「火星人ゴーホーム」フレドリック・ブラウン
市立図書館の電子書籍サービスで、フレドリック・ブラウンの本が二タイトルだけ貸出できるようだったので、そのうちの片方を借りて読んだ。
スマホで本を借りて読むのが実は初めてで、なんか目が痛くなりそうとか思って自分は紙の本派だと思っていたのに、使ってみたらスマホはスマホでめちゃくちゃ便利だった。お風呂でも、電車やバスでもすぐ開けるし、分からない熟語があればその場でネットで調べられるし、本文の検索もできるのね。この記事を書くのにも、検索を使って記憶に残ったワードを遡れたし便利でかなりいい。
けど、本はやっぱ紙の本で買って読んだら本棚に並べて眺めるのも好きだなぁ。お風呂上がりとかに、夜風に当たるのに窓を開けて本棚を眺めるのが好き。
こちらの話の感想について。
まずタイトルだけだったら自分では選ばないだろうと思ったけども、読んでみたらすごく面白かった。津村さんのトーク会でフレドリックブラウンの作品を熱弁されていたのがきっかけ。
話の軸になるSF小説を書く小説家が、スランプからの脱却のために離れ小屋にこもった途端に、火星人が全世界に大量に押し寄せる。人間を挑発して苛立たせたり、嘘を暴露したり、恥をかかせたりするのがたった一つの目的の火星人は、世界をめちゃくちゃに掻き回すのだけれど、それがいちいち実際に有りそうなことばかりなので、読んでいるとこの世界に入り込んでいく。
例えば人が火星人が現れた驚きと恐怖のあまり事故を起こして死ぬ、なんて単純なことに留るわけじゃなく、夜も部屋に居座ることで世界中の男女が困ったり、国の機密を暴露させられて戦争できなくなって軍が解体になったり、演劇が邪魔されて作品が作れなくなったりする。それが壊滅に繋がるものもあれば、何かを救うことになることもあるのがまた目を離せなかった。
そのように人類を疲弊させる火星人を退散させる方法を通じて、火星人は何者なのか、というテーマに行き着く。主人公を含めて四人の人間が、演説、悪魔祓い、科学技術、それから小説家の”意識の再構築”で、それを執行するときは、読んでいてどれも信憑性が無さすぎて困った。
だけどこれだけ語られている火星人はやってきているのは確かで、それに対抗する人間も地球上に溢れていて、そして最後に火星人が去っていったのは確かなはずなのだけれど…。
どの方法で消えたのかというのは、著者のあとがきではっきりと解説されている。それは、出版主に「はっきりさせてくれ」という手紙が届いたからというわけだが、著者はそれを不条理と言いながらも教えてくれている。
教えてもらったのはいいが、作中で露わになった、人の生活の営みや政府の脆さ、”悩みといえば死と税金と水素爆弾しかなかった、古き良き昔”(つまり火星人が来る前)を望む人々の矛盾などを、見せつけられてしまった後だと、「そうなんだ」とだけでは終えられない。それに加えて、それはもう一つ、全てを揺るがしてしまう問題を読者に提示することにもなって、なんだか火星人よりも前に地球人が厄介だな、と思った。