沖ツラ 勝手に番外編 『南の島に降る雪』
「さっぶ!!なんで沖縄なのに今日はこんなに寒いの⁈」
中村照秋ことてーるーは、玄関を出るなり凍える。
「絶対コートなんていらないって思ってたのに、12月始めからこんなに寒いなら、お正月はヤバいかもな」
ぶすくさ独り言をいっていると後ろ声をかけられた。
「あい!てーるーおはよー!ちゅーや、むるひーさんやー!」
「てーるーおはよう。今日は取っても寒いね。って。」
てーるーの同級生の方言を話す喜屋武ひなと、てーるーに恋心を抱く比嘉かなだった
「おはよう。今日は寒いねー!って喜屋武さん北海道にでもいくの?その格好??」
「あい、てーるー、うちなんちゅは寒いのが苦手だわけさ、マフラーもするし上着も着るさー」
「そ、そうなんだ。比嘉さんはそんなに厚着じゃないね」
「わ、わたしは、その、部屋に入ったら暖かいし上着は邪魔になるし、上着って言ってもコートとかカーディガンだからね。」
(本当は寒くて、手袋もコートも着たいけど、着膨れして、ミシュランマンみたいになったらいやだから…)
「あはは〜そうだよね。なかなか着る服には困るよね〜。」
「てーるーはお正月は内地に帰るのー?」
丸々と厚着をした喜屋武さん
「いやぁ、親も沖縄きてるし、こっちにいるよ」
「じゃあ、クリスマスも初詣も一緒にやろうね〜」
「え!喜屋武さんと、クリスマス…初詣…」
「かーなーも、みんな呼んでからに、楽しいはずよー」
「そうだよね!みんなと一緒が楽しいよね…」
「コラ、少年!またスケベな事考えてたでしょ!」
「いや!僕はそんな、決して喜屋武さんのミニスカサンタや着物姿を想像なんて…って、みーこさん⁈」
驚くてーる。
「あいー!みーこネーネー!グソーから帰ってきたのー!?」
「本当だ!みーこネーネーだ!久しぶりだねー!」
テンションが上がる喜屋武さんと比嘉さん。
「こらこら、人をマジムン扱いするでない。まぁ、似たようなものか(笑)」
「なんでー?まだお盆もシーミーも早いよ〜?あい!クリスマスプレゼントあげにきたのー?」
目を輝かせる喜屋武さん
「言うと思ったよ、はい!ちょっと早いけどクリスマスプレゼント『の』まんじゅう!」
ずっこける3人…
「みーこネーネー、今時、高校生にまんじゅうはウケないよ」
冷静な比嘉さん
「やなわらばーたーや!人から貰うものにケチつけたらダメよ。ひーなは背が伸びなくなる、かーなはオッパイがペッタンコになる魔法かけるよ」
「てーるーには、そうだな…一生、恋が成就しない呪いだなぁ(笑)」
「みーこネーネー、それだけは許して〜」
懇願する3人
「ちゃんと人から頂いたものは、文句いわず感謝気持ちを込めてありがとうございます。しなさいよ〜」
「はーい、ごめんなさい」
「じょーとー。おりこーおりこー」
「それで、みーこさん今日はどうしたんですか?」
「それがね冬休みだから沖縄にきて、暖かくのんびりしようと思ったら、寒いのなんの」
「長年住んでいるみーこさんでも寒いんですね(笑)」
「てーるーは内地からきてるから寒さには強いんじゃないの?」
「自分もそう思ってました、気温自体は内地より高いんですが、風が強くて、風速1メートルにつき体感温度が1度さがるみたいで、下手すれば内地より寒いんです」ドヤ顔
「へぇ〜へぇ〜へぇ〜」
納得する沖縄勢
「だからよ〜ひーさぬガダガターよ〜」
震える喜屋武さん
「こんな時はみんなでお鍋を囲んで食べたいね」
てーるーのナイスな提案
「お、いいね〜。なら、熱燗かな〜泡盛のお湯割もいいね〜」
「みーこネーネーお酒ばっかり(笑)体壊すよ〜」
ツッコむ比嘉さん
「ぎく…そーいえばC判定…」
「お化けにも身体壊すとかあるんですか…?」
「てーるー大人には色々な事情があるの、君も大人になったら分かる時がくるから…って誰が神出鬼没のチェシャ猫よ!」
「いや、そんな可愛いものじゃなく…」
「あい、てーるー、めーごーさーしようかね〜」
「いやいやいや、そんな事ないですよ、ほら!ピンチになった時にはいつも助けてくれる、昔でいうセーラームーン的なヒーローですよ」
「昔…全然フォローになってないけど、良しとしよう」
「ところで、てーるー、ひーなー、かーなーは『大切な人』はいる?」
「僕は、その…あの…きゃ…」
モジモジするてーるー
すかさず喜屋武さんが
「ウチはねー!オジーとオバーとオトーとオカーとかーなーとタカシおじさんとスエコおばさんと川満せんせーと全員!」
「そうだね、いい答えだね。かーなーは?」
「私も家族と友達かな(てーるーが1番って恥ずかしくて言えない)」
「みんなはその『大切な人』がいなくなったらどう思うかな?ある時、急に明日から会えなくなったとしたら?」
「凄く悲しい気持ちにらなります」
「ウチも嫌だ、考えても泣ちぶさーする」
「私もイヤ、急にとかなんて考えられない」
「そうだよね、私だってとても悲しいし、できるなら。そんな事にはなって欲しくないよ」
少し真面目な顔をして続ける。
「てーるー達も、もう高校生だからね。少しだけ、『生きる』と言う事を考えてほしくて、コッチにきたんだ」
