見出し画像

「パラサイト 半地下の家族」長く陰気な感想(考察)#パラサイト半地下の家族

・タイトルと「幸せ 少し いただきます」のキャッチコピー、何より不安を煽るポスターなどのヴィジュアルが美しくて、すごく期待していた今作。

そのまんまなネタバレは避ける方向ではありますが、それでも「観てから」読んでください。
この地点までくらいの、公式も公開している情報だけを見て、好きそうだな…と思ったら、そのフィーリングだけで観てください。

と言った意味が、観ればわかると思います。とても好きだったので、みなさんにもぜひ何も知らずに観てほしい。
これは既に観た人とはしゃぎたいだけの記事。
※私が観に行ったのは年始です



・面白かった!
評判がすごくいいということと、ヴィジュアルくらいの前情報だったので、ひたすら暗い映画?それともホラー映画だったりするのかな?と予想していたら…体験型アトラクションでしたね!!MADMAXfuryroadとか大好きで映画館で5回ぐらい観たので、パラサイトもそういう意味でも超大好きなやつだった。
ビックリ系じゃないのにめちゃくちゃ怖くてよかったね…直後の展開はだいたい予想つくようになってるのにそれでも怖い…。

・個人的には、ジェシカの話が出された地点で、もう十分ラッキーなのになぜ危ない橋渡ってまでそんなことを!?ってなっちゃって結構ずっと呆気に取られてた。留学中の代打だけじゃ持続性のある収入じゃないにしても、みんな各々に就職できたあたりで止めていればこんなことにもならず十分幸せだったんじゃ…。
部屋にあった額縁の安分知足、すなわち「足るを知る」がこの映画のテーマだ、なんて話も出てくる。
でも…、そういう発想自体が実は恵まれてる側の厚かましさ、想像力のなさであるような気もする。いや、私は全然お金ない人だが…。
分相応に生きるべきだった、なんて他人が言えることじゃないよな。
地下(貧困)臭いからという根拠で、金持ちから"度を過ぎるな"とお許しを受けられる範囲でしか幸福になれないなんて、ふつうにメチャクチャ腹立つ。全て奪い取ってはじめてフェアだ、という考え方もまた、それはそう、かもしれない。
お金の話ではないけど、私も生まれ持った「ずれ」のことでよくそう考えることがあるから。異常者だからという根拠で、ふつうに生まれられた人間から"度を過ぎるな"とお許しを受けられる範囲でしか幸福になれないなんて。全て奪い取ってはじめてフェアなんじゃないか?奪い取るなんて表現もおかしい。
まさに、不当に傾いていた幸福の天秤を正すだけのことだよ。

・一番最後の終わらせ方、映画を見終わった後から今でもずーんと引きずっている。すごくいい。好きです。

・凄惨なるあのシーン。おいお前、と肩を掴むぐらいの咄嗟の感覚でそれをしてしまった、まさに「夢の中のような」感じが本当に生々しかった。いや、経験はないのだが…。例えば、テーブルからグラスが落ちて、考えるより先に手がさっと動いて掴み取って、その後になってああ!ヒヤヒヤした!と驚く、まさにあの感じ。一瞬、理性の結界が緩んで、身体が勝手に動く。それが取り返しのつかない結果を作り出したことを、しばらくのちにやっと気付く。

・それにしても、ラストの彼、あんな息苦しい地下で何年もの間一方的なランプの明滅だけを唯一の外界とのコミュニケーションとして生きなければならないくらいなら、地上に出て然るべき裁きを受けた方がまだ良かったりしないか…?
と考えたところで、私の今の暮らしと彼の生活との間にどこまで距離があるんだろう、とよぎってしまった…。

クラリッジ先生のことを思い出す。火災事故で身体を失って、脳だけ機械に移植されている。その機械には声も腕もなく、6つのランプの点滅でだけ外界とコミュニケーションを取ることができる。そういう、とある作品のキャラクター。最後にはランプの電池切れに気付いてもらえず、誰もになぜ無視するんだと怒鳴られ、見捨てられて、そのまま「死ぬ」。
若く輝かしいはずの今を、何年も部屋に一人引きこもって費やし、求められてもいない文章を書いてはしきりに通知欄を更新して、誰かがたった一言私を呼ぶのを待ち続けていると、思い出す。

クラリッジ先生、彼、私、何が違うのだろう。ランプの明滅がわずかに複雑であるだけだ。


おわり。

生きてる いのちって最高♪