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「五月 その他の短編」アリ・スミス
図書館で二度の貸し出しを経て読んだので記録はちゃんと取ろうと思った。この本は貸出してもすぐに次の予約が入る。一度目に、延長しておくのを忘れて余裕をぶっこいていたらすぐ返却日を迎えてしまったので、今度こそはと特に好きだった部分の感想を書く。
地下鉄構内で死神とすれ違う「生きるということ」
すごい面白かった。というのは恐らくみなさんもつ感想なのでしょうが、一読しただけでも話を思い出すことができる話というのはなかなかない。
大事な部分には触れずに語り切るのでとても余韻がある。死神が着ているスーツが恥いるように色の淡いスーツなのと、深夜のスーパーの描写が特に印象に残った。
バグパイプの楽隊につきまとわれる「スコットランドのラブソング」
なんでバグパイプの楽隊が?という疑問がひたすらついて回る話で本当にわからないんだけど、家の中の描写が、私なりのスコットランドの民家のイメージの中で楽隊が暴れ回るのが映像のように浮かんで面白かった。
美術館で美術館員を装う「ショートリストの季節」
オチまで読むと、やれやれなんてくだらん話だ、と思った。美術館アレルギーのくだりは特に笑える。
自分にとってはなんだか自分が書いたと思ってもおかしくない思考回路の人間の話で、その人のたった一時間くらいのことを切り取ってそのまま書いただけの話なのに、短編の中でも特に親近感があるゆえに、価値のある話だと思った。
題名のショートリストとは?と思って調べてみたが、日本では、有力な候補先をピックアップしたリスト指すとのこと。何が話の中のそれを指すのかというのは、物事に対しての認知を一つに絞らずに膨らませている様だろうかと思った。
大雪の中家から締め出し、締め出される二人「始まりに戻る」
人の普遍的な孤独と、はたまた別の場所にある、愛情がよく伝わるかたちで描かれているところがよかった。情けというかあわれというか、人間味、というのかなと私は思ったんだけれど、それを感じさせるのを最後に持ってくるあたりが、好きだなぁと思った。