かなと思っています。これを子どもたちも含めて、次の世代につなげていくことがより良い社会の実現に繋がるかなと思っています。
MIC 有賀:
少し前だったら「ちょっと難しかったよね」ということが、次の世代の子たちにとっては当たり前になっている時代、というのが来るんでしょうね。それを考えるだけでワクワクします!
お二人の口からジグザグの未来像を聞けて、本当に嬉しかったです。今後の展開を楽しみにしています。
改めて、本日は株式会社ジグザグの代表取締役仲里一義さん、そして取締役 Marketing Communication本部長の鈴木賢さんにお越しいただきました。お二人とも忙しいところ、最後までありがとうございました。
ジグザグ 仲里・鈴木さん:
ありがとうございました。
たった1行のJavaScriptを追加するだけで、世界中の人々に日本の商品を届けることができるという画期的なサービス。そして、それを通じて「世界中のワクワクを当たり前に」するという壮大なビジョン。ジグザグの今後の成長と展開に、ますます期待が高まります。
▶Podcast最新話はこちら🎧✨
MICでは投資先企業を紹介する公式Podcast番組「起業家のキモチ~シーズン4~」を毎週火曜日に更新中。ジグザグ仲里さんにご出演いただいた音源もSpotify、Apple Podcastなど各種プラットフォームからご視聴いただけます。仲里さんご出演の回:2021年EP9-EP10、2022年EP17-EP18-EP19
こちらもぜひ、お聞きください♪
▶モバイルインターネットキャピタル株式会社概要
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