好きなセルフタイトルアルバム・セルフタイトルについて
セルフタイトルについて
自分(たち)の名前をそのままアルバムタイトルに採用する。
それがセルフタイトルアルバムです。
キャリアの中でも基本的に(Weezerは例外)一度しか使えないネーミングであり、
それゆえに使いどころを選んでリリースされているような印象があります。
では、その使いどころとはどこか。
主に、
デビュー作。これが自分(たち)だよ、という紹介の意味。
自分(たち)のスタイルをもっとも表していると考えられる作品。
逆に、新しいスタイルを創造しているときに。自分(たち)を再定義する意味。
上記のような感じでしょうか。
セルフタイトルアルバムと二枚組アルバムとコンセプト・アルバムはキャリア内で一枚は出しておきたいですよね(そうだろうか…)。
好きなセルフタイトルアルバム
ではここから、筆者が好きなセルフタイトルアルバムを挙げていきます。
セルフタイトルアルバムばかり集まることで、何かが見えてくるかもしれません。
The Beatles / The Beatles
一番有名そうなやつです。通称・ホワイトアルバム。
ビートルズのキャリアの、中ごろから終わりごろあたりに発表された作品で、録音技術が進化したことで逆にメンバー間に亀裂が入った(メンバーが揃わなくても作曲できるようになった)時期と言われています。
バンドサウンドが減り、代わりにメンバー個人個人の宅録的なサウンドの作品が多くなっています。
先に挙げた定義でいうと、一番当てはまるのは「自分たちの再定義」ですが、この状態こそがビートルズなんだよ! という意味で「自分たちをもっともよく表す」という意味合いも近そうです。
ちなみに2枚組でもあります。
Bob Dylan / Bob Dylan
ディランのデビューアルバムです。先の定義でいうと「自分の紹介」ですね。
この時点でのディランはフォークシンガーであり、弾き語りが基本です。
もともと荒々しい歌い方のディランですが、このアルバムではさらにあらくれており、ほとんど酔っ払いの叫びのようです。
このボーカルスタイルはのちにはあまり見られないので、貴重といえば貴重。
Jackson C.Frank / Jackson C.Frank
英国のシンガーソングライター。ポール・サイモンの友人らしいです。
デビュー作だと思うので定義は「紹介」。
とにかく1曲めの"Blues Run the Game"が好きで、素晴らしい歌とギターを聞かせてくれます。
(フォーク期のディラン同様、自作曲の弾き語りがメインです)
なぜか冬に聞きたくなるアルバムです。季節を連想させた時点で勝ちですよね…
Paul Simon / Paul Simon
サイモン&ガーファンクルのサイモンことポール・サイモンがソロデビューしたときの作品です。
ソロデビュー作なので、「紹介」と「再定義」が混じった感じでしょうか。
デビュー時のディランやジャクソン・C・フランクがフォーク・ブルースの弾き語りに留まっていたのに対し、ポール・サイモンは様々な音楽の影響を折衷して自分の表現にしている感じがします。
例えば、1曲めの"Mother and Child Reunion"はレゲエの影響を受けていますが、ゴスペルっぽさもあります。
サイモン&ガーファンクルでの経験値ももちろんありますが、やはりこの人の実力はすごい、としか言いようがない。
George Harrison / George Harrison
元ビートルズのジョージが70年代の終わりごろに発表した作品です。
ソロデビュー作でもなく、特に新機軸というわけでもないように思うので、自分のスタイルをもっとも表していると思ったのでセルフタイトルにしたのでしょう。
ジョージ作品はビートルズ時代の代表曲に合わせて「ジェントリー」という表現がよくなされますが、このアルバムの曲群はまさにジェントリー。
"Love Comes To Everyone"や"Dark Sweet Lady"のような優しい(そしてひねくれている)ポップスが並びます。
そんな中"Not Guilty"のようなアコースティックなサウンドもこのアルバムの特徴です。
憂歌団 / 憂歌団
ド頭の「嫌んなった」の絶唱がインパクト抜群の94年作。
デビュー作でも新機軸でも無いようなので、「これが自分たちのスタイルだ」という意味でのセルフタイトルだと思われます。
実は憂歌団、これしか聞いたことがないので新機軸かどうかはよく分からないのですが…、芳醇なアコースティック・ブルースを奏でてくれます。
ブルースにもいろいろありすぎて困るのですが、憂歌団が得意としているのはラグタイムに近いブルースだと思います。
川本真琴 / 川本真琴
川本真琴のデビューアルバム。自己紹介的な意味でのセルフタイトルだと思いますが、その「自己」がかなりエキセントリックでした。
1曲めっぽくないストレンジなシャッフル「10分前」、そして岡村靖幸が弾いているっぽいキレキレのアコギイントロ「愛の才能」。
このツカミで何か大変なことが起きている感を感じました。懐かしいです。
でも一番好きなのはセカンドアルバムだったり。
Corinne Bailey Rae / Corinne Bailey Rae
ノラ・ジョーンズあたりのリラックスした空気をまといつつ、もうちょっとソウルよりにした感じのアルバム。
デビューアルバムなのでセルフタイトルにしたのだと思われます。
とにかく各楽曲の完成度が高い。
川本真琴が(本人はどう思っているかはともかく)変化球投手なら、コリーヌは速いストレートを外角低めに投げてるだけで抑えられる投手です。
James Brake / James Brake
今回取り上げた中で一番新しいはずの作品。
ジェームス・ブレイクはこの前にドラムンベース寄りの作品をいくつか出していたようなので(未視聴)、このアルバムは「新機軸」の意味合いをこめてセルフタイトルにしたのでしょう。
そしてこのアルバムのサウンドが2010年代を支配するというか、底に流れている水脈のような影響力を発揮しました。
今現在限定で言えば、The Beatles / The Beatlesよりもこちらのほうが各方面に影響与えているのでは?
まとめ
好きなセルフタイトルアルバムでした。
やはりというかシンガーソングライターの作品が多い印象ですね。
自分がシンガーソングライター好きなだけかも…
そしてソウルやR&B方面は意外とセルフタイトル少ないですね。
自分も一度は出してみたいです、セルフタイトルアルバム。