「みーこさん、生きる。って、別に僕たち健康だし、まだ全然若いから大丈夫ですよ」
不思議顔のてーるー
「そうだね、てーるー達はまだ若いし、いなくなる。って言うのは想像しづらいよね」
「みーこネーネー、それは誰かが亡くなるって事?」
「かーなー、良くわかったね。そう言う事。人は歳をとってオジーオバーになっていずれは亡くなってしまう。これはわかるよね、寿命というもの」
「みーこネーネー、オバーオジー亡くなるの?」
涙顔のひーなー
「大丈夫、亡くならないよ。でも寿命は誰にでもあるの。それは悲しい事だけど、それをみんな受け入れながら次の子供達に繋いでいっているんだよ。」
「でもね…寿命とは言えない事で命を落とす人も世の中にはいるんだよ」
「運命と言えば簡単に収まるようで、絶対にそれは運命とは言わない。とても悲しくて苦しい事、」
「それは…?」
「てーるー、それはね、自殺というものだよ。」
「この話は怖い話だけど、良く聞いて欲しい。とても大切な事だから…」
「てーるーや、ひーなー、かーなーがこの先、学校や友達関係、もしかしたらイジメや、将来の進路で、悩んで。悩んで。悩んで。誰にも言えなくて苦しくて、独りぼっちに感じる事があるかも知れない。もうダメだ。こんな世界に居たくない。自分なんてどうでもいい。死にたい。」
「そう思う時がくるかも知れない。もしかしたら今、別の友達がそうなってるかも知れない。」
てーるーが口を開く
「僕は1度も死にたいと思った事ないですし、友達の話も聞いてるし、ポテチ食べながらゲームしてたらストレスも発散できます。」
「てーるー、私もそう思ってたんだよ。でもね人間、自分が思っているより強くないの。」
「てーるーやひーなー、かーなーのように優しくて明るて元気な人ほど…知らずにストレスを貯めてしまうんだよ。って、3人は大丈夫か(笑)」
「えー!みーこネーネーびびらさんでー」
泣きそうな喜屋武さん
「みーこネーネーも、死にたいと思うことあったの…」
不安げに聞く比嘉さん
「私にもあったよ…。自分なんか居なくなっても誰も困らない。つまらない世の中、終わりにしたい。って本当にそう思ってた。」
「だけどね…。そう思っていた時に、私の大切な人がね病気で亡くなったんだ。病気になってから半年も経たずに。まだ小さい赤ちゃんもいたのに…」
「その大切な人が、生前にずっと『絶対存在』が欲しいって言ってたの。初めは意味が分からなかった。」
そしたら…
「俺は父親が居なくて母親とで、兄妹で暮らしていて、母親はずっと仕事で、歳の離れた兄弟も家にあまりいなくてずっと寂しかった。だから、ずっと俺を愛してくれて、愛させてくれる『絶対存在』を見つけるのが夢だ。ってね」
「誰よりも優しくて、私の事を私以上に気にして、いつも誰のために動いて、誰より涙する良い奴だったんだ。その彼がようやく『絶対存在』ってのを手にいれた時に病気になってね」
「ドラマで見るようにどんどん痩せていったよ。最後に言われた言葉が、」
「お前と親友でよかった。恋人だったらずっとは居られなかった!」
だったんだ…
「彼の葬儀に参加してね。全然泣けなかったのに、全て終わってから涙が止まらなくて、こんなにも『大切な人がいなくなる』と言うのは辛くて苦しいって思えて、それから彼の分まで生きようって思ったんだ」
涙でグシャグシャの顔のひーなーとかーなー
「みーこネーネー…」
「ま!だからさ、今生きている事が当たり前じゃなくて、もしかしたら明日事故に会うかもしれない。大切な人がいなくなるかも知れないから」
「ちゃんと自分の命を大切にして欲しい。どんなに打ちのめされても、絶望になっても。君達を想ってくれる人がいるから『自分のため』『自分を想ってくれる人のために』生きようね。」
泣き顔のてーるー
「分かりました…当たり前だと思う日々を大切にします」
「てーるー、ガチガチになったらつまらなくなるからね(笑)頭の片隅に置いておくだけでいいんだよ」
「みーこネーネー。ウチも友達が泣いてたら助けてらあげる」
「ひーなー、まずは自分の心からね。自分に余裕がないと相手の心は見えなくなるからさ」
「私も落ち込んじゃうのかな…」
「かーなー、誰でも落ち込んじゃう時はあるから、無理になんとかしようとしないで、楽しい事を思い出して、じっくり待つのも大事だよ」
涙する3人を抱きしめた。
…
ポツポツ…
「…空からなにか降ってきた…」
てーるーが空を見上げる、
「これは…雪、雪だ!まさかココ沖縄だよ⁈」
「あぎじゃびよい!でーじ!」
「うわぁ!私、雪見るの初めて!!」
いっきに明るくなる3人
「みーこネーネー!凄いよ、雪だよ!って…あれ、みーこネーネー?」
(アイツが夢で待ってるから行こうね〜。風邪ひくなよ〜)
「あーぁ、また行っちゃった…」
「ほんと、あの人は不思議な人だね」
「また逢って話がしたいね」
「あの人の事だから、ふらっと会いにに来てくれるよ」
終わり
『もうダメだ』って思ったら
誰かに助けを求めて、必ずあなたの手を掴んでくれる人がいるから。
私はあなたを愛してます。
3人にあげた「の」まんじゅう
昔話
挿入歌