「うそコンシェルジュ」津村記久子
表題のうそコンシェルジュ、続うそコンシェルジュ以外は短編が九つ入っていて、全部で十一編の話がまとめられた本だ。全部が個性的で面白かったので、どうやったら端的に感想を述べられるかな、と思ったのだけれど、ふと思いついたのがタワレコのアルバム紹介のPOPであるような「オススメ曲は②③⑥⑧」みたいに書く方法で、私的な短編のオススメは‥と書き出すのを試みてみた。
どこか自分のことのように見守りたくなったのは②誕生日の一日や11居残りの彼女、特に優しい気持ちになったのは⑨買い増しの顛末⑩二千回飲みに行ったあとに、先がどうなっていくかワクワクしたのは⑦我が社の心霊写真
他に、読みながら書き溜めてた感想もあったので記載する。
第三の悪癖
音楽好きな津村さんの話の中でもオアシスが出て来るのってこれだけなのではないか。オアシスファンの自分からするとやっと出てきた!と歓喜でした。お皿を割る同僚の人が出て来るのだけれど、ヒステリックな様子なのかと思いきや淡々とお皿を用意して割っている。主人公と同僚の人が自然と支え合っている最後には胸をなでおろすような気持ちになった。
誕生日の一日
三人称一視点なようだが、視点主は主人公に「さん」という敬称をつけている。
<佐江子さんは、咳が空いている限りは必ずエツさんをその席につすようにしている。>
話には一切出てこない視点主の誰かは、主人公のことを常に見つめている。見つめている以上の、大切に扱っている暖かい目線を一層くわえている。
続うそコンシェルジュ
娘の部活の顧問を執拗にリコールしようとする母と対峙する。津村さんの話を読んでいると、時たまふとした時に誠実だと思える登場人物の人となりに勉強させられるときがある。
物事の解決のために自分の感情を挟まずに人の話を聞くことって立派だなぁと思ったり。
「この人にとっては、心配することはコミュニケーション方法の一つなのだ」
場当たり的であっても、その人が望む言葉をかけてあげれるって優しいなぁと思ったり。
「大丈夫ですよ 娘さんは必ずよくなりますし、きっとあなたのありがたさがわかる日も来るでしょう」
十一月後半〜十二月前半まで、新たな立場の人と関わったり新しい問題と向き合っていくのに結構時間を費やしていた間、布団に入って一日一編ずつ読んでいく感じがご褒美のようだった。読了とともにひとイベントも終了〜。