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箱を解く

・ああ、ああ、ブログの向こう側であんなに見つめたあの娘が、目の前に。

・中古人形店にて、まさかの未開封で出会ってしまった、DALのコラルちゃん…2007年発売。
一緒に2007年頃発売のフララやロットちゃんが並んでいて、時が遡ったのかと思った。

16年もの間、大切に未開封で飾っていたのだろうか。物持ちの良い人がいたものだ。それにしてもここにあるということは、それが本人か残された人かはわからないけど、価値のわかる人間によってちゃんと手放せたんだろう。よかった。

・2007年…当時私は13歳で、コラルとアクエルが発表されてから発売されるまでずっときらきらした目で見ていて。
今はもうサービス終了してしまったヤプログってブログサイトで、大好きなブロガーさんたち(…インターネットに生きていた私には、往々にして精神を病んでもいた彼女たちこそが、憧れのアイドルのような存在だった)が、開封儀式やお人形遊びの写真を載せるのをずっと読んでいた。

彼女たちは私にとって叶わない夢そのもので、美しい夢で。
大人になった私はぶっちゃけアクエル嬢のほうを大人の財力で開封済みの子や衣装などを買ってしまったりしたんだけど、かがやくものに溢れたこの未来では彼女をきちんと愛し切ることができず、手が届かない星のままである方が良いこともあるのだと思い知るばかりだった。

・未開封の箱のあの独特の頑丈な梱包を解きながら、動画も回さないごく小規模で個人的な「開封儀式」をやりながら、ああ、この面倒な過程が私にとってきわめて大切な"回復"の手続きだったんだな、と思った。
当時は惜しいなあとわからなかった眉上前髪も薄いメイクも、今ならそのうつくしさがわかるよ。すべてが完璧。

・書ききれない、伝えきれない、そうできるはずがないのだ、ありふれた他人のうちのひとりの人生にあった、ちいさなきらめきのことなんて。そして、それはまったく不幸なことではない。
大きな歴史の流れから見れば私など、何も残せない、何者にもなれない。それでいい。生きているから!

…もちろん、そういう私の名を挙げて、彼女のように残せなかった彼女のようになれなかったと言う人がいることも知っている。こんなにささやかな人生が、まるであのブロガーさんたちのように、かがやいて見えている少女たちもいるのだろう、きっと。私がそこにいたように。
思いを馳せる。
かけがえのない、個人的な人生。たくさんの。こんなに。こんなに。

個人的な幸福というものを、ずっと疎かにしてきた。
とびきり愛そうと思う。これからは。

・会えてよかった。

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見るな
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