思い出のりんごカスタードたい焼き
誰しも、忘れられない味とか、思い出の食べ物ってあるんじゃないかな。
決して特別な料理じゃなくても、あの人と食べたな〜とか、あの時あんな話をしていたよなとか。
思い出すと懐かしさで心が少しきゅっとなったり。
そんなことを考えながら読んでいたのが、益田ミリさんの『最初の、ひとくち』。
私の忘れられない最初のひとくちは、りんごカスタードたい焼き。
母校の学食では、時々クレープやワッフルなどのお店が出張でやってきていた。空きコマに友だちとおしゃべりしながら過ごす時にちょうどいいおやつで、中でも友だちとよく食べたのがたい焼きだった。
普通のあんこやクリームの他に、限定の味もあって、私の心を掴んだのが大学1年生の10月頃食べたりんごカスタードたい焼きなのだ。
初めて見た時は「りんごカスタード!?絶対おいしいに決まってる!」と1人ではしゃいでいたのを覚えている。
普通の味が100円で買えるところ、りんごカスタードは120円。他のものよりちょっと高い(と言っても今考えるととってもお安いけど)あたりがまた特別感があったんだよなぁ。
ふんわりあったかいたい焼きと、りんごの甘酸っぱさとカスタードの甘み。
今まで食べたたい焼きの中で一番おいしい!と大興奮したくらいにはおいしかった。
また食べたかったんだけど、りんごカスタードはなかなかメニューに登場してくれなくて、私の中ではすっかり幻のたい焼きになっていた。
もしかしたら私が見ていないタイミングではやってきていたのかもしれない。
たい焼き屋さんが来ていても、授業がびっしりある日だったり、課題に追われていてみんなでおやつを食べる余裕がなかったりする日もあったから。
結局、その後1年生の間、りんごカスタードたい焼きには一度も出会えなかった。
2年生以降になると、ほぼ必修だらけの学部の授業が一気に増えるので、たい焼き屋さんがやってくる学食には行く機会が少なくなった。
でも時々「あのりんごカスタードたい焼き、人生で一番おいしかったな〜〜〜」なんて思い出すくらいには、りんごカスタードたい焼きが忘れられなかった。
絶対、もっと他にもおいしいものたくさんあるのにね。なぜかりんごカスタードたい焼きは私の心にずっと残っていた。
そして、大学4年生になって久しぶりに寄った学食で、なんとりんごカスタードたい焼きと再会したのです。
「わぁぁぁ、りんごカスタード!!!」と嬉しくて嬉しくて、うきうきで買ったのを覚えている。
念願のりんごカスタードたい焼きは、おいしかったけど、正直そこまでの感動がなかった。
どうしてあの時はあんなにもおいしいと感じたんだろう?まぁもちろんおいしいけど。くらいの自分の温度感にがっかりしてしまった。
思い出の中でハードルが上がりすぎたのかもしれない。
でも、きっと、「大学1年生」だったから、あんなにおいしく感じたのかも。高校生と比べると一気に自由度が増して、サークルで帰りが遅くなったり、友だちとご飯食べて帰ったり、ありとあらゆるものが新鮮で、友だちとの何気ないおしゃべりもとても楽しかったから、特別な味に感じたのかな、なんて今考えている。
大人になって、自由に使えるお金も増えて、おしゃれなランチや素敵なスイーツも食べられるようになったけど、100円台のおやつで十分楽しめたあの頃がなんだかとっても愛しく感じるのです。
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