不安症だってパニック障害だって関係ない『人生はよりよくなるためのチャレンジの連続』 2
これまでのお話し
2.自分の空間で機を織りたい
西陣の機が実家に届きました。
当然パーツごとに段ボールで届きます。
届いて思いました……この機を組み立てるのはとても大変(汗)
工房で見慣れているとはいえ、説明書を見ながらの組み立て。
でかいうえに重い部品もあります。
そして、パーツによっては接合部に同じ木材でできたくさびを打ち込むため、いったん組み立てると次に容易に解体できるとは思えない……。
届いたばかりの自分の機を組むというのはうれしい反面、覚悟みたいなものが必要でした。
「どうせ機を組むなら、自分が一人になれる空間がいいなぁ」
そんな思いがわいてきました。
実家は居心地がいい反面、両親からなにかと干渉が入ります。
甘えられる環境ではなく機織りは自立した生活の中で続けたい。
そんなこだわりがふつふつと心の奥に湧いてくるのです。
そう思いだしたら、また居てもたっても居られなくなってきました。
さぁ、それを実現するためには借りられる家を探し、家賃と生活費を稼げなければなりません。
修行を終えたタイミングで、海の見える見晴らしのよいエリアを訪れては聞き込みをし空き家を探していると、実家から車で30分ほどの程よい距離にある理想の空き家にたどり着きました。
一方仕事はハローワークに数回通い、こちらも運よくすぐ見つかりました。冠婚葬祭などの贈答品を扱うギフトショップでの販売員です。販売員は未経験でしたが正社員としての採用で安定した収入源を得て家を借りることができました。
庭から遠くに海を見下ろせる家。
工房で知り合ったドイツ帰りの機仲間が手伝いに来てくれ、説明書を見ながらああでもないこうでもないと数時間格闘。
そして日当たりの良いリビングに、無事に機を組み立てることができたのでした。
機織りだけでは生活することができなかったけど、生活費を賄える仕事を得て自分に向き合い生活を楽しむことができました。
季節を問わず思い立ったときに魚を釣りに行ったり、釣った魚を料理して肴に呑みながら、ものづくり仲間と夜遅くまで語り合ったり、新しい風に吹かれながら田舎の暮らしを目いっぱい楽しんでいました。
母との良い思い出にもなったのが、秋に染織の材料となる栗のイガやクサギの実を集めに、母娘で野山を散策したことです。
竹で編んだ長いかごを背にし、クサギの実を放り込んでいきます。
楽しかったぁ。
季節になり田舎のあちこちでクサギを見ると思い出す、忘れられない母娘の楽しく素敵な時間でした。(3につづく)