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肥溜めシンドローム
朝が来るのがキライだった。
朝が来るとママが帰ってくる、タバコの匂いと知らない男を連れて。初めは楽しそうに笑っているのにしだいにママが泣くのが不安でたまらなかった。
男は私が起きる時間になるといつもいなくなる。テレビの部屋にはタバコの吸い殻とお酒の空き缶、そして白濁したティッシュ、私は学校に行く前にそれを片付けるのが死ぬほどキライだった。
私にレシートまみれの1000円札を渡してママは「愛してるよ。いってらっしゃい。」トイレとキスをしていた。
学校もキライだった、友達なんかいらないし、先生も綺麗事を言っててもママみたいなると思ってたから。
中学生になるとママの泣き声が分かった。いや、本当は最初から分かってた。心底気持ち悪いと思った、知らない男を触った手で私の髪を触ってほしくなかった。
私はグレる事も真面目でいる事も出来なかったけど、「良い子」でいる事だけは得意だった。なんとなく毎日を過ごして、早く大人になってこの家から出て行きたかった。
高校は行く気はなかった、珍しくママが高校だけは出ろって言ってたから行ける所に決めた、だって私良い子だから。
ママの彼氏が家に住み着くようになった。タバコをふかしてテレビを見ている。私は好きな番組があったのにつまらないお笑いばかり見ている。
口を聞く事はなかったけど私が部屋で寝ている時、男が私の上に被さってきた。私は怖くて動けなかった。ママがドアを開けて男を蹴り飛ばした。すごく怒っていた。男は「冗談だよ」って笑っていたけど、本気だったっ思う。久しぶりにママの真剣な顔をみた。少し安心した。それからその男が家にくる事はなかった。
バイトを始めた。ママは少し悲しそうな顔をしてた。お金が欲しかったわけじゃないけど、家にいても1人だったし暗い部屋よりは、おままごとのような仕事場の方がまだマシな気がした
私と付き合いたいと言う男が現れた、同じバイトの男の子だった。別に嫌いじゃなかったから受け入れた。1か月もしないうちに一夜を共にした。吐き気がするほど気持ち悪かったけど相手が喜ぶならそれでいいと思った、2日後、彼は「お前の事が本当に好きか分からない」そう言って私に別れを切り出した。正直、とても嬉しかった。これで自分以外の人に気を使わなくてすむ。
仕事先にで顔を合わせるのも嫌だから、バイトを変えた。高校を卒業する時、先生から大学進学を進められたけど、そんなお金はないし。やりたい事もないから諦めた。
高校卒業と同時に家をでた、変わらずママは違う男に抱かれていた。念願の1人暮らし世界は明るくなるはずだった。なにかと問題に巻き込まれ弁解するよりも辞めるほうが楽だった。しいて言えば私を引き留めてくれる人がいたから救われた。
人に誘われ、夜の仕事に入った。保育園の匂い、白濁の匂い、タバコ、酒。肥溜めのような家を思い出した。すぐに逃げた。電話が鳴り止まないから、翌朝すぐ携帯を変えた。
久しぶりに家に帰った。部屋がきれいに片付いていた。ママは起きてテレビの部屋で知らない男と話をしていた。
ママが「話したい事がある」と言って私を一緒に座らせた。
「この人と結婚するの。今まで寂しい思いをさせてゴメンネ」
…
…
「良かった!ママが幸せになってくれたら嬉しいよ」
(違う、違う、ママ違うよ。ママは朝帰ってきて知らない男に抱かれて、私が後片付けをして家をでるの。それが我が家でしょ?どうしてシンクが片付いてるの?タバコの吸い殻は?あのクソみたいな白濁のティッシュはどこへ言ったの?もうトイレから愛してるは言ってくれないの?)
式はあげないらしい、どうでも良かった。
ただ、
もっと早く、これが現実ならよかったのに。
…
…
「ねぇパパ…
今夜ママがいないときに…」
etc.
フィクションで〜す(笑)
なんかダークなお話を書きたい気分でした。
ちょっと、味変ならぬ読変で面白い気がしませんか(笑)