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[カレリアの口承伝統] ことば遊び:バターを食べたのは誰?(Ken šöi kešävoin?)

以前紹介した「おんどりとめんどり(KUKKO TA KANA)」というつみあげ歌と似たようなことば遊びです。

バターを食べたのは誰?

バターを食べてしまったのは誰?
ー バターを食べたのはネズミだよ。
ネズミはどこ?
ー 納屋の下さ。
納屋はどこ?
ー 火が燃やしてしまったよ。
火はどこ?
ー 水が流し去ってしまったよ。
水はどこ?
ー 雄牛が飲んでしまったよ。
雄牛はどこ?
ー 草地だよ。
草地はどこ?
ー オンドリがついばんでしまったよ。
オンドリはどこ?
ー トウヒの森さ。
トウヒの森はどこ?
ー 斧が切ってしまったよ。
斧はどこ?
ー 切り株の上さ。
切り株はどこ?
ー クマが持ち去ってしまったよ。
クマはどこ?
ー 9つの海の向こう側さ。

Ken šöi kešävoin?

Ken šöi kešävoin?
– Hiiri šöi kešävoin.
Missä hiiri?
– Aitan alla.
Missä aitta?
– Tuli poltti.
Missä tuli?
– Vesi vei.
Missä vesi?
– Härkä joi.
Missä härkä?
– Niityllä.
Missä niitty?
– Kukko n'okki.
Missä kukko?
– Kuušikošša.
Missä kuušikko?
– Kirveš leikkai.
Missä kirves?
– Kannon piäššä.
Missä kanto?
– Kontie vei.
Missä kontie?
– Yhekšän meren takana.

出典

所蔵:フィンランド文学協会(SKS)
採取地:カレワラ地区のヴェネフヤルヴィ(現ヴオッキニエミ)村
Pertti Virtarantaによって採取。

※タイトル画像:Rudolf Koivu(1890–1946)

つぶやき

けっこう有名な言葉あそびで、フィンランドの昔のABCの本にも載っています。バターを食べたのはネズミではなく、ネコの場合もありますし、斧はクマが持っていってしまったのではなく、鍛冶屋の壁のふもとに落ちている場合もあります。数え歌などが地方によって微妙に、一部だけ異なっていたりするように、それぞれの地で語呂よいものが採用されていったのでしょうかね。

ちなみに単にバターと訳した「kešävoi」、夏に仕込んだバターのことです。しかも、格の形を見ると、夏の間に仕込んで作ったすべてのバターが食べられてしまったようです。相当な食いしん坊ネズミさんですね。

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