側にいて
※曲を再生しながら聞いてもらえると嬉しいです。
久しぶりに彼女の香水の匂いを感じた。
ずいぶん懐かしい気がする。
嫌いになる。とか別れたい。とかそんな気持ちはそうそうにない。
…ない。
と、
思ってる。
10何年も一緒にいるんだから互いの距離感はわかっている。
分かっているから、少しずつ離れていった。
手を繋いで歩く事も億劫になり、
会話もありふれた内容しかない。
別にそれでお互いが上手くいっているならそれでいい。
そう言い聞かせた。
「久しぶりにその匂いをしたよ。」
「たまにはね。」
あの頃は良かった。どうしてこうなったのか。
歳をとったのか、環境が変わったのか
悩む事もあった気がするけど
考えても仕方がないから、悩むのをやめた。
2人でしか出来なかった事を1人でもできるようなにしたら、案外楽になった。
「明日飲みにいく?」
その日は
歩いてイタリアンを食べに行った。
暑かったのと、仕事もパッとしないストレスからか飲みすぎた。
「ビールが美味い」
「疲れてるね」
馴染みの店だけど、閉店とか噂もある。流行り病でずいぶん飲食店が潰れた。
「だんだん遊び場もなくなってきたね」
「部屋飲みしてもいいよ」
「そうだね」
もう抱かないと決めた彼女を家にあげても自分が面倒くなるだけだし。
「帰るか」
「そうだね」
美味しい物も楽しい時間も楽しい時間だけで終わった方がいい。
「ただいま」
「おかえり」
「今日、寂しそうだったね」
「少し 寂しい」
「ごめんね。私、もうおばぁちゃんだから」
「謝るな。俺はおれだから」
「うん」
「蜜柑を 幸せにする」
「ありがとう」
よく朝、裸でベッドで目が覚めた。
スーツを脱いで寝落ち。
頭が痛い。猫が鳴いている。
頭痛薬とご飯準備
「おはよう」
生きてる報告
自分で寝落ち前に送った
「幸せにする」に笑った。
まだ、ちゃんと好きなんだ。
「Twitterだったら消してたな」
この先、楽しい事よりも不幸の事が多いかもしれない。
まぁ、自分で決めた道。
見送ったら、若い女の子でもつかまえるさ。
明日も晴れるだろう。
暑いのはイヤだね。